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沖縄
沖縄の頭越し「グアム移転協定」を糾弾する
元沖縄中部地区労議長
宮平 光一

 2009年2月17日クリントン米国務長官と中曽根弘之外相は「在沖海兵隊のグアム移転協定」に署名した。
 協定では2006年5月に日米再編最終報告に盛り込まれた「再編実施のためのロードマップ」に記載された「海兵隊のグアム移転」「普天間基地の辺野古移転」「嘉手納基地以南の基地返還」をパッケージとすること、基地負担軽減、グアム移転費用の日本側負担60億9000万ドル(約5400億円)などを再確認し、米軍再編を着実に推進することを狙ったものである。
 沖縄県には署名前日に外務省日米地位協定室長らから「明日署名する」という通告で、沖縄の意向は何も聞かず日米両政府の意志を押し付けるものであった。
【写真】アイク・スケルトン米下院軍事委員会委員長に「グアム協定」反対を訴える緊急県民集会(2月20日、県庁前広場)
 1997年に名護市民投票で市民の意思は「海上基地建設反対」であることを示し、2005年には、海上基地建設計画を辺野古のおじい、おばあ達を先頭にした座り込みや海上行動で1本のボーリングも打ち込ませずに断念させた。06年には額賀防衛大臣は「V字型案」であれば民間上空は飛ぶことはないと島袋名護市長らをだまして「基本合意」に署名させたが、多くの名護市民や県民はいかなる新基地も建設させないと現在も座り込みを展開している。
 08年県議選前に行われた琉球新報による有権者アンケートの結果は政府案支持が8・7%、県知事の沖合移動案支持が13・7%、県外・国外移設支持が59・3%であった。県議選では与野党が逆転し、県議会で「世界に誇れる自然環境を後世に引き継ぐことこそが県民の責務である」と指摘し、「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書・決議案」を賛成多数で可決した。県民の意志は一貫して、新基地建設を伴う米軍再編には反対である。 なっているのか。
 07年と09年には最新鋭のステルス戦闘機F22が米本国以外初に嘉手納基地に一時的に配備され、騒音を撒き散らしている。09年2月25日の70デシベル以上の騒音発生回数が253回と06年の1日あたりの平均109回の2・5倍と異常な回数となっている。07年から実施されている米軍基地から本土へのF15戦闘機の訓練の分散移転は2月25日現在35機、一方同時期以降の外来機の飛来は138機で約4倍と大幅に上回っている。また、米空軍と海兵隊合同の即応訓練などで騒音はさらに激化している。
 嘉手納町では基地被害の軽減を求めて、嘉手納町に特化した「基地使用協定案」を05年に防衛庁に提出したが、国は日米両政府が結んだ「航空機騒音防止規制措置」があるとのことで拒否している。地域住民は早朝未明を問わず軍用機爆音に苦しめられているのに。
 普天間飛行場の危険性の除去として07年に防衛施設庁が発表した飛行場の内側を飛行する場周経路のヘリ航跡調査が、08年に1週間だけ「わずか1週間程度で普天間の現状は分からない」と地元・専門家が指摘する中で沖縄防衛局によって行われたが、その結果はヘリが飛行場をはみ出し住宅上空を周回し、なんら危険性の除去になっていないことが09年に明らかになった。沖縄防衛局は「データが少なく、期間も短いので評価するのは適切でない」と評価を避けている。普天間でも騒音回数が激増している。地域住民に静かな夜は訪れないのか。
 08年の米軍構成員(軍人、軍属、家族)による女子暴行事件やタクシー強盗などの犯罪摘発件数は70件で(摘発人数63人)、07年の63件(摘発人数は46人)と比較しても7件、17人増加していることが県警のまとめでわかった。事件のたびに綱紀粛正、米軍人を対象にした教育プログラム等の再発防止策を実施し「良き隣人」の育成を図っていると言っているが、事件は逆に増加している。窃盗容疑で民間人に現行犯逮捕された米軍構成員を米憲兵が拘束し、沖縄署の事情聴取に応じなかった問題が起こったが、日本の外務省はそれを容認する認識を示した。
 08年10月には米軍所有の軽飛行機が名護市真喜屋の畑に人為的ミスで墜落したが米軍は県警の機体押収を拒否し、嘉手納基地内に搬送した。日米地位協定を盾にした警察権の侵害だ。
 ホワイトビーチへの原潜の寄港は08年は過去最多の41回で07年の24回を上回り、今年は2月時点で最新鋭原潜1万6千トン級のミシガンを含め6回寄港している。ミシガンは米本国以外では初めて確認された。異常である。
 08年に訓練海域外の久米島沖に米海兵隊のハリヤー戦闘機が250キロ爆弾を誤投下する事故が起こったが、県や久米島に沖縄防衛局から連絡があったのは1日遅れであった。漁民は不安の中漁をしている。
 九州森林管理局の米軍北部訓練場返還後の北部国有林の取り扱い検討委員会が「この地域の自然は国宝級の価値がある」と評価している森林生態系が豊かなやんばるの森に、新たにヘリパッドが6つ建設されようとしている。建設予定地に近い高江区で「ゆたかな自然の中で人間として当たり前の平和な暮らし」を求め、ヘリバッド移設に反対して座り込みをする住民に対し、08年12月に沖縄防衛局は通行妨害禁止仮処分の申し立てを那覇地裁に行った。当初15人を対象にしていた。その中に含まれていた8歳の少女は後日取り下げられたが、座り込み現場にいなかった人の取り下げは行われなかった。まさに法の乱用だ。
 08年12月に金武町伊芸区で駐車していた車のナンバープレートにめり込んだ状態で見つかった銃弾が米軍の使用しているものと県警が鑑定しているにもかからわず米軍は「訓練は安全に配慮してやっている。最近の訓練とは関連がない」と否定し、実弾訓練を継続している。この状況の中、演習場で火災が発生している。陸上自衛隊もこの演習施設を協同使用している。人の命をボロキレ同然に扱う仕打ちだ。
 負担軽減とは逆に、基地は強化され負担は増加している。
 08年に沖縄防衛局は、2010年末で使用期限を迎える米空軍嘉手納基地や米軍伊江島補助飛行場など9施設の一部土地について、駐留軍用地特措法に基づく強制使用手続きにむけた作業を開始した。防衛相の使用認定があれば、いくら地主が反対しようとも米軍のために強制接収されるのだ。
 これまで、沖縄は日米両政府によって、心は踏みにじられ、権力の思いのままに翻弄されてきた。今回の「グアム移転協定」は県民だけでなく、国民全体に権力の網をかぶせるものである。網が法であろうが条約であろうが、われわれは誇れる沖縄の心・文化・自然を取り戻し、次の世代に引き継ぐために網の目をかいくぐり、手を結び合い声を上げ、立ち上がり、網を断ち切らなければならない。そのためにもこの「グアム移転協定」を糾弾する。

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