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第26回福岡県地方議員交流会 120名が参加
雇用・生活支援対策を急げ!
福岡県古賀市議会議員
ぬま健司
トヨタのお膝元で新年の取り組みスタート

 2009年1月17日、トヨタ自動車九州がある福岡県宮若市で、第26回福岡県地方議員交流会を開催しました。(7頁下写真)
 私たちはアメリカ発の金融危機、世界的な経済危機、日本の実体経済への深刻な影響が広がることに何とかしなければという気持ちを抱いていました。福岡地方議員交流会のメンバーで相談した結果、トヨタ九州のお膝元(ひざもと)宮若市で緊急の交流会をやろうということになりました。
 交流会には、17議会から約40名の地方議員をはじめ、市民、労働者など120名が参加しました。2時間半の交流会でしたが、厳しい状況に立ち向かっていこうという契機となりうる交流会でした。
交流会の思い立ち

 昨年9月のリーマンショックを前後して、派遣切り、雇い止め、寮からの追い出しなどのニュースが連日のように流れました。私は、宮若市議の中島健三さんと相談し、12月議会で雇用問題や緊急生活相談窓口の設置を市長に提言することにしました。宮若市ではトヨタのお膝元ということもあり、一般質問の結果が大きく新聞で報道されました。同時に、「2008年度法人市民税収7億円の見込みが09年度には300万円と予想され、図書館建設も延期になった」と報道されました。
 古賀市では、私たちが行った一般質問を契機に特別生活相談対策会議が発足し、ホームページでもその内容が公表されました。
 今回の問題は、自動車産業を抱えている自治体だけではなく、多くの自治体に影響が出るに違いない、年末年始から年度末にかけてもっと状況は悪化するのではないか。ならば、早い時期に交流会を開き、情報交換と経験交流の場を持ち、全ての自治体で雇用・生活支援の特別体制を実現する契機にしようと話が進みました。
 同じ頃、キヤノンを抱える大分で、国の動きを待ってはいられないということで、自治体が失業した労働者を臨時採用したり市営住宅を提供するというニュースが流れました。そして、市民へのインタビューで「行政がこのような対策を迅速にやってくれて嬉しい」という声が紹介されました。私は「これだ!」と思ったのです。議会や行政も、市民が困った時には、暖かいメッセージと対策を発信することが肝心だと。これも今回の交流会を思い立った大きな要因でした。
 さらに、中島議員の努力で、昨年6月にトヨタ九州で雇い止めになった青年が体験発表をしてくれることになりました。このことは交流会にとって、きわめて大きな力になったことは間違いありません。
さあ、具体化だ!

 12月議会が終わり、12月25日に記者会見、交流会参加議員への案内状発送、開催地での具体的な準備などに着手しました。
 特に、今回はいつもと違う特徴でしたが、労働組合の方々に呼びかけを行いました。全国一般や連合ユニオン福岡の事務所を訪問し、協力要請しました。雇用問題相談に関するチラシなどをいただき、参加者に配ることにしました。
 地方議員のネットワークに労働組合のネットワークがリンクすれば、私たちのもとに相談に来られた労働者に解決に向けた道筋ができます。
 もう一つ特筆すべきことは、マスコミの関心の強さでした。派遣労働者の体験発表に注目していただいたようです。私たちとしては、緊急の雇用・生活支援対策を地方議員のネットワークを生かして拡大しようという点が大きなネライでした。しかし、何と言っても体験者の声ほど強いものはありません。
いよいよ当日、会場に120名の真剣なまなざし

 交流会当日は良い天気にも恵まれ、会場には参加者が続々集まってきました。
交流会で行動提起する、ぬま健司古賀市議(筆者)
交流会で行動提起する、ぬま健司古賀市議(筆者)

 宮若市の関岡清一議員の司会で交流会が始まり、まずみやこ町の原田さやか議員が主催者あいさつをしました。1996年以降の交流会の流れを振り返ると共に、1月17日が阪神淡路大震災の14周年に当たることに触れながら、今回の雇用不安は人災だと述べました。今日の交流会が人災を乗り越えて、地域で暮らしていく上で役立つものにしたいとあいさつしました。
 来賓として宮若市の有吉哲信市長、宮若市議会の遠藤嘉昭議長があいさつしてくれました。
 08年2月にも宮若市で議員交流会をしましたが、その時には有吉市長は、トヨタと共に街づくりを進めると熱っぽく語ったのに、1年後にこんな事態になるとは誰が予想できるでしょうかと述べられました。2兆円の利益があったので、内部留保金はどうなったのかと疑いたくなると率直に述べていました。セーフティーネットこそ自治体の役割だと強調し、対策本部を立ち上げたこと、生活保護申請が増えることを見込んで、来年度は基準を超えたケースワーカーを配置する予定であることも明らかにしました。
 麻生渡福岡県知事、平原四郎筑紫野市長からもメッセージが寄せられました。
宮若市、みやこ町、古賀市、筑後市の議員がレポート

 宮若市の中島議員は、貝島炭鉱で栄えた町の歴史、92年のトヨタ進出以降の人口や財政の変化、宮若市の対応などについて報告しました(これは、A4版20ページの貴重な資料です。ご希望の方には実費でお渡ししますのでご連絡ください)。中島議員は、税収面でのトヨタ効果は大きいが、地元雇用は11%と予想を大きく下回り、定住化も進んでいないと現状報告。
 そのため、通勤自家用車や工場関係大型トラック、営業車の増加などが交通事情の悪化を招き、その解決に向けた財政負担が大きくなっていると述べました。トヨタの「カンバン方式」で大型トラックが、道路を倉庫がわりにして待機するという問題も起きました。
 派遣労働者問題では、国の政策で派遣など非正規社員を拡大し、彼らが企業の利益を生み出すために貢献してきたことから、国の責任で派遣解除や住居からの追い出しなどをやめさせるべきだと指摘しました。
 宮若市の対応では、今年1月5日に雇い止め従業員対象の緊急相談窓口を開設したこと、財政運営ではトヨタ九州に税金の返還があることや、09年度のトヨタの法人市民税は300万円という見通しで予算編成が厳しいこと、図書館建設の着工を延期したことなどを報告しました。
 みやこ町の柿野義直議員は、日産の減産、派遣解雇の影響について周辺自治体での実態調査をもとに報告しました。日産のある苅田町では、06年度には22億円に上った法人町民税は、09年度は5億円台になると新聞で報じられています。柿野議員は自動車関連企業の調査結果として、ある企業では100名いた派遣労働者をすでに63名解雇していたと報告しました。派遣を正社員にすれば100万円補助すると政府は言うが、そんなことはできないという経営者の声も紹介しました。12月議会では、こうした調査をもとに行政の対応を求めたが十分進んでいない現状を指摘しました。
 古賀市の前野早月議員は、12月議会を契機に、緊急生活相談対策会議(総務課、商工振興室、福祉課、学校教育課などで構成)が発足したこと、市内企業の実態調査を行い昨年末に40名の派遣の雇い止めがあったことが判明したこと、今年3月から4月にかけてさらに厳しくなる見通しであることなどを報告しました。古賀市のホームページでの情報発信は他市町村にも参考になると紹介しました。
 筑後市の大城敏彦議員は、ハローワークや企業の調査をもとに12月議会で雇用対策を提言したことを報告しました。自らが全国一般労組出身であることから、労働組合の課題についても問題提起しました。
派遣経験者の体験談/時間がかかっても正社員になりたい!

 次に、トヨタ九州で派遣労働者として働いていた24歳の青年が体験を発表しました。
 06年6月に働き始め、午前5時40分から午後2時40分までと、午後3時40分から午前0時40分までの2つの時間帯で働いてきたこと。日当1万円と残業代をもらっていたこと。寮に入っていたが、寮費と食費などで月に7万円かかっていたこと。いつかは正社員になれると信じていたが、08年5月に上司に呼ばれ、大分か愛知か北海道への移動を突然言われた。驚いたが、祖父母にお世話になっているし、小中高を過ごした宮若市が好きで帰ってきたので、転勤を断り、6月に退職を余儀なくされたことを報告してくれました。「働きたい気持ちでいっぱいだが、派遣にはなりたくない。時間がかかっても正社員になって安心して暮らせるようにしたい」と訴えました。
フリートークで活発な意見交換

 フリートークでは、市民、労働組合関係者、そして神奈川県、佐賀県、長崎県から参加した市議、県議が活発に意見を発表しました。
 「生活危機突破の取り組みを広げよう」「トヨタの企業誘致は貝島炭鉱の歴史を教訓にしていない」「行政は相談窓口で聞くだけではダメだ」「派遣労働者の話を聞いて涙が出た。ささやかな幸せを踏みにじるやり方に怒りを覚える」など活発な意見交換を行いました。連合ユニオン福岡の志水輝美さんは、派遣法は「魔法」といわれたが今では「悪法」だと述べ、企業は直接雇用すべきだと指摘しました。
3月議会での取り組みや県知事への要望書提出などを提案

 「共同アピール」を採択
 私が、今後の取り組みについて提案しました。それは、
 以上5点を提案しました。
 筑紫野市の宮原智美議員が、国や県に対する雇用・生活支援対策要求、ならびに地方議員や市民、労働者の皆さんに呼びかけた「共同アピール」を提案し、参加の拍手で採択しました。
 最後に、宮若市の茅野勝議員が閉会のあいさつをしました。
1月27日に福岡県知事に要望書を提出報道されました。

 参加者のアンケートでも、「時宜にかなった取り組みでよかった」「いろいろな議会での取り組みが聞けてよかった」「派遣労働者の勇気ある発言に感動した」などの感想が記入されていました。
 私たちは、交流会の成果をさらに次の行動につなげていかねばならないと考えています。
 その一つとして、1月27日に福岡県知事に「共同アピール」と「要望書」(6〜7頁参照)を提出することにしました。当日は、交流会の世話人議員、県議、元議員、市民など15人で松永大四郎福岡県労働局長に手渡し、意見交換を行いました。私たちは特に全ての市町村に雇用・生活相談体制を確立するよう県の指導・支援を求めました。これに対し、県は2月5日に全市町村の出席を求め、雇用対策の具体化促進や情報交換を目的とした連絡会議を行うことを明らかにしました。
 要望書の提出後、集まった議員などで懇談会を持ちました。1月17日の交流会の成果を確認すると共に、3月定例議会に向けて、実態調査や雇用・生活支援対策の提言、意見書や決議の取り組みについて意見交換しました。
 福岡県地方議員交流会は、今回の取り組みをさらに県内の地方議員の仲間に広めていきます。そして、3月議会などでの取り組みを促進するための情報交換を積極的に行うことにしています。
 神奈川県、埼玉県、東京都でもこうした取り組みの具体化が始まったと聞きました。各地での取り組みを発展させ、次回の全国地方議員交流会で交流できることを心より楽しみにしています。
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共同アピール

 私たち地方議員と市民は、アメリカ発の金融危機、世界的な景気後退が日本の実体経済に深刻な影響を及ぼす中、トヨタ自動車九州のある宮若市に集まりました。
 私たちは、1996年の第1回福岡県地方議員交流会から13年間、経験交流と政策学習を目的に地道に交流を続けてきました。今回の「雇用問題」というテーマは初めてです。
 それぞれの報告や意見発表などを通じて、雇用情勢は今後も長期化・深刻化することが予測されます。生活や地域の経済を守るために地方議員が果たすべき役割の重要さを痛感しました。
 今回の交流会を契機に、更に多くの地方議員、市民、労働団体の皆さんとの連携を広め、強めていかなければならないとの認識を共有できたと思います。
 そこで、本日の参加者の思いを内外に伝えるために、共同アピールを発表します。
 私たち一人ひとりは微力かもしれません。しかし、決して無力ではありません。今日の雇用危機、生活危機を打開するために、力をあわせて粘り強く取り組んでいきましょう。    2009年1月17日   第26回福岡県地方議員交流会 参加者一同
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(県への要望書)
緊急生活支援・雇用対策にかかる要望書

 福岡県地方議員交流会は、アメリカ発の金融危機、世界的な景気後退が日本の実体経済に深刻な影響を及ぼす中、1月17日にトヨタ自動車九州のある宮若市で緊急の交流会を開催しました。宮若市議会をはじめ、みやこ町議会、古賀市議会、筑後市議会等から地域経済の現状や各行政における対応策などについて情報交換を行いました。
 また、昨年6月までトヨタ自動車九州で派遣労働者として働いていた青年の切実な訴えを聞きました。その中で、私たちは、雇用情勢が今後も長期化・深刻化すること、暮らしや地域経済、行政による住民サービスにも多大な影響があるとの認識を深めました。
 一方で、各地方自治体での対応策はまだまだ不十分であり、情報の提供や財政措置が早急に求められていることを痛感しました。特に福岡県では、自動車産業に依存し、非正規労働者を拡大した責任の一端が県政にあること、さらに大牟田市の三井金属のように正社員の削減に拡大する等深刻な課題を抱えています。
 そこで、以下の点について福岡県が早急に実行することを強く要望します。 以上
2009年1月27日
福岡県知事 麻生 渡 殿
第26回福岡県地方議員交流会 参加者一同

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