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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版4号

 

どうなる介護保険

相模原市議会議員 秋山もとひろ



 来年4月から、介護保険が実施されます。これにともない現在マスコミでもいろいろと解説記事を出しています。また7月末から、全国的に地方自治体による説明会も始まります。しかし、地方自治体では、現在の介護制度より悪くなるのをどうするか(上乗せ問題)、介護の対象にならなくなった時どうするか(横だし問題)といったことが大きな問題とされています。また国会では、「景気の悪い現在保険料徴収を延期したらどうか」或いは、「自治体によっては準備が整わないから延期したらどうか」といった技術論、手続き論ばかり論じられているのが残念です。

 立法論を放棄した国会


 憲法25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とあります。この介護保険もそういった立法論に基づき制定されなければならないのは当然でしょう。だとすれば第一に保険料をどうするか。第二に介護の質をどうするか。この二点を徹底的に国会で論じ国民の理解と合意の得られるものでなければならなかったはずです。ところが残念なことに、介護保険法第129条で、保険料は、政令で定める基準に従い条例で定めることになっています。
 政令は、事務次官会議で調整され閣議で決定されますから、まさに立法論を放棄した国会といわざるを得ないと思います。

 自民党の政策を先取りした保険料

 自民党は、高額所得者の所得税減税と法人税の減税を公約しています。その一方歳入減を、「課税ベースの拡大」でカバーしようとしています。言い換えれば、「今まで税金を払えないほどの低所得者からもどんどん税金をとって、金持ちの減税をします。また法人税については、儲かっている企業は減税し、赤字の企業からも税金を取り立てます」ということです。この介護保険法第129条に基づく政令は解説のように自民党の政策を先取りしたものになっています。その上、地方自治体の条例化に徹底した制約をつけ低所得者から徹底的に保険料を徴収する仕組みを作っています。

 不公平を是正するような条例を 
   
 地方自治体の条例化に徹底した制約をつけている政令ですが、「自治体の権限を全部なくしてしまうのはまずい」とでも思ったのでしょうか、政令第39条の中にわずかに地方自治体で決めることができるものがあります。それを最大限生かした条例にするか、それとも政令通りの条例にするか、市長と議会の真価が問われています。
 私は次頁の解説の不公平を是正するため、政令第39条を活かして市民サイドに立った条例化をめざして頑張ります。


【解説】
介護保険の保険料(65才以上)
一高額所得者ほど得をする−


介護保険の保険料は、所得が多くなれば多くなることになっています。しかし、実際には、所得がゼロの人でも標準保険料をとられる人がいます。その一方で高額所得者は、確定申告をすれば税金が戻ってきますから、実際の保険料は少なくなります。
 相模原では暫定的な試算で、標準保険料が2900円となりましたので、かりに3000円として政令に基づいた各階層ごとの保険料を調べてみました。
 厚生省や相模原で出している資料は、第一階層から第五階層まで、五階層のきれいなグラフになっていますが、そのグラフに実際の保険料を重ねてみました。

第一階層
 第一階層〜第三階層は本人が住民税非課税の層(所得125万未満、扶養家族がなく年金のみの収入で267万円未満)です。そのうち、生活保護または老齢福祉年金の受給者で世帯全員が住民税非課税者の層が第一階層です。保険料は1500円です。

第二階層
 低所得者層のうち、生活保護や老齢福祉年金を受けておらず世帯全員が住民税非課税の層です。保険料は2250円です。

第三階層
 低所得者層のうち、世帯の中でだれかが住民税を課税されている層で、保険料は3000円です。本人の所得がゼロでも3000円の保険料を支払わなければなりません。家族の中で、地域振興券のときと同じように世帯分離をするのしないのと軋轢が生じる恐れがありますし、無年金者だと国民健康保険に上乗せされるため、夫婦で年間72000円の介護保険料はもちろん国民健康保険の保険料すら徴収できなくなる恐れがあります。

第四階層
 本人の所得が125万円から250万円(扶養家族がなく年金のみの収入で267万円から434万円)までの層で、保険料は3750円です。所得が増えるにつれ税金の還元が増えますが、還元率が10−20%と低いため、実際の保険料は、所得125万円の人で3375円、所得250万円の人で3000円となり、最も多額の保険料を負担する層です。

第五階層
 本人所得が250万円から1800万円までの層で、保険料は4500円です。しかし、税金が還元されますから、実際の保険料は250万円の所得の人で3600円、所得が1800万円の人は2250円でいいことになります。

特別階層
 本人所得が1800万円以上の層は政令で特別階層として区別され、保険料は4500円です。しかし、50%の税金が還元されますから、どんなに所得が多くても実際の保険料は2250円でいいことになります。介護保険制度の中でもっとも恵まれた階層です。