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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版39号(2008年5月発行)

道州制・分権改革の陥穽
「本来の国家」への国家権力の再編

広島県竹原市議会議員  脇本茂紀


 地方分権改革の狙いは何か

 4月24日の『中国新聞』に、自民党国家戦略本部の政治体制改革プロジェクトチーム(奥野信亮主査)が「政治、行政、財政に関する改革案をとりまとめた」ということが報道されている。その内容は「将来の道州制移行に合わせて@衆参両院で現在計722人いる国会議員を計250人に削減、A現在1府11省の中央省庁を1府6省に再編、B国と地方の公務員数を現在の計約170万人から45万人にする」ことを打ち出している。
 改革案は今後10〜15年で道州制に移行するとし「官主導から政治主導、中央集権から地域主権へ」と目標を設定し、「衆議院を定数200の小選挙区制、参議院を定数50の全国区制とし、憲法改正で衆議院の優越を強化。参議院は党議拘束を受けない『賢人の府』とする」「国の役割は外交や安全保障、マクロ経済など『国家意思として必要なもの』に限定し、公共事業や産業振興などは地方へ権限移譲」「中央省庁は、内閣府と大蔵、環境、内務、法務、外務、国防各省に再編成する」「消費税を含む約20兆円分の税源を地方に移譲する。消費税は『地方の基幹的税』として税率決定権も州政府に与える」とするものである。
 この記事は、この間の政治「改革」、行政「改革」、地方分権「改革」の行き着く先を明確に示している。これらの「改革」は、国家を「本来の国家」=「資本家階級が労働者階級を抑圧するための道具としての国家」へと再編しようとするものであるということである。もともと「小さな政府」の狙いはここにある。 国家とは何かということについて、端的にいえば「軍隊、警察、官僚機構、裁判所、監獄、執達吏をあげれば足りる。それらはいずれも労働者をはじめとする国民を搾取し、抑圧するものだ」ということである。そして日本国憲法のもとであるいは戦後民主主義のもとで定着してきた社会保障(教育・福祉)だけでなく、公共事業や産業振興まで地方政府にやらせることによって、自らは「社会から生まれながら、しかも社会の上に立ち、社会から自らをますます疎外してゆく権力」(エンゲルス『家族私有財産および国家の起源』)になろうとしているのだということなのである。
 
広島県の分権「改革」

 同日の『中国新聞』には「市町村へ499事務移譲。分権委、首相に来月勧告」という記事が載っている。政府の分権改革推進委員会(丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は都道府県から市町村に移すべき仕事として、都道府県が持っている市立小中学校の教職員の人事権を中核市に移すなど88の法律に定められた499の事務を選んだ。教職員の人事権については政令指定都市と同様、都道府県に代わって教職員の給与を国とともに負担する。やがてはすべての市に移譲するとしている。
 このほか都市計画に関する権限や福祉施設の設置認可など、@まちづくりや土地利用A福祉・医療・保健・衛生B環境C教育D生活・安全E産業振興――の分野で、市を中心に積極的に仕事を移すべきだとしている。さらに都道府県と政令指定都市、中核市に設置が限られている保健所や児童相談所を、希望する市が設けられるよう制度改正を求める、としている。
 広島県は「平成の大合併」のトップランナーだといわれ、86あった市町村を23市町に再編した。4月22日の『中国新聞』は「広島は分権『先進県』、権限移譲全国2位」と報じた。これは政府の分権改革推進委員会がまとめたもので、調査は「平成の大合併」で規模も態勢も拡大した市町村へ、都道府県がどれくらい仕事を移したかを、移した事務や権限を定める法律の数で示したものだ。そのなかで、広島県は静岡県(86)に次ぐ77と都道府県中2位で、地方分権では先進県と評価された。
 このような権限移譲に伴って進められているのは県のスリム化と出先機関の統廃合である。広島県は「広島県行政システム改革推進懇話会」における議論を集約するためとして「県の組織のあり方に関する議論のたたき台」を作成した。
 その内容を見ると、本庁部門の再編は「スリムで効率的な組織」「組織を大括り化し関連施策の連携を強化する組織」「県民起点による成果重視のわかりやすい組織」を柱に11あった部を7に統廃合するとしている。
 企画部門・地域振興部門では「道州制、第2次地方分権改革、市町への権限移譲の推進、新過疎対策の検討を一元的に所管することとし、地域におけるまちづくりの主役が市町に移行していくことを踏まえ地域振興部のあり方を検討する」としている。
 県民生活・環境部門は一元化し、「県民生活部門の業務は、県民に身近な業務であり、将来的には市町に移譲していく」ことを検討。農林水産部門については「スリム化、効率化を検討し、将来的には商工部門と産業振興との一元化や土木部門との基盤整備部門の一元化」を検討。土木部門と都市部門については、「土木・都市・港湾部門の一元化」を検討するとしている。
 そして地域事務所については「市町村合併、市町への権限移譲が進展している状況を考えると、地域の総合行政は基礎自治体が担いつつあり、地域事務所を設置した所期の目的は達成した」として地域事務所制は廃止し本庁各部直轄の現地事務所制に移行するとしている。そして現在、広島、呉、芸北、東広島、尾道三原、福山、備北と7つある地域事務所は、西部地域、東部地域、北部地域の3つの現地事務所に統合される。
 この内容は、道州制を視野においたもので、県の機能を地方政府というよりも国の出先機関的役割の強い国家権力の末端機関として再編成しようとするものである。そしてそれはとりもなおさず、住民から自らを疎外していくものとならざるを得ない。なぜなら、かつて地域事務所は住民に近い存在として市や郡すなわち住民サービスの現場に近いところにあったが、これが統廃合されることによってまさに「お上」となり、支配や管理がその仕事となることを示している。そして中国州になるにしても、中四国州になるにしても、州の存在は市町村(住民)からは限りなく遠く、国(国家)に限りなく近くなるであろうことを示している。

市町村合併後の基礎自治体

 市町村合併によって、次々と県から市町への権限移譲が行われている。権限移譲に伴う仕事量の増大は必然的に義務的経費を増大させるわけだが、その費用や人を必ずしも県が持ってくれるわけではない。そのしわよせは市や町の現場に訪れる。市町村合併で吸収された町や村にあった支所や出張所の人員は極端に減らされ、旧町村時代から比べるとすでに半減しているといってもいい。
 国鉄、電報電話、郵政の民営化、さらにはJAや学校の統廃合ともあいまって周辺地域の農林漁業の崩壊と共に土木建築業や飲食業、小売業等は一挙に衰退し、あっというまに地域をさびれさせ、限界集落が随所に作り出されようとしている。そして市町では住民サービスの最前線(福祉施設、医療施設、社会教育施設、学校給食施設、公共交通機関、清掃職場など)が切り捨てられるか、もしくは民営化や指定管理者制度によってどんどんアウトソーシングされ、不安定雇用に委ねられている。そのことは地方における若者の雇用をすさまじく不安定にしているばかりか、賃金労働条件も劣化している。そして自治体から現業職場がなくなるにつれて、自治労の闘争力(協約締結権を武器とした団体交渉権など)が減退していく。
 問題は住民にもっとも近い基礎自治体の住民サービスの最前線が切り離され、残った本庁もまた国家権力の末端機構として「お上」になろうとしていることである。公務員攻撃が功を奏しているのは、このような地方分権「改革」による公務員の「官僚化・官吏化」によるものだということを認識しなければならない。
 このようにして170万人の公務員を45万人にする大合理化が貫徹されて出現するのは、住民サービスの前線である地域からますます自らを疎外する国家権力の末端機構としての、つまり住民を管理し抑圧するための地方政府なのではあるまいか。
 このようなときだからこそ、自治体労働者は地域住民と一体となって、かつての「自治労組合歌」に歌われているように「うるわしき郷土をまもる」ために立ちあがらなければならない。