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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版38号(2008年2月発行)

米軍再編現地レポート  馬毛島の米軍関連基地誘致の動き

今の馬毛島問題


鹿児島県西之表市議会議員 長野広美


 馬毛島(まげしま)は種子島から真西に12km、また世界遺産に登録されている屋久島を真南に控える位置にある。周囲12kmの島は平坦で、小さな漁港が唯一の玄関口となっている昭和55年無人島となるまで、サトウキどやサツマイモ栽培など農業と豊な漁業で最大500人の人口を有するまでにぎわった。
 その馬毛島に、平成19年2月米軍関連の(NLP)施設誘致の話が、、朝日新聞こよって最初に報道された。そこからほぼ一年後の今年1月5日、再び新聞報道で、防衛省が馬毛島を最有力候補地に絞り、年内こ現場調査を実施する予定と報道された。
 これまで地元で騒がれていた馬毛島問題とは、基地問題ではない。環境負荷が大きい公共事業的開発に対する見直し論議を含めた、いわゆる持続可能な地域開発を模索した動きであった。市民有志によって結成された「馬毛島の自然を守る会」は馬毛島の豊な自然の価値を認めてもらうこと、豊かな漁場が破壊されないことを訴えて、これまで採石工事や採砂工事などの差し止め裁判、及び不当な土地買収の無効を訴えた裁判運動を平成11年から展開してきた。裁判の場においては、ほぼ業者側に有利な判決結果が出てきたが、一方で、工事差し止めの仮処分においては、漁業被害の恐れがあるとして、原告側の主張が認められるケースもあった。
 今改めて、基地問題と向き合わなければならなくなった立場から、日本の安全保障と地域の決定権のあり方がわたしたち地方に等きつけられた大きな課題となった。しかし、馬毛島における米軍基地関連誘致問題は、疲弊する一方の地方と都市の格差問題や地域経済活性化のあり方が背景に存在しているという意味からも、今後の地方と国の関係を考える上で、これまで国内各地で争われている基地問題とは異なっている点があるのではないかと、考える。

 翻弄する馬毛島の開発問題。

 昭和50年代に馬毛島の土地を買収したのは、かつての平和相互銀行の子会社であった馬毛島開発株式会社。その当時は国の石油備蓄基地の候補地とされた。土地の買占めが進み昭和55年には無人島となったが、石油備蓄基地は鹿児島県志布志湾に決まり大型レジャーランド構想も立ち消えたまま、平成7年に枕崎出身の現在の所有者が「住友銀行」から買収した。
 昭和51年馬毛島開発計画審議会の報告によると、一年間で審議会5回、現地調査2回が行われ、慎重な調査審議がなされたとあります。当時は、鹿児島県農政局はもとより、九州農政局などを巻き込んで、農業、漁業、畜産振興、そして環境保全、石油備蓄など、多岐にわたって議論された。
 その結果として、小さな孤島の開発計画は国家プロジェクト頼みに過ぎず、馬毛島が長く無人島として放置され、平成7年以降は現所有者が、採石事業、民間飛行場建設など様々な開発プロジェウトを描いて取り組んできたにも関わらず、少しの利益をもたらす状況には至っていない。

 米軍の空母艦載機の発着訓練場誘致と、基地問題

 米軍は現在、空母艦載機の離発着の訓練を行っている太平洋上の硫黄島が、基地から距離が遠いため、米軍再編の一環として、新たに訓練基地を探している。平成19年2月朝日新聞が馬毛島の名前を報道すると早速に3月議会で、西之表市を含めた種子島と屋久島の全自治体と議会が誘致受け入れ反対を表明し、反対決議を決めている。
 今年1月の新聞報道に対しても、早速に鹿児島県庁に各首長や議員が出向き、反対の意向を知事に伝え、また広くマスコミ報道で「地元反対」の強い姿勢をアピールした。また、県知事はその後に「地元の意向を尊重する」とコメントしている。
 しかし、馬毛島が空母艦載機の夜間離発着訓練地となる可能性は依然高く、危機感は少しも和らがない。昨年12月17日現所有者が西之表市議会の特別委員会に出席し、米軍基地の誘致活動を表明したからだ。まだ地元では、公共事業の激減、大型スーパーによる複合施設のオープンによって小規模商店街の沈下など、景気の悪化が著しく、少子高齢化と人口減少による地元経済への波及効果期待は決して小さくない。
 馬毛島が訓練地となれば、土地買い上げは200億円とも噂されている。「売却は無い」と否定しているが、社長は相当額の賃借料を見込んでいるのではないだろうか。
 1月5日の報道によると、防衛省は訓練地けっていを2009年7月としている。万一馬毛島が決定されれば、多額の利益は地権者にもたらされても、地元への経済効果は少なく騒音被害をはじめ、安全性や漁業被害など様々な問題の発生が危惧される。神奈川県厚木基地周辺では、12月17日6300人もの人々が国を相手に、騒音被害として46億円もの損害賠償を訴えたばかり。
 私たちは今後、「基地問題」の実体を学び、全国とも連携をしながら、模索しなければならない。

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陸上空母離着陸訓練施設の馬毛島への移転反対に関する決議

 在日米軍の再編に伴い、空母艦戦機を厚木基地から岩国基地へ移駐するという平成18年5月の日米両政府による合意に基づき、陸上空母離着陸訓練施設の適地候補として馬毛島が浮上していることが、平成19年2月23日に新聞等で大きく報道されたところである。
 国は、「現時点では、設置場所を特定している訳ではない。」と表明しているが、この報道が市民に与えた浪乱と戸惑い等は大きいものがある。
訓練施設の内容や用途からして、
1 訓練による騒音等が種子島・屋久島両島の環境や漁業に与える影響をはじめ、周辺住民の 生活や地域社会に被害を及ぼすことが懸念されること。
2 「ロケットの島 種子島、世界自然遺産の島屋久島」という観光イメージが、根底から覆さ れる可能性があること。
3 訓練中の事故発生も否めないことから、周辺住民が危険にさらされる可能性が大きいこと。
 などが懸念され、周辺住民に多大な犠牲を強いることにつながることが予想される以上、断じて容認できるものではない。よって、西之表市議会は、市民並びに熊毛地区住民の不安を解消する立場から、報道されている陸上空母離着陸訓練施設を馬毛島に移転することに断固反対する。以上決議する。
   平成19年3月14日
                                                                   鹿児島県西之表市議会