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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版35号(2007年5月発行)

核廃施設反対!圧勝した東洋町長選

高知県東洋町議会議員 原田英祐 氏


町長選の結果 投票率89.26%  
当選 沢山 保太郎  1821 無所属・新
    田嶋 裕起    761 無所属・現

 4月22日行われた町長選は高レベル放射性廃棄物(【注】参照)処理場はこの土地に入れるべきではないという住民の意志がはっきり出た選挙でした。
 経過でいうと、平成18年3月20日、前田嶋町長が原子力発電環境整備機構(原環)に応募書を出していたわけです。それに至る、町長と国、原環との話があったと思います。去年の7月18日に町長から町議会に対して核廃物のことで皆勉強しませんかという話がありました。賛成するということでなく事実を知る勉強ということでOKして、その翌月の8月8日に第一回目の勉強会が開かれ原環と資源エネルギー庁も来て、様々な広報資料を持ってきて勉強会をやりました。
 最初の説明では、文献調査に応じるだけで2億1千万円、概要調査からは年間10億円の交付金がおりてしかも、そのお金は自由に東洋町のために使える。途中で中止することも出来るから調査だけでも、という話でした。それでいい話だと飛びついた者は推進派に回ったわけです。それに対して、これはおかしい裏に何かあると、さらに勉強を深めて勉強していった組が反対派になったと思います。
 「この間、国からの交付金や国庫負担金などが大幅減額になり、このままでは財政破綻がさけられない」と前町長はいっていましたが、財政的に苦しいのは東洋町だけでなく、日本全国苦しいわけです。小泉さんの「三位一体改革」は人口の多い税源の豊かなところは良かったかもしれませんが、東洋町は国庫負担金や交付金が減らされ、税源の権利は与えられたものの肝心の税収が増えず、苦しくなりました。
 交付金などの削減は国の責任ですが、町政はもっと工夫が必要だと思います。私は5年間、行政改革について一般質問をやり、提言もしてきたが、前町長は全く聞こうとしませんでした。田嶋前町長は町会議員の頃、原水協の東洋町の会長さんも努めていた方ですが、今回に限って全く町民の声を無視した感じでした。
 町議会への請願は反対派と推進派両方から出されました。推進派は署名数が199名です。一方、反対の請願署名は2179名です。中学生以上の該当者3175名の68.6%の反対署名が集まりました。しかし町長や国は全部が全部、住民の意思ではあるまいと無視したわけです。
次に核廃持ち込み禁止条例制定しようと署名運動が行われ、条例制定のためには地方自治法による有権者の60分の1の署名が必要ですが、短期間で有資格者の半数近い1452名の署名が集まりました。3月22日私は町議会で賛成討論を行いました(【資料】参照)。条例制定案は議会では一旦採択されましたが、町長が反対して再議にかけられ、3分の2以上の賛成が得られず廃案に。それで、町長のリコールを求める声が高まり、町長が自ら辞表を提出し、町長選となりました。
 町長選で圧倒的に勝利しましたので、新町長が公約通り、応募を返上して白紙撤回ということになりました。
 こういう問題が起きて以降、町民の皆さんの町政に対する意識が高まり、民主主義と地方自治という観点から本当に意義があり前進したと思います。これは全国的に言えると思いますが行政が都合の悪いことは住民に隠して、ガラス張りにしないところがあります。東洋町もそういう面があり、町長の独断が多かった様な気がします。これからは、沢山新町長は住民と行政・執行部皆が力を出し合って、行政はオープンにしてやっていくという方針ですので、理想的な町づくりが進められるのではないかと期待しています。(インタビュー 文責・編集部)

【資料】核廃棄物持ち込み禁止条例に対する賛成討論
    (2007年3月22日臨時議会・原田英祐氏発言メモ)
 町長は多くの町民・議会・周辺地域・高知徳島両県の知事や議会まで反対している中、いまだに応募を取り下げようとしません。
 本件について町長は「町民の皆様へ」と題して、平成18年9月に全町民へ配布した文書を見ますと「町民の皆様へ、高レベル放射性廃棄物の最終処分施設設置可能性を調査することについて(途中略)、町民の皆様の生命や健康を無視した形での、まちづくりや交付金目当てだけのものではあってはならないことは言うまでもありませんし、調査段階での危険は全くありませんが、地層処分にどのような問題点があるのか、ないのか、しっかり勉強し、クリアできれば文献による調査への応募も視野に入れたいと考えておりますので、宜しくお願いいたします。平成18年9月、東洋町長」
 国と原環機構も、勉強会当初は100カ所の応募をあつめ、その中から、段階的に条件に合う場所をしぼりこみ、最終的に、1カ所を処分地として決定すると、言っていたが、東洋町以外に応募がなく、3月20日の新聞には「最終処分地は東洋町ということで今後は進めていきたい」と、発表しました。
 その間、最終処分地には高レベルのガラス固化体4万本を埋めるということで、我々に説明をしてきました。しかし原子力委員会では昨年4月、高レベル4万本の横に低レベルのTRU廃棄物もあわせて埋めるという方針を決定し、その方向に話を進めています。
 このことを私が議会で質問したところ今年2月9日臨時議会で田嶋町長は「TRU廃棄物の併設は、まだ検討にはのぼっていない」と、大きなウソをつきました。さきほど言ったように昨年4月には原子力委員会でこのような方針が決まっていたわけであります。そして、2月27日特別委員会で、資源エネルギー庁・吉野室長に同様の質問をしたところ「そのとおりである」と、ついに白状しました。これ以外にも、いろいろとウソをつき、都合の悪いことを隠しています。
 このようなウソがバレた限り応募は白紙撤回し、あらためて出直すべきでありますが、いまだにそのことを謝る様子すらありません。
 町長は、住民や議会あるいは世論をも無視しつづけて、ひたすら前へと進んでいます。
 さきほどの町長の発言の中には反省のひとかけらもありません。私はもう町長や原環機構や国の言うことは、全く信用できなくなりました。このような状態だから、住民の方々が、防御手段として町条例を定めようと行動を起こしたのは、当然のことです。私は、この条例は、本町にとって、必要不可欠のものと思います。
 つけ加えますと、東洋町を含む、室戸半島は、地質的には「付加体」と分類されるものです。しかも、世界的にも有名で「室戸半島は付加体の教科書である」とも言われています。世界中の地質学者が集まって、付加体を中心とした世界的なシンポジウムが開かれたこともあります(1991年、付加体国際会議)。このように、地層処分地として、もっとも危険な地質である東洋町を無理やりに処分地に決めたいとする国の考え方は、狂気の沙汰としか思えません。
 世界中の地質学者を相手にしてでも、処分地にしようとするのでしょうか。
 最後に甘利経済産業大臣に訴えます。もうこれ以上、東洋町にお金をつぎ込む考えは、やめていただきたい。危険な付加体地質に加え、100年ごとの南海大地震で、これまでに何万回もゆすられ、ボロボロになっている地層ですよ。と最後に訴えておきます。 以上。

【注】高レベル放射性廃棄物
 原発から出る使用済み核燃料を再処理すると、放射線量の極めて高い廃液ができる。これをガラス原料とともに溶かしてステンレス製容器に入れたのが高レベル放射性廃棄物のガラス固化体。ガラス固化体は青森県六ケ所村の中間貯蔵施設などで30-50年間冷却貯蔵し、そのあと鉄製容器と粘土の人工バリアで覆って地下300b以深の最終処分施設に埋設する。
 原子力発電環境整備機構によると、数万年後には天然ウランと同等の放射能になるとされる。安全な処分には安定した地質環境が求められる。(3月24日高知新聞より)