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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版27号(2005年5月発行)

特区では自治権剥奪

アメなしムチだけの合併新法

編集部


はじめに
 2004年5月26日に合併三法が公布された。(2005年4月1日から施行)合併新法(市町村の合併の特例等に関する法律)、改正現行合併特例法(市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律)改正地方自治法(地方自治法の一部を改正する法律)である。小泉内閣は、合併申請が期限内で来年の3月31日までに合併すれば特例法を適用するとして、現行法を一部改正し法に抵触するところは自治法を改正したのである。そうして、駆け込み合併を誘導した。
 政府は「平成の大合併」によって、1999年3月31日時点で3,232あった市町村を当初、合併特例期限が過ぎる2005年3月31日までに1000にする計画であった。しかし、実際はその時点で2378と854削減に止まった。総務省はこの一年間にさらに都道府県知事から申請済分556市町村が減少して、1,822になると予測している。
 施行直後である合併新法の問題点を明らかにしたい。

1、知事の権限強化、上意下達の合併強制
 まず、旧合併特例法でアメとして機能した特例債は無くなった。だから、アメなしの合併促進法ということになる。この法の問題点を抜粋する。
 「第四章 市町村の合併の推進に関する構想等」で「第58条 総務大臣は、第一条の目的を達成するため、自主的な市町村の合併を推進するための基本的な指針(以下この条及び次条第一項において「基本指針」という。)を定めるものとする。」
 また、都道府県知事に対しても「(構想の作成等)第59条 都道府県は、基本指針に基づき、当該都道府県の区域内において自主的な市町村の合併を推進する必要があると認められる市町村(以下「構想対象市町村」という。)を対象として、当該都道府県における自主的な市町村の合併の推進に関する構想(以下この条において「構想」という。)を定めるものとする。」として、合併推進に関する構想を定めることが義務付けられる。
その内容は「一自主的な市町村の合併の推進に関する基本的な事項、二市町村の現況及び将来の見通し、三前号の現況及び将来の見通しを勘案して、推進する必要があると認められる自主的な市町村の合併に係る構想対象市町村の組合せ」と規定されている。
 そして、その構想は「(市町村合併推進審議会)第60条 前条第三項の規定によりその権限に属させられた事項を調査審議するため、都道府県に、自主的な市町村の合併の推進に関する審議会その他の合議制の機関(以下この条において「市町村合併推進審議会」という。)を置くものとする。」
 また、「(合併協議会設置の勧告等)第61条 都道府県知事は、地方自治法第二百五十二条の二第四項の規定により、構想対象市町村に対し、第59条第二項第三号の組合せに基づき合併協議会を設けるべきことを勧告しようとするときは、あらかじめ、当該構想対象市町村の意見を聴かなければならない。」「勧告を受けた構想対象市町村(以下この条において「合併協議会設置勧告対象市町村」という。)の長は、当該勧告を受けた日から三十日以内に、それぞれ議会を招集し、当該勧告に基づく合併協議会に係る地方自治法第二百五十二条の二第一項の協議(以下この条において「合併協議会設置協議」という。)について、議会にその意見を付して付議しなければならない。」と知事の勧告は大きな強制力を持つことになる。
 さらに「合併協議会設置勧告対象市町村の長は、前項の規定による議会の審議の結果を、速やかに公表し、かつ、第一項の規定により合併協議会を設けるべきことを勧告した都道府県知事(以下この条において「勧告をした都道府県知事」という。)に報告しなければならない。」
 「すべての合併協議会設置勧告対象市町村の長から前項の規定による報告を受けたときは、直ちに、その結果及びすべての合併協議会設置勧告対象市町村の長から同項の規定による報告を受けた日(第七項において「報告完了日」という。)をすべての合併協議会設置勧告対象市町村の長に通知しなければならない。」
 「合併協議会設置協議について可決しない市町村において、基準日から十三日以内に第七項後段の規定による公表がなかったときは、選挙権を有する者は、政令で定めるところにより、その総数の六分の一以上の者の連署をもって、その代表者から、当該合併協議会設置協議について可決しない市町村の選挙管理委員会に対し、合併協議会設置協議について選挙人の投票に付するよう請求することができる。」
 「合併協議会設置協議について可決しない市町村の選挙管理委員会は、政令で定めるところにより、合併協議会設置協議について選挙人の投票に付さなければならない。」
 その「投票において、合併協議会設置協議について有効投票の総数の過半数の賛成があったときは、合併協議会設置協議について合併協議会設置協議について可決しない市町村の議会が可決したものとみなす。」
 この様に遮二無二、合併を推進する方向へ持っていこうとする政府の意図が露骨である。
 「自主的な合併」という文言をやたらと使っている条文であるが、「自主」とはほど遠い国が方針を決め、都道府県が指図し、市町村議会に実行を迫る、きかなければ住民発議で合併にもっていくという「合併強制法」である。

2、住民の自治権を剥奪した合併特例区
 もう一つの重要な問題は合併した町村が場合によっては自治権が剥奪されるという問題である。「第三章 合併特例区(第26条−第57条)
 合併後の一定期間(5年以下、1又は2以上の合併関係市町村の区域であった区域を単位として、特別地方公共団体である合併特例区(法人格を有する)を設けることができる。」「合併特例区の長は、合併市町村の長が選任する特別職とする。また、合併市町村の助役又は支所・出張所長若しくは指定都市の区の事務所・出張所長を兼ねることができる。」
「(4) 合併特例区協議会
1 構成員は、合併特例区内に住所を有する合併市町村の議会議員の被選挙権を有する者のうちから、規約に定める方法により合併市町村の長が選任。」
となっている。これは、第27次地方制度審議会で出され全国町村会はじめ地方六団体の激しい反発をかった答申をそのまま取り入れたものである。
「「2 権限 ア 予算等の重要事項を定めるときは、合併特例区協議会の同意が必要。イ 規約で定める合併特例区の区域に係る重要事項を実施しようとする場合は、合併特例区協議会の意見を聴かなければならない。 ウ 合併特例区協議会は地域振興等合併特例区の区域に係る事務に関し合併市町村の長その他の機関に意見を述べることができる。」
と一応、民主主義を保証しているかの様な装いをこらしているが、その区内の長及び合併特区協議会の構成員は合併市町村長が「選任」することになり、特区の住民はその長や代議員を選ぶ権利を奪われ、住民の自治権は完全に奪い去られているのである。
 そして、これらは地方自治法と整合性をもたせるために自治法を改正したのである。
 紙面の都合で合併新法が持つ問題点を2点、有無を言わせない上意下達の合併強制法であること、合併しても、人口が少なく財政基盤が弱い町村部は特別区として住民自治を剥奪される可能性が高い。極めて大きな問題である。
 「平成の大合併」では青森県旧浪岡町の様に住民の多数が合併を望んでいないにも関わらず、買収工作の疑いで推進議員や町長など9名が逮捕される強引な合併工作が行われ、合併が強行された。その青森県で5市町で飛び地ができた(16頁地図参照)。これも国や県の天下り官僚を通じた利権絡みの強引な合併誘導の結果と言える。
 「小泉改革政治」は「21世紀臨調」=多国籍企業の論理にもとづく国家改造計画であり、その具体化として強行された「平成の大合併」はいかに全国の町村と自治が破壊されているかを示して余りあるのではないか。この悪法の廃止へ向けた声を上げるべきである。