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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版26号(2005年2月発行)

中川圭一・全国町村議会議長会会長に聞く

地方自治の確立へ

3度にわたって総決起大会

 いま全国の市町村は「平成大合併」と「三位一体改革」の激流の中にある。その中でいちはやく立ち上がったのは、全国町村会と全国町村議会議長会であった。一昨年2月25日、両団体は日本武道館において、初めて共同して6000人の総決起大会を開いた。さらに昨年はそれを地方6団体の共同に広げて、5月25日に7600人、11月17日に1万人の総決起大会を開いた。三度にわたる大規模な行動に直面して、政府も一定の譲歩をせざるを得なかった。1月5日、京都府園部町に中川圭一・全国町村議会議長会会長を訪ねて、お話を伺った。 

町村自治確立総決起大会

 われわれ地方は国に対して、地方に権限を移譲すべきだ、分権すべきだということをずっと主張してきました。「そやったら合併せい。それだけの受け皿にせなあかん」ということになり、平成12年の地方分権一括法によって合併特例法が改正され、合併に拍車がかかってきました。
 当時3千数百あった市町村を合併して、三分の一の1000に減らすという方針が出てきました。合併する市町村には国が財政支援して、合併特例債を認め、地方交付税も減らさない。他方で、合併しない市町村については交付税を削減していく。「アメとムチ」による合併推進策です。合併は地方分権の受け皿、手段だと思っていたのに、国の財政再建のために合併しろと、いつの間にか合併自身が目的に変わりました。
 しかし、合併は一向に進まない。そこで、第27次地方制度審議会の中で、西尾勝副会長(国際基督教大学教授)が人口1万人未満の町村には自治権を認めず、県や周辺市に自治権を移管させるという提案を行いました。いわゆる「西尾私案」です。そして、平成14年11月の答申では、現行の合併特例法の失効後は新法を制定し、「おおむね人口1万人未満」を目安として小規模町村を対象に都道府県が合併構想を策定すべきである、と明記されました。言うまでもなく、人口規模と自治能力は全く関係がありません。あえて答申に人口規模を示したことは、形を変えた強制合併方策と言わざるを得ません。
 われわれは大変な危機感を持ちました。これでは多くの町村が潰れてしまう。絶対に認めるわけにはいかない。そこで、平成15年2月25日、史上初めて、全国町村議会議長会と全国町村会が共催して、日本武道館に6000名を結集し「町村自治確立総決起大会」を開催しました。地方の怒りが高まる中で、平成16年5月の合併新法には「1万人未満」の人口規模は明記されませんでした。

地方財政危機突破総決起大会

 「町村自治確立総決起大会」を契機に、全国町村議会議長会と全国町村会の連携が強まりました。それまで、町村議会議長会の三役と町村会の三役の懇談会はあまりなかったのですが、平成15年7月に私が会長になってから、3回ぐらい懇談会をやりました。町村に帰れば首長と議会の関係だけれども、「地方という形では一緒や。お互いに連携していこう」ということで進んでいくわけです。
 そういう中で、平成15年の年末、抜き打ち的に小泉総理から地方交付税の12%、2.9兆円削減が打ち出され、全国の自治体で大混乱になりました。そこで、平成16年3月の末くらいに、全国町村会の三役と懇談しました。全国町村会の山本会長が「中川会長、こんなことでは地方は潰されてしまう。西尾私案の時のように、もう一回武道館で決起集会をやらなあかんなあ。どうや」と言い、私も「同感。今度は、地方6団体規模でやろう」と応じました。こうして、平成16年5月25日、地方6団体が共催して、日本武道館において、7600名の「地方財政危機突破総決起大会」を開催しました。
 それで、小泉総理の方から、国庫補助負担金の削減案を地方にまかすということになったわけです。これで地方はすったもんだして、全国知事会でもいろいろありました。正直言って、税源移譲と言っても、われわれ町村にとって直接のメリットはほとんどありません。課税対象が少なく財源が乏しいところに税源が来るはずもない。だから、地方交付税を何としても堅持してもらわなければならん。町村議会議長会は町村会と連携して、地方交付税の財源保障機能・調整機能を堅持すること、財政的に弱い自治体には配慮すること、それを前提条件に入れてもらえるなら、小異を捨ててやっていこう、ということになったわけです。こうして8月19日、地方6団体の「国庫補助負担金等に関する改革案」がまとまりました。
 その地方案を小泉総理に渡す時には、国と地方の協議の場を設けることを条件にしました。小泉総理が「それはいいんじゃないか。あとは細田官房長官とつめてもらったらいい」と認めたので、正式に渡しました。

地方分権推進総決起大会

 「国と地方の協議の場」は、9月14日を第1回にして、平成16年中に8回開催されました。国と地方が対等の立場で協議を重ねたことは、大きな前進として評価しています。
 そのさなかの10月22日、谷垣財務大臣が経済財政諮問会議で、地方交付税算出の根拠となる地方財政計画には不適切な「過剰計上」があり、17〜18年度の2年間で地方交付税を7.8兆円削減する必要があると打ち出しました。これは「地方交付税の財源保障機能・調整機能を堅持する」という、地方案の前提条件を根底から否定するものです。「何を言うてるんか」ということで、7.8兆円を削減されたら京都府がどうなるかを試算しました。歳入総額が82億円のわが園部町で10億円近い地方交付税の削減になります。これは大変なことです。
 私は同じ京都府ということもあり、谷垣財務大臣のところへ、地方6団体でとは別に3〜4回行きました。出産祝い金や子育て支援手当など不適切なところに地方交付税が使われている、という批判に対して、「今日まで国はそういった町づくりを、特色ある町村だ、ユニークな事業をやってはる、この事業をやったらこれだけの金をつけるさかいやれと言うて、表彰したり奨励したりしてきたやないか。それを今になって、とんでもないところに使うていると言うさかい、それはおかしい」と反論しました。
 このままいったら押し切られてしまうと思い、全国知事会の梶原会長に「今が一番重要な時だ。何とかもう1度、武道館でやろうじゃないか」と話しました。梶原会長がその場で「1万人集会だな。中川会長が提案されたけれど、それでいいですね」と言い、地方6団体が一致して開催することなりました。日本武道館は、全国町村議会議長会の大会の会場として、すでにわれわれが押さえていたので、その日にあわせて、正午から私たちの議長会全国大会、終了後引き続き総決起大会と時間を調整しました。こうして、11月17日、1万人の「地方分権推進総決起大会」を開催しました。

地方分権推進連盟

 この総決起大会で、地方6団体で構成する「地方分権推進連盟」を立ち上げることになりました。役員は地方6団体で分担し、議会側の3人(都道府県議会議長会、市議会議長会、町村議会議長会の各会長)が会長、執行部側の3人(知事会、市長会、町村会の各会長)を含めて6名の役員体制です。議員数が一番多いということで、町村議会議長会が事務局をやることになりました。都道府県版の地方分権推進連盟も、すでに47都道府県のうち35カ所で立ち上がっています。1月28日に第1回総会を開催する予定です。
 衆議院の11の選挙ブロック毎に、党派を問わず、地方分権に賛同する国会議員の先生方に顧問に就任していただき、地方6団体のホームページで公表します。保守だ、革新だなどと、悠長なことは言っておられません。何党であろうと、誰が地方分権に賛成する方か、国民のみなさんがわかるようにしようということです。11のブロックに分けるのも、東京に行けば東京向けの顔、地方に来れば地方向けの顔と、二つの顔を使い分けることがないように、はっきりしてもらうためです。きついようですが、そこまでやらないと、たたかれ放しでは、地方は生き残っていけない。それほどの危機感を持っています。
 これからが正念場です。地方6団体は17〜18年度で3兆2千億円の国庫補助負担金の削減、それに見合う3兆円程度の税源移譲を提案しました。しかし、17年度に税源移譲されるのは義務教育費と国民健康保険などの1兆1千億円で、しかも地方が求めていない国民健康保険が入ってる状況ですから、国はどうするのか、引き続き18年度があります。さらに第2期の19〜21年度があります。
 特に、何としても堅持しなければならないのが地方交付税です。昨年11月の総決起大会を背景に、17年度の地方交付税は5年ぶりに増加して100億円のプラスになり、一応は地方の声を汲み上げた形になりました。実際には、地方税の税収を1兆円増と見込んで、臨時財政対策債が9700億円減になったので、それと地方交付税をあわせた額では9600億円のマイナスになっています。平成15年の年末に、抜き打ち的にやられた分は返ってきていないわけですから、われわれ町村としては、これもセットで穴埋めをしてもらう必要があります。だから、地方分権推進連盟で強力な運動を展開していかなければなりません。
 また、義務教育の関係は、地方6団体の執行3団体を中央教育審議会に参加させるよう強く要望しています。国はこれを認めるべきだと思います。さらに、国は地方分権といいながら、地方に対する国の関与、規制の廃止はきわめて不十分です。地方の自主性を尊重し、これを早急にやってもらわなければなりません。国は合併しろとか、金を使いすぎているとか、われわれだけを苦しめていますが、国庫補助負担金の削減でその分は仕事量が減るわけですから、今度は国が自らの改革を進めるべきです。改革を目に見える形で示してもらうのが筋だと思います。それをしっかり監視していかなければなりません。

地方交付税の堅持

 地方交付税は町村の自主財源です。所得税および酒税の32%、法人税の35.8%、消費税の5分の4の29.5%、国のたばこ税の25%は地方交付税として地方に再配分すると、法律で決まっています。率が決まっていますから、税収が減れば地方交付税も減りますが、法律を変えないかぎり、国が勝手に地方交付税を減らしたりすることはできないわけです。特に、人口が少なく税源の乏しい町村にとって、地方交付税はなくてはならない財源です。
 町村が、わが国の人口に占める割合は2割ですが、国土面積に占める割合は7割です。この数字が物語っているのは、人口の少ない町村が、わが国土の大半を守っているということです。人間にとって不可欠な新鮮な空気と水、そして美しい環境を提供しているのは農山漁村です。下流の都市を洪水から守っているのは、上流にある山村の森林であり、農村の水田です。日本の隅々まで人が住んでいるから、里山や棚田、水源林や砂防林が守られているのです。
 人の少ない所に道路は要らない、鉄道は要らない、などというのは都会の勝手な論理です。そうなれば農山漁村に誰も住まなくなり、どんどん都会に集中します。首都圏にいっぱいビルを建てて、みんなそこに住んだら、効率はいいかもしれません。しかし、それで国は成り立ちますか。成り立たないでしょう。どこに住もうとも、同じ国民としての権利を保障するのは国の責任です。だから、地方交付税で、国民がどこに住んでいても、国で定めた一定水準の行政サービスを受けることができるよう、自治体に必要な財源を保障しているのです。
 ところが、国は平成16年度の予算で、突然、地方交付税を12%も減らしたわけです。国の財政が厳しいからといって、地方交付税まで削減するのは、無責任なことです。税源の乏しい町村ほど、歳入の中で地方交付税が大きな割合を占めているため、深刻な影響を受けました。多くの町村が自治体の貯金である財政調整基金を取り崩して、何とかやりくりしました。そうやって行政水準を何とか維持したので、住民は危機感を感じていませんが、行政に携わっている者は必死です。町村の貯金はもう底をつくところまで来ています。次の予算が組めない町村、財政再建団体に転落する町村が出てくるのは目に見えています。
 今まで補助金を100万円出していた団体に、これからは50万円だと言えば悲鳴を上げるでしょう。子どもが生まれたら30万円出していた子宝祝い金も取り止めだ、18歳まで無料だった医療費も6歳以上は有料だと言えば、住民はびっくりして、「それはなんちゅうことや」となります。「国から地方交付税が来なくなったからや」と言えば、危機の深刻さがいっぺんにわかると思います。そういう財政の実態、地方交付税制度の重要性が、自治体の末端にまで伝わっていない現状を何とかしなければなりません。地方6団体では、国民に分かりやすいパンフレットやリーフレットを作ろうと思っています。
 われわれ町村は、国土の7割を守り、維持していることに誇りをもっています。町村が成り立たなければ、国も成り立ちません。町村の死活がかかっている「地方交付税制度堅持」が、わが国土を守ることでもあることを、銘記してほしいと思います。(文責編集部)


地方分権改革の推進に関する決議

 地方分権の推進は、明治維新以来の中央集権体制を変革するものであり、新しい国のかたちを創るため、我々は、この流れをさらに加速させなければならない。
 平成5年に衆・参両院によって全会一致で地方分権の推進に関する決議がなされ、平成12年には地方分権一括法が施行された。しかし、真の地方分権型社会の到来というには残された課題が多い。中でも我々が強く主張してきたのが地方分権時代にふさわしい地方税財政基盤の確立である。政府・国会においては、そうした経緯及びそれらが国民の総意に基づくものであることを改めて確認すべきである。
 我々がかねてから主張しているように、「三位一体の改革」は、地方分権改革の推進のために行うものであり、決して国の財政再建のための手段であってはならない。
 しかるに、現実の動きは、我々の目指すものとはほど遠いものであった。
 このため、我々は、平成16年11月17日に開催された「地方分権推進総決起大会」において、真の地方分権を推進するためには、広く国民に訴えるとともに、政治の場に強力に働きかけることが重要と判断し、地方分権推進連盟を発足させた。
 政府・与党においてとりまとめられた「三位一体の改革」の全体像は、その過程において、国と地方が対等の立場で協議を重ねたことは、画期的なことと評価しうるものであるが、その内容については、多くの課題が先送りされるとともに、地方自治に対する国の関与・規制の見直しの不徹底など、地方の改革案の趣旨からして不十分な点が多い。
 我々は、多くの残された課題について、引き続き、地方の改革案の実現に向け政府・国会に対して強力に働きかけていくとともに、より住民に身近なところで政策決定を行い、住民の意向に沿った政治・行政を可能とする改革こそ我々の目ざすものであることについて、広く国民の皆様の理解が得られるよう、更に一層強力に運動を展開していくものである。
 以上、決議する。
    平成17年1月28日  
   地方分権推進連盟