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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版26号(2005年2月発行)

大崎上島町の合併の現状

合併してもいい事はないのぉ

広島県大崎上島町議会議員 松本 進


はじめに

 2003年4月1日に大崎上島にあった3つの町、大崎町、東野町、木江町が対等合併しました。新町名は、大崎上島町で人口約1万人、世帯4600、面積43Kuの島の町です。もう半年を迎えますが、まだ新町の機能がうまく行っていない現状です。検証が、まだ十分でなく丁寧な報告できませんが、県内でもいち早く合併をした町であり、現状と問題点などを報告します。
 
「合併してもいい事はないのぉ」

 この言葉は、最近住民から時々聞く言葉です。町民から見れば、この間合併の話が起こり、実施になるまで、合併は仕方がない。合併してもあまり関係ない。無関心。これが多かったです。
 少子・高齢化が進んでおり高齢化率は35%。私のいる旧木江町は43%で2人に1人が65歳以上で50代はまだ若者といった感じです。いいことは無いと言われるのは、(1)最近行われた敬老会が、これまでは町内2カ所で行われていたものが、1カ所にされた。そして皆に出ていた祝い金がなくなった。(2)役場のどこへ要望や苦情などをいったらいいか分かりにくい。(3)いいことが見当たらない。(4)役場が動かない、仕事が減った。組織機構が悪い。(5)「負担は安い方に」といっていたが、健康診断の料金が高くなった、旧木江町にあった出産や入学時の祝い金がなくなった。等々、町民からの素直な声です。
 同じ島内でも3町で制度や仕組みが違っていた。条例、規則など2町以上で実施していたものは継続、一町でしていたものは大方廃止や見直し。そのもとで地域固有の良いもの、住民要望や、過去の経緯で制度化されたものがなくされていった。行政の根本狙いが、経費の削減、効率化にあり、面倒なことは後回しになったと思います。スケールメリットといっていたが目に見えるメリットはなく、県から買っている用水の契約見直しで、一世帯水道の基本料が100円安くなったぐらいです。
 合併問題研究会、そして法定合併協議会が作られ合併が実現化するまで丸2年間。強引にお膳立てされ、十分な議論、意見集約もなく突き進んできたことは否めません。当時の会長(町長)はまず、合併時期を早め、県内トップクラスで行きたいと意欲を誇示していました。その強引さ、性急さ、そのようなツケが現在に回ってきているといえます(一応は、合併協で図り、決定してきたといい訳はするが)。

新町建設計画、予算

 合併に伴い新町の建設計画を作るようになっています。町村の長期総合計画のようなものです。町建設の基本方針、10年間のハード、ソフトの事業、財政計画などです。町民アンケートで要望を聞きそれを基にしていますが、これまで作成されていた、過疎地活性化計画や離島振興計画事業に示されていた大型事業などを踏襲しています。
 アンケートは、2001年10月に島内の18歳以上約9000人を対象に行われました。答えたのは4700余人で回収率は52.8%でした。島内では、初めての大がかりな住民の声の集約であったと思われます。この結果は、今後の町の運営に私たちの政策にも反映させたいと思います。聞いた要望の柱の一つに「安心して暮らせる、医療と福祉のまち」があり、これを選んだ人が3600人とダントツで1位でした。その他合併後の施策要望には、(1)診療所の整備(2400人)、(2)船・交通の整備、(3)本土との橋(2000人)と続いていました。
 日頃、議会の中で福祉の充実を追求すると、町長は「福祉は金がかかる。財政の許す範囲内でする」と答弁しています。これまでしなかったものを、合併したらしますとはとはならないでしょう。しかし、町民からは、生活の中からの声として前記のような強い希望があるわけです。
 財政計画の裏づけなどは議員もよく分かっていません。概要も公表していませんし、分かる人はほとんどいない中で決まった状態となっています。10年間は国の交付金額旧3町分を保障するといっていましたが、既に小規模自治体は毎年金額が削減されてきています。
 合併協議会で提出された財政計画の推計を見ると、2001年度3町の一般会計の予算規模は94億円。合併初年度の03年度は、84億円。10年先の12年度は、62億円。その後5年間で毎年交付金額を逓減させていきます。合併10年間の普通会計総事業費は、243億となっていますが、今でも起債は、過疎債を使いますが、合併特例債を使わなくても同様な条件で事業はできる仕組みです。
 ただ、起債は、言うまでもなく町の借金であり、先で返さなければなりません。長い時間と労力をかけ町民に約束した建設計画ですが、議員の中には、計画が始まる前から、既に事業の見直しや廃止の声を出している人がいます。見直しがなくても良いとは言いませんが、合併間無しにこんなことがボンボン発言に出ることに、何のための合併だったのかと憤りを感じます。私たちは、せめて、住民要望や、福祉や、暮らしを守るように監視や、提言をし続けねばと強く思います。


資料 2年間で合併した広島県内の市町村
平成15年 3月1日 佐伯町、吉和村→編入 廿日市市
4月1日 大崎町、東野町、木江町→新設 大崎上島町
呉市、下蒲刈町→編入 呉市
平成16年 3月1日 吉田町、八千代町、美土里町、高宮町、甲田町、向原町→新設 安芸高田市
4月1日 三次市、甲奴町、君田村、布野村、作木村、吉舎町、三良坂町、三和町→新設 三次市
呉市、川尻町→編入 呉市
10月1日 加計町、筒賀村、戸河内町→新設 安芸太田町
甲山町、世羅町、世羅西町→新設 世羅町
11月5日 油木町、神石町、豊松村、三和町→新設 神石高原町
平成17年 2月1日 芸北町、大朝町、千代田町、豊平町→新設 北広島町