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『日本の進路』地方議員版21号(2003年11月発行)

県央四市町村の合併に関する
大きな危惧について

新潟県加茂市長 小池清彦


 小池市長は平成15年8月21日に、三条市、田上町、栄町、下田村の三役、議員、担当部課長に「市町村合併は衰退の道である」と合併に反対の意見書を送った。そして、当該市町村内に、同趣旨の新聞折り込みチラシを配布した。
 元防衛庁教育訓練局長であった小池市長は、小泉首相と全国会議員にイラクへの自衛隊派遣に反対する訴えを行ったことでも有名である。

1 新潟県は、合併協議会の数が全国で2番目に多く、異常な合併熱にとりつかれた県であります。私は、市町村の集団自殺によって破滅に向かいつつあるこの県の一市長として、誠に寒心に耐えないところであります。

2 県央においても、三条市、栄町、田上町、下田村の四市町村が、合併に向かって進もうとしておられ、これらの市町村と密接な関係を有する加茂市の市長として、深く憂慮せざるをえないところであります。

3 冷静に分析した場合、新潟県が没落し、加茂市の隣に衰退した新しい市が出現する心配が大きいときに、特に新しい市の旧町村部は著しく衰退する可能性が大きいときに、私は何と言われようとも、私の大きな危惧の思いだけは、申させていただかなければならないと考え、あえてこの文書をお送り申し上げる次第であります。

4 まず以て私が心配いたしますのは、四市町村の合併によって、新しい市に来る国の金は、地方交付税交付金だけでも少なくとも毎年約40億円減るであろうということであります。また、その毎年減る40億円については、これを人口割りにしますと、旧三条市地域でも実際は減るはずなのですが、このたびは、計算上、減る分はありません。一方、旧田上町地域では、毎年14億円も減り、旧下田村地域では19億円も減り、旧栄町地域では6億円も減るということであります。

5 即ち、旧田上町地域では、これまで毎年2 3億円ずつ国から来ていた地方交付税交付金は9億円に減り、旧下田村地域では、これまで27億円ずつ来ていたものが8億円に減り、旧栄町地域では、毎年14億円ずつ来ていたものが、8億円に減るものと思われます。

6 これは、旧田上町地域と旧下田村地域の壊滅を意味するものと思われます。旧栄町地域も大きな痛手を受けることになりましょう。それならばと、もし旧三条市地域の分を他の三地域へ回せば、今度は旧三条市地域が衰退することになります。ほかの多くの県におけるように、合併などしなければ何も起こらないのに、合併したとたんに、このようになるのであります。それは、国がこのたびの市町村合併を進める唯一の目的が、地方へよこす金を減らすことにあるからであります。

7 以上申し述べましたことを具体的に説明いたします。
 四市町村が合併すると、合併前の各市町村の地方交付税交付金の段階補正分の合計額が大幅に減ってしまうため、新しい市の国から来る地方交付税交付金の人口一人当たりの交付額は、現在の三条市の一人当たり交付額よりも少なくなります。しかし、仮に多く見積もって、現在の一人当たりの交付額66,031円が国から来ると仮定すると、次の表のようになります。
(表「市町村合併による地方交付税の額の減少の試算」略)
 このように計算いたしますと、合併しなければ、これまで毎年121億円の地方交付税交付金がこの地域へ来ていたのに、合併すると、それは81億円に減ってしまいます。即ち40億円の減となります。しかも、前述のように、その毎年減る分40億円のほとんどすべてが、旧田上町、旧下田村、旧栄町のいわゆる周辺部で減らされるということになります。

 8 上で述べた結果を、地方交付税の算定における「段階補正分」の計算の方から見てみます。
 地方交付税交付金における段階補正分とは、人口10万人の市の段階補正分をゼロとし、それから人口が減るに従って幾何級数的に段階補正分が増えていくというものです。他方人口が10万人を超えますと、割り落としという制度によって、幾何級数的にマイナスの段階補正が課されることになります。マイナスの段階補正分とは、一定の計算式により算定された地方交付税交付金の額からその段階補正額を差し引かれるということであります。即ち、四市町村が合併すると人口12万1千人の新しい市ができ、これは10万人を超えますので、マイナスの段階補正が課せられます。その額は、マイナス3億1千百万円で、この分が地方交付税交付金から差し引かれるという大変なことになります。
 その状況は、次のとおりとなります。

表「県央東部の合併による普通交付税段階補正の影響額」(平成12年度普通交付税による試算) 略
表「平成12年度 普通交付税・特別交付税一覧表」 略

 合併前の四市町村の段階補正分の合計額は15億5千3百万円で、合併後の新しい市の段階補正分はマイナス3億1千百万円ですから、合併によって段階補正分は18億6千4百万円も減ることになります。即ち、合併すると段階補正分だけで18億6千4百万円ものお金が確実に毎年来なくなりますので、これだけでも壊滅的打撃ですが、それだけでは済みません。市町村が事業を行うときは、まず起債(借金)をすることになっており、通常、返済時等に事業費の半分以上は国が金を出す仕組みになっております。そうしますと、新しい市には毎年18億6千4百万円もの金が来なくなりますので、その分を新しい市の自己負担分とする事業を起こすことができなくなります。その結果、事業を行えば来るであろう新しい市の自己負担分と同額以上の金が国から来なくなります。従って、新しい市には、毎年段階補正分の減18億6千4百万円の2倍即ち37億2千8百万円以上の金が国から来なくなります。この金額は、7のやり方で計算した40億円に符合いたします。

9 このように、2つのやり方での計算はいずれも、県央四市町村が合併した場合には、毎年40億円もの金がこの地域に来なくなることを示しています。しかもそのほとんどすべてが、旧田上町と旧下田村と旧栄町の分として減ることになるのです。特に旧田上町と旧下田村が受ける打撃は致命的と申し上げてよろしいかと思います。

10 ところが国は、老獪な手法として、合併によって大幅に減ることになる地方交付税交付金を10年間は減らさず、10年たったらその後5年間に一気に減らすこととしています。しかし新しい市において10年後に交付税が致命的に減ることがわかっているのに、のんびりしていることができるでしょうか。新しい市は、当然発足当初から、10年後の致命的な事態に備えて、超緊縮財政政策をとり、福祉その他の水準を最低に抑えて、ひたすら貯金に励まねばならなくなります。また、合併特例債の起債などしている財政的余裕はありません。

11 合併特例債は、10年ないし15年と返済期間が短いうえに、返済時に新市が3割を負担せねばならない危険なものであります。
 合併特例債は、使途が制限されており、合併することになって必要となるもの、たとえば巨大な市役所のようなごく限られたものに対してのみ認められるものであります。
 さらにこの合併特例債には「起債制限比率」の制限があって、これが15%を超えないようにしなければならず、起債することはほとんど不可能なものであります。平成1 4年11月14日、全国市長会理事会において、総務省の事務方のナンバー2である香山総務審議官は、私の質問に対して「起債制限比率は守ってもらわねばなりません。総務省は、起債制限比率を見ながら、1件1件査定します。」と答えておられるのです。
 即ち、合併特例債というものは、馬の鼻先につるされたニンジンのようなもので、食べようとして食べることのできないものであります。

12 市町村合併によるスケールメリットなどというものは、幻想であり、実際には存在しないものであります。合併しても、職員の数は減りません。職員一人で担当できる住民の数は、ほとんど一定で変わらないからです。ちなみに、職員一人当たりの住民の数は、田上町91.1人、燕市91.8人、新潟市95.7人、加茂市101.6人です。市長と助役がいなくなっても、市役所支所の所長と次長が新設されます。議員の数の減少によって節約されるお金などは、総予算の中では微々たるものであります。さらに、議員の減少は民主主義の自殺です。

13 平成13年度に臨時財政対策債が創設されて以来、実質的な地方交付税交付金は、名目上の地方交付税交付金に臨時財政対策債を加えた額となりました。臨時財政対策債は、国が起債を起こして作ったお金を地方交付税交付金として交付する代わりに、市町村等に起債を起こさせて、返済する時に全額国が負担するものであります。
 全国市長会で総務省は、地方交付税交付金は今後とも実質減らないと説明しており、現実に各市町村に来る実質的な地方交付税交付金は減ってはおりません。それが合併すると破滅的に減ることになるのです。

14 合併熱は、新潟県で特に激しい流行のようなものであります。新潟県に隣接する県では、それほど大きな動きではありません。
 福島県の佐藤栄佐久知事と長野県の田中康夫知事は、市町村合併反対の急先鋒であります。富山県の中沖豊知事は総務省の出身で、市町村合併に関する政府の真意をよく御存じですから、同県における合併の動きは、それほど大きなものではありません。群馬県と山形県は、もともと合併の動きが大きなところではありません。

15 このたびの「平成の大合併」なるものの特徴は、国が説得力のあるメリットを何一つ示すことができないまま、進行していることであります。
 それもそのはずでありまして、そもそもこのたびの市町村合併が言われ出したのは、前々回の参議院選挙において自民党が東京都で全敗したことに端を発しているのであります。このとき都市の国会議員の間で「自民党は都市の住民に見放されているのではないか。」との危機感が生じ、極力地方へやる金を減らすための手段として市町村合併が言われ出したのであります。しかし、それもお座なりのものであったのですが、小泉総理になってから3千2百の市町村を300以下にすると言い出して、事が大きくなったのです。
 従って、政府の意図は、市町村合併によって、その地域へ渡す金を大幅に減らすことにのみあるのであります。

16 日本の市町村の数は約3千2百、ドイツは約1万2千(一説では1万6千)。フランスは約3万7千、アメリカは約1万8千もあります。ヨーロッパ大陸やアメリカでは、人口1万人といえば、特段に大きなまちなのです。これでこそ、地方で直接民主主義的要素を豊に持った市民中心の民主的政治が可能となるのです。日本だけが、ヨーロッパやアメリカで主流の人口1万人以下の町村をなくする必要がどこにあるのでしょうか。

17 合併は、誘蛾灯のようなものであります。あの美しい灯火には大きな夢があり希望があるように見えるかもしれませんが、それは幻想であります。そこには、破滅が待っているのみであります。

18 私は、日本が全体主義ファシズムの方向に進むことを阻止して民主主義を守り、新潟県を没落から守り、県央を没落から守り、豊葦原の瑞穂の国日本の存立の基盤である町や村を守り抜くために、あえて問題を提起させていただいた次第であります。
 何卒よろしく御理解下さいますよう、御願い申し上げます。

加茂市のホームページより
http://www.city.kamo.niigata.jp/