国民連合とは月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場 集会案内 出版物案内トップ


自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版17号(2002年11月発行)

球磨川と八代海の再生と農工商の活性化を

川辺川ダム建設は必要ない

熊本県八代市長 中島隆利


 今回の選挙は前市長の職員採用問題に発した辞職を受けて行われました。沖田前市長が3期12年担当されたわけですが、以前の八代市政は、政争の繰り返しでした。その政争をなくし、不祥事を起こした市政の信頼回復を行うことが最大の課題だったと思います。
 それと、川辺川ダム建設に賛成するか反対するかが問われました。私は何としても八代の政争をなくし、政治の信頼回復をしたい。もう一つは球磨川にこれ以上ダムを作らせてならないと、八代は球磨川と八代海に育まれてきたわけですから、その環境の再生をしたい。そのためにはダムを作るべきではないとそういう立場で立候補して、当選させていただきました。
 
 市民連合的な勝手連に推されて市長選に

 私は熊本県議会議員として来年の統一地方選挙で5期目を目指していました。ところが去年暮れから、市民の間で「市政を変えよう」、市長選の候補にと大衆団体から言われ、年明けから経済界の若い人たちからも声が上がり始めました。さらに、沖田前市長が不祥事で逮捕される事件が発生しました。私の後援会組織は私が市長選に立候補することに対しては、当初は当選の可能性が少ないと反対で、私自身も大変悩みました。市政を変えたいという市民連合的な環境団体、市民団体、経済団体、そして労働団体を入れた協議が続きました。そういう中で「八代を良くする会」という市民連合ができ、そこから推されて最終的に市長選への出馬を決意しました。
 市内の環境団体、市民団体、経済団体、労働組合がそれぞれ役員を出して「良くする会」事務局で選対をつくり、あとは各団体が勝手連的に応援するという形でした。

 川辺川ダムに関心ある92%

 就任してすぐ、私の公約で掲げた川辺川ダム問題(それを含む球磨川流域、八代海の環境)と合併問題、この2つをテーマに「ふれあいトーク」を行い、16校区で800名が出席されました。各会場とも盛況で活発に意見が出されました。川辺川ダムに「関心がある」「やや関心がある」という人は92%。「関心がない」は7%です。約90%がダム建設反対という意見です。「これ以上球磨川にダムを作るべきじゃない」「地下水の水位も下がって、球磨川も八代海も魚が少なくなった。これ以上ダムを作ったらもっとひどくなる」「ダムがなかったころ、球磨川では一日で今の一年分くらいの鮎が釣れていた。ところが今は人吉まで3つのダムがあって、商品となるような鮎はとれない。ずいぶん環境が変わった」という話が年輩からでました。八代海、球磨川の環境というのはダムだけじゃない、生活排水や工業廃水など環境総体を議論をしていこうという意見が大勢を占めました。中には「五木、相良はダム建設の苦渋の選択した。その意思を無視して反対だけではいけない」というような意見も出ました。出された意見は市報に掲載し市のホームページでも公開しました。

 切実な環境問題を国と県は議論していない

 4回やられた県民討論集会は治水に議論が終始しました。市民ふれあいトーク直後に知事と交渉し、球磨川流域や八代海の環境問題にテーマを絞って議論をしてほしいと申し入れ、了解をいただきました。しかし、県民討論集会の運営協議会で環境か治水かという議論がやられていますが、5回目がまだ再開されないという現状です。
 もう一つは国と県が球磨川流域協議会を作る。既設3つのダムの影響だとかあるいは生活排水、圃場のあり方だとかそういう問題を議論する全市協議会を作るという約束でした。しかし、上流地域町村が反対派が入るとだめだとか、あるいは川辺川ダムの是非を論議する場であれば参加しないなどを口実にまだ出来ずにいます。

 農工商業の発展を目指す

 工業と農業で栄えてきた八代ですが、農業は農産物の輸入拡大でい草が大変厳しい状況になっています。トマト、メロンも中国、韓国からの輸入で離農問題も出る状況です。いま、農薬漬けの野菜・食料に対する拒否反応が出ており、八代の新たな農業再生として、生産者と行政とシンクタンク・プロジェクトを作って、新しい農業再生の検討を来年から始めます。それは環境保全型の農業で、減農薬あるいは有機農業等々を研究して後継者育成をしながら産地形成をしていこうと、地元の安全な食料を地産地消運動で実践して全国に発信できる農業基地に再生していこうと思っています。それから農業に関連するいろいろな1・5次産業で農産物を売るだけでなく、加工して産業も連携しながら産業の活性化をしていこうと思います。
 工業については八代は明治の時代からセメント、日本製紙、興国人絹、三楽の4大産業で栄えてきました。いまはセメントが無くてYKK、ヤマハが入り5大工場があります。かつて4大工業で6000人の従業員がいたのが、今は5大工場で2000人しかいません。それも素材型産業だから大工場がリストラすれば中小に直接影響があります。だから新たな企業おこしをやろうと、研究機関、大学と連携して地場の企業の高度技術化支援を今年からスタートさせて、内陸の工業団地の可能性調査、先端技術の受け入れ誘致、地元の技術高度化に向けて工業振興策をとっています。
 もう一つ経済界からも提起されているのは、環境型産業を作るエコポート、エコタウン構想。八代は港があるので環境リサイクル企業をおこしてアジアに近い港を利用して全国やアジアにリサイクル型の工業製品の貿易を将来的には拡大していく、そういう拠点として、そのプロジェクトを作ろうと検討をしているところです。
 平成16年3月に新幹線が八代―鹿児島間でスタートします。新幹線駅前開発、過疎化が進んでいる中心市街地の活性化事業をやろうと思います。

 市民第一主義で人の集まる八代を

 人が集まる八代つくりをやろうと思います。市内には八代城など3つの城があり、九州三大祭りの一つ妙見祭、それから日奈久温泉、球磨川と観光を活用すればもっと人が集まると思います。行政だけでなくて経済界の入ったコンベンションセンターを作り民間の力をかりた振興策を考えています。そういう振興策に市民が参画をして知恵を出し合えば推進できると思います。
 いま、「市長への手紙」で県内外から球磨川のあのすばらしい環境を昔のように取り戻してほしいといろいろな提言がきています。
 農地が広がる郡築地区は干拓地でかつて明治、大正、昭和と有名な小作争議の歴史があり6年前に農家の人たちが教職員の人たちと一緒になっておじいちゃん、おばあちゃんの話を語り伝えようと「ほのおはけさない」という子供向けの絵本を作りました。そういう農家の後継者のみなさんとも連携し新しい八代市政をめざしたいと思います。
 いずれにしても一人では出来ませんので、来年の統一地方選では一緒に頑張ってくれる市議会議員が増えてほしいと思います。
 私の基本的な姿勢は市民第一主義を貫くことです。主権者は住民だから生活者視点の政治、特に市民参加の市政つくりです。基本に「共生」「共助」「共創」の3つを掲げ、住民の参加と対話で市民第一主義の市政を作ろうと呼びかけています。その基本が情報の提供、公開。インターネットを通じたり、できるだけ情報を住民に提供し、市民対話を徹底したい。6月から始めた「市長への手紙」は4ヵ月で市内外から135件くらい寄せられています。市民の間で市政を変えようという意識が非常に出てきています。今後も市民参加の市政つくりに全力を上げていきます。(文責 編集部)