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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版17号(2002年11月発行)

情報隠しによる放射能の危険を住民におしつける原子力政策

新潟県柏崎市議会議員 笠原浩栄


 昨年の5月27日、全国で初めてプルサーマル計画実施の可否を問う、住民投票が実施された。前段の住民投票条例制定の直接請求の署名活動や、条例成立に向けた刈羽村反原発団体やプルサーマル計画に反対する議員諸氏の活躍に負うところが大きかった。
 住民投票の結果は、有権者4,092人(投票率88.14%)でプルサーマル計画反対が1925票、賛成が1533票、保留131票、無効6票でプルサーマル導入反対の結論が決定した。そして住民投票直後の6月1日と7月16日に二回の新潟県知事・刈羽村長・柏崎市長の三者会談が開催され、プルサーマル計画の実施は正式に延期された。
 しかし住民投票直後から今年にかけて東京電力は広報担当者を増員し、理解活動と称して刈羽村内全戸訪問を行い、村民の意識懐柔を計ってきた。当然国側も資源エネルギー庁は議会への説明会の開催、原子力委員会は「市民参加懇談会」を刈羽村で開催するなど、プルサーマル計画強行実施へ向けた地ならしを強めてきた。こうしたなか本年6月27日、刈羽村議会で「エネルギー政策推進決議」(推進側の提案)が議員提案され、この議決を受け村長は、7月8日からMOX燃料の健全性調査のためとしてベルギーの核燃料加工工場を訪問した。帰国後村内20集落で対話集会を開催し、村民の意識を探りたいとして、MOX燃料は健全で安全性は確認されたと説明をくりかえした。
 計画を強行実施にふみきりたい県知事や柏崎市長は刈羽村の対話集会の動向を見極め三者会談を開催し、プルサーマル計画の実施判断を決定する動向が強まっていた。その山場が8月下旬から9月上旬であり、我々を含む反原発団体は極度に緊張がたかまっていた。しかし国内での原発は恒常的に事故を続発している。8月22日東京電力福島第一3号機で制御棒駆動装置の配管が36本におよぶひび割れを発見した。この原子炉はプルサーマル計画の原発であり、当日緊急交渉を申し入れ柏崎刈羽原発に同様な損傷がないか7基(柏崎刈羽原発は7基稼働し、821万2千KWの世界最大出力)すべて運転を停止し調査すべきと強く申し入れたが、柏崎の東電に情報がないため23日に再交渉を行うことになった。
 ところが23日には、柏崎刈羽原発8号機(プルサーマル計画炉)で、原子炉圧力容器内の燃料体を覆う炉心隔壁(ショラウド)のひび割れを発見した。この二つの原発の故障はすべてが原発が安全稼働して行くうえで極めて重要な箇所であり、このまま稼働させれば重大事故につながる危険性をはらんでいた。まして危険なプルサーマル計画の実施は不可能であり、計画断念を国・自治体・東京電力に強く申し入れをおこなっていた。
 そこに8月29日柏崎刈羽原発1・2・5号機を含む、東京電力原子力発電所で29件に及ぶ自主点検の国への報告が改ざん・隠ぺいされていた事実が判明した。しかも2年も前に米ゼネラル・エレクトニック社の子会社の内部告発で情報を受けた国も国民に発表しなかったことになる。国・東京電力の事故隠しの体質は同罪である。当然プルサーマル計画は中止されたが、国民の安全を軽視した原子力政策は中止し、燃料電池や風力発電など自然エネルギーに転換すべきである。
 怒りまだ止まず。

プルサーマル計画の中止を求める決議

 現在のプルサーマル計画は、1997年2月の閣議了解に基づいて1999年度に関西電力高浜4号機、束京電力福島第一・3号機、2000年度に高浜3号機、柏崎刈羽3号機で実施すべく、電力事業者から関係自治体に要請があり、各自治体の事前了解がなされ、今日に至っている。
 柏崎市議会は99年2月定例議会で、プルサーマル計画にかかわる住民投票条例制定を求める直接請求をめぐって、真剣な論議が交わされた。この論議を踏まえ、市長は3号機でのMOX燃料使用についての「事前了解」を行った。
 しかし、99年9月、高浜原発用MOX燃料のデータ改ざんが明らかになり、福井・高浜原発での計画はとんざした。
 2001年2月、東京電力の福島・広野火力発電所増設計画凍結発表を契機に、福島県知事は、庁内に「県エネルギー政策検討会」を設け、プルサーマル計画凍結を含む核燃料サイクルやエネルギー政策の見直しを検討している。
 柏崎刈羽原発のプルサーマル計画については、昨年5月、刈羽村の住民投票で反対が過半数を超えたことから、知事、市長、村長の三者会談で見送られた。
 このように、福井、福島、新潟の立地県において、プルサーマル計画を容認するための前提条件である「MOX燃料の健全制」、「地元住民の理解」などが揺らいで、計画は先送りされてきた。
 そこに、今回の東京電力の長期に及ぶ点検作業記録の改ざん・隠蔽という許しがたい不祥事の発覚、経済産業省・原子力安全・保安院のチェック機能不全の実態が明らかになり、原子力にとっての最重要課題である「安全性」についての国や東京電力に対する国民・住民の信頼は一挙に崩れ去った。
 これによって、プルサーマル計画容認の前提条件はすべての根拠を失った。
 前提条件が崩壊した以上、プルサーマル計画の「事前了解」は実質的に成り立ち得なくなった。
 よって、柏崎市議会は、国及び東京電力に対し、プルサーマル計画中止(白紙撤回)を要求する。
 また、新潟県、柏崎市及び刈羽村は直ちに事前了解を白紙に戻すこと。
 以上、決議する。

   2002年9月6日
                                   柏崎市議会

 理由 国及び東京電力に対する市民の信頼が失われたため。