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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版17号(2002年11月発行)

市町村合併

まちの未来、決めるのは私たち市民

わたしもひとこと・合併通信 代表
静清合併の結論延期を求める会 事務局 磯谷 千代美


 国が進めている平成の大合併。今や全国の8割位の市町村で法定・任意合併協議会あるいはなんらかの合併協議を行っていると言われています。こうした中、私たちの住む静岡県清水市(人口約23.6万人)と静岡市(人口約47.0万人)との合併は、さいたま市に継ぐ大型合併として全国の注目を集めました。
 私たちは4年前の法定合併協議会の発足前から、「わたしもひとこと・合併通信」を発行してきました。今年前半、合併の是非決定に市民の声を反映させるよう、各界各層と連携して署名活動を行い、市議会始まって以来の署名を集めました。しかし、市民の声は聞き入れられることなく、合併が決定されました。現在、「対等合併」とは名ばかりの「吸収合併」の驚くばかりの事態が市民不在で進んでいます。
 これから合併協議が行われようとしてる全国の皆さん、是非、地域にとって悔いの無い選択ができるよう、頑張ってください。

主な経過と私たちの運動

 1997年夏、清水青年会議所による住民発議は、清水商工会議所など経済界も巻き込んで行われ、静清合併協議会が設置されました。合併協は4年間の協議の後、「対等合併」を決め、両市議会でも議決されました。現在は来年4月1日の合併に向け、2千項目以上のすり合わせ作業を行っています。
 私たちは、協議会設置前から、「わたしもひとこと・合併通信」というミニコミを発行してきました。市民の意見交換や、情報をわかりやすく提供し、合併問題を市民が主役で考えるためです。合併で市民サービスがどうなるかだけでなく、地域経済や清水市全体の利益を代表する立場をとりました。

合併の結論延期を求める8万3千人の署名

 4年間の協議で、合併は夢物語でなく、人口で2倍、県庁所在地の静岡市に清水市が吸収されるという現実が見えてきました。合併通信では、合併反対を表明した清水市漁協組合長や、清水商工会議所副会頭の「予想もしなかった経済の激変で、合併で新たに課税される事業所税は大変、赤字でも課税される。特例を最大限認めて欲しい」「下請けや働く人にもしわ寄せがゆく」という事業所税問題のインタビューなどいち早く掲載しました。
 こうした中で私たちは今年1月、「静清合併の結論延期を求める会」を結成し、市内の各界各層の市民が一緒になって、「結論を出すのはもう少し待って欲しい」「もっと市民の意向を把握すべき」という請願を議会に提出しました。紹介議員になってくれたのは、自民党2人、社民党1人、無所属1人の4人でした。自民党の2人は、請願提出直後に、会派を除名されました。集まった署名8万3458人。他に住民投票を求める会が約3万人集めたので、合わせて11万5千人です。清水の有権者は19万人ですから、様々な立場の方が協力してくれました。
 しかし、議会は、請願を多数決で否決し、合併を決定しました。余りにも市民の声を無視した暴挙です。

(1)財政危機を地方に押しつける
「地方の切り捨て」
 国と地方の財政危機はどうしようもない所まできています。そこで今ある自治体を3分の1にして効率化しようというのが市町村合併です。自治体のリストラです。国は様々な特例措置を用意しつつ、強制的に進めようとしています。
 現在、ほとんどの市町村で何らかの合併協議の動きがあります。インターネットで検索すると、全国の合併の状況がわかりますが、どこも追い立てられるように進められています。
 何故かと言うと、合併特例法での優遇措置の期限が2005年3月まで。協議会を立ち上げてから、合併までおよそ2年と言われているので、どの市町村も、年度内の議会で正式に協議会を立ち上げないと間に合わないのです。

(2)自治体の財政を巡る争い
 市町村合併を考える時、財政について考える必要があります。
 一つは交付金です。ただでさえ小さな市町村は「交付税の段階補正」見直しで交付金が減らされています。今後もっと減らされるでしょう。そういう状況の下で、合併した場合には、今後10年間はそれまでの交付金が保証されるのです。いくつかの自治体が一緒になれば、財政はそれだけ大きくなります。
 もう一つは、合併特例債です。新市建設計画に載った建設事業で国が重要と認めた事業への財政措置で、95%の特例債が発行でき、更に元利償還の70%があとで交付金として国から措置されます。この不況に公共事業は大変な魅力です。
 この二つの財政を誰が握るかです。ということは、握れなかった方はどうなるか、ということです。

(3)どこが財政をにぎるかの主導権争い
 全国で進められている合併協議は、まず、どことどこが合併するかの組合せで、もめています。大変な駆け引きがやられているのです。
 この2つの財政を巡って、「対等合併は無い」ということです。清水市と静岡市は、来年4月の合併に向けてすり合わせ作業が行われ、準備のための補正予算が組まれています。例えば、母子健康手帳は、まず内容を職員が確認します。その上で合併までに、一定数を作っておかなければなりません。合併した日に妊婦さんが申請に来たらすぐ渡すものです。これまではそれぞれの市の業者が請けていましたが、今度は新市が業者を決めます。現実には大きなまちの業者の方が規模が大きく、効率化された体力のある業者が多いので、静岡の業者が請け負うことになるでしょう。こうしたことが、全ての分野で行われます。
 吸収される小さなまちの側は、財政を巡る争いに負け、地域経済は疲弊していくでしょう。一般の市民にも影響が出てきます。吸収される側では、企業にとっても、市民にとっても良いことはほとんどありません。ただ、中には体力のある企業など合併しても勝ち抜いていける企業などが推進派として動くと思います。
 反対に、吸収する側はパイが大きくなるわけですから、進んで国の合併の方針を受け入れ、実行しようとするでしょう。もちろん吸収する側であっても、効率化で様々なあおりを受けることはあります。静岡市は、新市の市役所の移転が決められたことから、中心市街地の商店街は反対運動を行いました。
 今日、合併の組合せを巡って様々な駆け引きが行われているのは、どこも、自分が「お山の大将」=吸収する側になりたいからに他なりません。小さな町であっても、隣の大きな市に吸収されるより、より小さな村と合併して、吸収する側になりたいと考えるでしょう。
 そして、吸収されるよりも、自力でまちづくりをしようという「合併をしない」選択をする自治体も出てきました。

注意したい議員の在任特例

 清水市では議会始まって以来の署名を集めたにも関わらず、簡単に否決されました。市民の中には、合併そのものに反対の人も、こんな吸収合併は嫌だという人も多かったわけですが、いずれにせよ、進められていた合併協議には反対の雰囲気がほとんどだったのです。しかし、途中から議員たちの対応が変わっていきました。様々な要因があったのでしょうが、特に「議員の在任特例」が決まったことが大きな要因です。
 合併後、本来なら選挙ですが、任期切れの統一地方選を目前に、選挙抜きで2年間任期が延びます。歳費も静岡市の方が高いので、きっと静岡市に合わせられることでしょう。退職金・年金も上がります。すでに調査費は、清水市が月6万円、静岡市が15万円ですが、静岡にあわせることが決定されました。
 前回の選挙では合併問題は争点にもなっていません。その議員たちが、市民の意向を把握することもなく合併を決定し、任期は6年となり、歳費が上がる、これでは市民は納得できません。

市民にとって合併とは

 市民にとっては、合併問題はわかりにくく難しいのですが、地域経済の疲弊を招く吸収合併は決して市民の為にはなりません。
 また、静清合併は「市民サービスは高い方に、負担は低い方に併せる」と説明されてきました。高齢者福祉など静岡の方が進んでいることにあわせるものもいくらかあります。しかし、国や地方の財政危機から始まった自治体の合併は、効率化を目標としています。吸収する側でもされる側でも、数年の内に、効率化の名の下に福祉や教育予算が削られ、市民サービスが低下した例が多いのです。10年たてば、交付税は、効率化されたものとして、一挙に減らされるのですから。清水市と静岡市の場合、保育料や水道料など多くのすり合わせは、合併後に決められますが、現在のすり合わせ作業が、全くの市民不在で進められていることを考えると、予測がつきます。箱物優先の新市建設計画は、市財政の将来をより不安なものにしていくでしょう。

まちの未来、決めるのは私たち市民

 こうしたたくさんの問題がある以上、情報を公開し、市民が是非決定に参画していけるよう、声を上げていく必要があります。
 全国では、秋田県岩城町が18歳以上を対象に、合併相手は秋田市か本荘市かと、住民投票を行いました。香川県小豆郡三町合併協議会は18歳以上の島民に合併の是非を問う住民意向調査を行いました。埼玉県蓮田市では15歳以上を対象に合併アンケート。長野県平谷村では来年4月、中学生も参加して合併の是非の住民投票、徳島県宍喰町は、海南・海部2町との法定合併協設置についての住民投票…。様々な形がありますが、いずれにせよ、まちの未来を決めるのは、住民であるという原則を、住民の力によって守らせる、今こそ正念場です。

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