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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版12号(2001年8月発行)

小泉改革と地方自治

生命を脅かす社会保障改革

荒川区議会議員  今村まゆみ


 参議院選挙が終わりました。小泉その人は選挙に立候補しているわけでもないのに、小泉人気投票と思われる選挙。参議院の役目はどこに行ってしまったのやら。国民は不満のはけぐちを『改革』という言葉に求めたのでしょうか。
 6月閣議で決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」の第3章「社会保障制度の改革」で年金・医療・介護などの社会保障制度を改革するとしています。
 現在、不況は深刻化を増し、先行きの不安は更に大きくなっています。多国籍化した財界は国際競争力を強化するため政府に「社会コストの削減」「小さな政府の推進」を要求しています。その手始めのひとつが、介護保険制度の導入でした。この制度は憲法25条『国民の生存権、国の保障義務』に基づく福祉施策を捨て、福祉・介護を商品化しました。この間、低所得者に対する減額や特別な措置を行ってきましたが、選挙前のアメであったり、対象となる人は助かる反面、『お情けをかけてもらった』と精神的負担を感じプライドを傷つけられ、人権を守るものではありません。質と量の向上を目指したはずの福祉ゴールドプランは、保険制度として、お金の有る無しでサービスを選ぶしくみに取り替えられました。必要な人に必要なサービスを提供するしくみは、これまでの税で賄っていた福祉にはありましたが、保険制度にはありません。介護保険制度は『百害あって一利無し』です。しかも、介護保険同様に、社会保障全般に公費負担を減らし、国民に相互負担と受益者負担を強要する方向が示されています。公的サービスの縮小と福祉サービスの商品化をセットにしているのです。昨年6月、昭和26年に社会福祉の増進を目的にできた社会福祉事業法が変わりました。

《変えるための本当の理由は?》
 日本は終戦後、国策として外貨を稼ぐため、特定の輸出産業を優遇してきました。その一方で、国民全体に対しても産業の方向性を政策として打ち出し、その結果、農業は衰退し、都市に人口は集中し、核家族化が進みました。福祉は、経済成長とともに発展してきましたが、国の赤字、経済競争の激化を理由に、福祉に競争原理を取り入れる考え方に大きく変えたということです。自己責任、自己選択を基本に、すべての福祉サービスは商品化されていきます。また、事業所の規制緩和を行い、一般企業体の参入を促して、福祉産業を造り出そうとしているのです。

《今後、どのような影響が?》
 この社会福祉事業法と関連するものは、『生活保護法』『児童福祉法』『老人福祉法』『身体障害者福祉法』『知的障害者福祉法』『売春防止法』『介護保険法』『精神保健及び精神障害者福祉に関する法律』や隣保事業、福祉サービス利用援助事業などがあります。これら関連八法の改正も同時に可決されました。その方向は、サービス利用者の自立と責任で、幅広い民間サービスも含めた中で、選択していかなければならないこと。福祉法人の要件が緩和されたこと。また、これまでのように生存権が基本にあった応納負担(収入に応じ、負担額が違う)の考え方でなく、公平、公正な負担というものです。介護保険制度で導入した一律負担という方向に向かっています。高額所得者は負担軽減となりますが、一般的には、自己責任でサービスを選ぶ困難と経済的負担増もあり、福祉サービスは低下します。自民党は、補助金と国民負担を上手に使い分けながら、政権を維持してきた歴史があります。しかし、補助金を出す財政的基盤が失われた今、国民の自己責任、自己選択という聞こえの良い言葉を操って、財界の要望に応えようとしているのです。今後進められようとしている社会保障改革は「医療サービスの費用対効果の向上」「高齢者医療の介護サービスへの円滑な移行」「公的保険による保険によらない診療(自由診療)との併用に関する規制の緩和」「年金保険料値上げの凍結解除」等々、市場原理による貧富の差が益々拡大し、生存すら危ぶまれる状況に追いやられる人々が増大することは明らかです。小泉改革では広範な人々の生活を守ることは出来ません。