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『日本の進路』地方議員版8号より

政府が周辺事態法解説書を正式発表
許せない日米安保最優先と国の関与強化

周辺事態安全確保法第9条(地方公共団体・民間の協力)の解説 全文



 政府・内閣安全保障危機管理室は7月25日、新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連の周辺事態法に基づく地方自治体などへの協力要請に関する解説書をまとめ発表した。項目は
1、周辺事態法安全確保法第9条について
2、要請される協力の具体的種類・内容
3、協力要請のプロセス
4、協力を要請された場合の対応
5、損失に関する財政上の措置
 である。昨年7月発表した原案(「日本の進路・地方議員版」4号「周辺事態法への協力を拒否するために」参照)に3項目4問答が付け加えられている。その付け加えられたものの中に現在の政府のスタンスと意図が露骨に読みとれる。
         
  日米安保最優先の協力強要

 新たに付け加えられた「2、要請される協力の具体的種類・内容」の港湾施設の管理についての問答は次の通りである。

「問1 米軍艦船の港湾施設の使用について、日米地位協定上の通告がある場合には、港湾管理者は港湾管理条例による許可を行うこととなるのか。また、このような許可を行うとした場合に、この許可について第9条第1項に基づく協力の求めを受けることがあるのか。
 答 一般国際法上は、外国の軍隊が駐留する場合に、特別の取り決めがある場合を除いては、接受国の国内法令は適用されず、これは、我が国に駐留する米軍についても、同様である。しかしながら、このことは、米軍がその活動に際し、我が国法令を無視してよいことを意味するものではなく、外国軍隊が接受国の法令を尊重しなくてはならないことは当該軍隊を派遣している国の一般国際法上の義務である。日米地位協定第16条が、米軍の構成員及び軍属による日本国の法令の尊重義務を定めているのも、かかる考えに基づくものである。
 米軍艦船による港湾施設の使用に当たっても、日米地位協定に基づく通告を受けた港湾管理者は、同協定第5条の規定を踏まえつつ、港湾の適正な管理運営という観点から港湾管理条例による港湾施設の使用許可等法令に基づく権限を行使することとなり、第9条第1項に基づく協力の求めは、このような港湾管理者の権限行使に対して行うものである。

  問2 艦船からの荷揚げや野積場の使用などが日米地位協定第5条に基づいて認められるのか。
 答 米軍艦船による港湾施設の如何なる使用が日米地位協定第5条に基づく権利の行使に当たるかは、個別具体の事例に即して判断されるべき事項である。
 一般論としては、日米地位協定第5条は、米軍の人員及び物資が我が国の港に入り、また、港を経て、施設・区域との間を移動するための一連の活動を行う権利を認めたものであり、かかる権利の一環として荷揚げや野積場の使用等がその対象となることも想定される。
 港湾管理者は、米軍が日米地位協定第5条に基づき、当該施設の使用について通告を行ってきた場合には、同条の規定を踏まえつつ、港湾の適正な管理運営という観点から、法令に基づく権限を行使することとなる。 」 

「外国の軍隊が駐留する場合・・・米軍艦船の港湾施設の使用については接受国の国内法は適用されない」として安保条約が国内法に優先するとしている。地位協定第5条に基づくと米軍は艦船からの荷揚げや野積場の使用が自由であり、周辺事態法以前に認められていることになる。極論すると、首長などの港湾管理者はとやかくいう問題ではないと言っているのである。

 都道府県に相互調整を依頼するが
     あくまでも国が関与し判断する

 次ぎに「3、協力要請のプロセス」の項では新たに問3が付け加えられた。

 「問3 複数の市町村や民間企業が協力の実施主体になる場合において、都道府県へ相互調整を行うことを依頼することもあるのはどのような場合か。
 答 例えば、輸送、廃棄物処理、医療、物品、施設の貸与等について協力を依頼する際に、対応できる能力を有する民間企業や市町村等がどのくらいあるかなどの情報を国が十分に有していない場合、都道府県に調整を依頼することもあり得ると考えている。この場合、都道府県はあくまでも民間企業や市町村の実情や意向の把握、確認等の事実上の行為について依頼を受けるのであり、民間企業や市町村等が具体的に協力依頼に応じるかどうかの最終的な判断をとりまとめることまでを依頼されるわけではない。民間企業や市町村等が実際に協力に応じるかどうかの判断は、国から直接の依頼を受けたことに応じて行われるものである。 」

 都道府県に調整を依頼するが判断の権限あくまで国にあるということになる。

 地方議会の非協力決議を真っ向から否定

「4、協力を要請された場合の対応」で極めて問題となる問答が付け加えられたそれは

「問5 地方議会の決議や住民の請求等は、協力を拒むことのできる正当な理由がある場合に当たるのか
答 周辺事態安全確保法第9条第1項に基づく協力の求めは、地方公共団体の長に対して、個別の法令に基づき地方公共団体の長が有する権限を適切に行使することを求めるものであり、これを拒む正当な理由があるか否かは、個別具体の事例に即して、当該個別の法令に従って判断されるものである。地方議会の決議や住民の請求等は、一般に、このような行政上の個別の権限行使について、法的に影響を及ぼすものではない。」

 現在地方議会で周辺事態法に反対して様々な決議が行われ、非協力をはっきり宣言した自治体も多い。今回の政府の解説書ではその種の決議は無意味だと言っているのである。 この解説書が発表された直後28日、キャンプ座間の在日米陸軍司令部は相模原市にある相模原総合補給廠で8月27日から9月2日にかけて、有事を想定した統合野外演習「メデックス2000」を実施することを発表した。この演習は朝鮮戦争以来の規模といわれ医療器具を野外に設置しヘリコプターによる傷病兵の移送シュミレーションを実施、在日陸海空軍と在韓米軍も参加するとしている。
 有事には自治体が戦争協力させられる事態が急速に進もうとしている。
 今回の政府の新ガイドライン関連周辺事態法の自治体の協力に対する解説書の発表はますますアメリカ追随の戦争協力体制を強化するものであり許すことが出来ない。周辺事態法に反対し非協力を表明した議会と市民に対するあからさまな挑戦である。