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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2007年9月号

第五回全国地方議員交流会
「この政治をどう変えるか」超党派の連携が前進


 八月二十日から「第五回全国地方議員交流会」(実行委員会主催)が東京都内で開催され、約二百人の地方議員と市民が参加した。一日目は米軍再編や日朝問題での提起などの全体会議、二日目は「いま地域で何が起きているのか、この政治をどう変えるのか」を共通テーマの分科会と全体会議、三日目は厚労省交渉が行われた。文責編集部。

開会あいさつ

原田章弘氏(横須賀市議会議員)


 実行委員会を代表して開会のご挨拶をします。第一回の交流会は二〇〇三年で約五十人の超党派議員の参加でした。その後、賛同人や参加者も増えました。しかし今年は、四月の統一自治体選挙や参議院選挙もあり、準備が三カ月遅れでしたが、賛同人は三百二十八人となりました。
 小泉政権から安倍政権に続く政治の下で、地域間格差が拡大し、地方の疲弊は激しい勢いで進行しています。農業崩壊の不安、雇用の喪失など地方の住民は生活の危機に見舞われ、財政破綻に追い込まれる自治体も出ています。また、給付の抑制を目的とした医療制度改革、介護保険法改正、障害者自立支援法が相次ぎ、治療やサービスが受けられず命に関わる状況も出てきています。さらに、六月から地方税増税が追い打ちをかけています。一方で、アメリカの要求を丸飲みする米軍再編、改憲を視野に入れた教育基本法の改正や国民投票法が強行採決されました。
 こうした強引な安倍政権に対して参院選ではノーが突きつけられた。私たち地方議員は、地域に暮らす人々の切実な声を聞き、深刻な状況を変えるために行動しています。国政でも地方議会でも二大政党化が進んでいますが、政党に属する議員も、属さない議員も、地方の深刻な状況を変えたいと願っています。分科会の共通テーマは「いま地域で何が起きているのか、この政治をどう変えるのか」です。厚生労働省への申し入れ行動も行います。交流会の成功を期待し、開会の挨拶とします。

■来賓あいさつ

川内博史氏(衆議院議員、民主党)

 参議院選挙で示された民意は、確実に小泉・安倍政権の路線を否定しましたが、安倍総理は政権の座にしがみついています。野党が力を合わせて政治を変えたい。
 小泉改革や安倍内閣の規制緩和・民営化という新自由主義的経済政策は、この国と地域社会を破壊しつつあります。障害を持つ皆さんを切り捨てていく障害者自立支援法。百二十万世帯あるといわれている母子家庭の平均的な所得は、生活保護以下の低い所得。その母子家庭に対する二万円〜四万円の児童扶養手当を安倍内閣は、来年四月から削減を決定しています。憲法二十五条の「健康で文化的な最低限度の生活を全ての国民は保障される」を無視する様々な社会保障の切り捨ての政策を次々と強行採決してきました。
 外交的にはアメリカとの心中主義です。北朝鮮との関係も同様です。いま必要なのはアメリカに盲目的に従うのではなくて、日本がアジアに立脚をする国として、どう行動をしていくのか、客観的で冷静な外交が必要です。自民党の結党宣言には「他国の軍隊の駐留を許さない」と書いてあるのに、反した行動をとっている。政党や政治家が自らのめざす道に責任をとろうとしない。
 安倍内閣を見ているとマリーアントワネットを思い出す。「国民が貧しくて、パンが食べられないといって騒いでいます」という側近の忠告に対して、マリーアントワネットは「パンが食べられないのならケーキを食べればいい」と言ったそうです。結局フランス革命の中で断頭台に送られた。今こそ、言論によって、この国に真の民主主義を確立する大きなチャンスが参議院選挙で開けた。交流会で、認識と知識をお互いに共有し、力を合わせて頑張りましょう。

保坂展人氏(衆議院議員、社民党)

 先の参院挙で与野党逆転になりました。安倍内閣の十カ月は、右手に美しい国・戦後レジームからの脱却、左手にかすかな格差解消を掲げました。しかし、教育基本法、米軍再編、そして憲法改正国民投票法案という右手ばかりフル回転でした。対米追従と、美しい国というある種の復古主義が奇妙に合体したのが安倍政権の特徴だと思います。
 年金と郵政問題はリンクしています。この間、世界同時株安で、東京市場も大暴落しました。日本の年金資金百五十兆円を資金運用と称して、株や外国債などを買っています。暴落すれば、一カ月で五兆円、十兆円というお金を失う。巨大な年金資金の運用は社会保険庁ではなく、年金積立金管理運用独立行政法人で、理事長と理事の二人がやっている。郵貯資金の二百四十兆円も独立行政法人に委ねられている。たった四人が四百兆円もの巨大な国民の資金を動かしている。この行方も徹底的に明らかする必要があります。
 また司法改革ということで、裁判員制度が二年後に始まる。裁判員はくじで選ばれるので拒否できない。衆議院法務委員会で調査しました。裁判員候補が三十人選ばれ、裁判長、検事、弁護士の面接によって六人が選定される。その面接で「あなたはいかなる場合でも警察官を信用していますか」と尋問されます。「えん罪事件もあるから信用してません」と答えると、検察側が理由を示さないで拒否できる。「死刑を選択できない」と答えても拒否できる。これは思想信条の自由を保障した日本国憲法に違反しています。衆議院法務委員会でこの裁判員制度の選任の問題など徹底して議論していきたいと思っています。
 参議院の与野党逆転で、すぐに改憲にならないかもしれない。しかし、改憲を先取りした教育の国家主義化が進められます。ぜひ地方議会の中で、新教育基本法も憲法の支配下にあることを主張していただきたいと思います。

川田龍平氏(参議院議員、無所属)

 全国のボランティアの力で選挙を勝たせていただきました。いまは責任の重さを感じています。
 命を大切にすべき厚生省の仕事は経済性ばかりが優先されて、ひどいものになっています。薬害エイズを引き起こした薬務局長が、その後社会保険庁の長官に天下り、消えた年金問題を引き起こしています。
 さまざまな格差や貧困の問題が吹き出しています。シングルマザーの人たち、障害者の人たち、高齢者や病気を抱えた人たち、働いても豊かになれないワーキングプアー、ホームレス問題。一生懸命やってもどうにもならない、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(憲法二十五条)が保証されない社会の仕組み、厚生労働省の仕事とは一体何なのか。厚生省にしっかりと仕事をさせるために奮闘したい。
 マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」が公開になります。これはアメリカの医療保険を受けられない、個人型の医療保険に入っている人でも、医療を受けた後に支払いができなくて借金を背負うという話です。このままでは日本もアメリカのような社会になってしまう、そういう危機的な状況を映し出した映画です。
 年金、医療、障害者問題など厚生行政が重要な岐路にさしかかっています。厚生省の姿勢を変えさせ仕事をさせることが問われている。中央集権型、トップダウンの政治ではなく、地方から国を変えていきたい。 東京の小平市育ちですが、松本市で三年間生活して、東京と地方の格差を実感しました。若い人が未来に希望を持ち、命、人権、平和、環境が尊重される社会を作りたい。動けば変わる、生きるって楽しいと思える日本を作っていきたい。

横堀正一氏(新社会党書記長)

 私たちが直面している内外情勢の特徴に照らすと、この全国地方議員交流会の意義は極めて大きいと思います。私ども新社会党の地方議員団も含めて、この機会を得ていることに感謝も申し上げたい。
 自民党は年金問題、閣僚の一連の発言、政治と金をめぐるスキャンダル等で自壊しました。しかし、安倍首相は居直っており、改憲の動きは止まっていません。当面の政治課題はテロ特措法と言われています。また、三兆円の国費を投ずる米軍再編の動きも急ピッチで動いています。
 小泉政権から安倍政権へと受け継がれてきた構造改革の下で、国民の生活や権利の徹底的破壊が続いています。この課題は分科会のテーマに取り上げられていると思います。
 安倍内閣のアジア外交問題です。六カ国協議や国連などの動きを見ても、これだけむき出しの朝鮮敵視政策を展開し、朝鮮総聯や在日朝鮮人に対する政治弾圧に狂奔をしている国は日本だけです。安倍外交が、アジアの平和と安全を危うくしています。しかも従軍慰安婦の否定、高校歴史教科書の沖縄戦での集団自決の軍の関与を否定する検定など靖国問題も含めて歴史認識に関わる基本問題で、安倍内閣の反動的な性格がいっそう露骨になっています。
 こういう外交問題にも地方議会から声を発していく必要があります。例えば、日本政府は一切の朝鮮制裁措置を撤回し、日朝国交正常化の政府間交渉を再開すべきだ、という声を地方議会からも上げていただきたい。この地方議員交流会が、地方から日本の政治を正す、また、大衆運動レベルからの役割を十分に発揮することを期待しながら、交流集会が成功裏に終わることを祈念して、挨拶としたいと思います。

■連帯あいさつ

加藤毅氏(広範な国民連合事務局長)

 参院選では小泉・安倍政権が進めてきた改革政治に対する国民の怒りが全国で噴出しました。
 今朝の読売新聞で、丹羽宇一郎・伊藤忠会長が「改革の方向は明確 実行あるのみ」と主張しています。大企業が国際競争の中で儲けてきたから、日本が食べていける。だから、大企業の国際競争力の強化に役に立つ社会に変えていかなければならない、と言っているわけです。この人は、御手洗・経団連会長と共に、経済財政諮問会議の民間議員です。経済財政諮問会議では四人の民間議員が改革の方向を示し、大田弘子・経済財政政策担当が次の会議でそれを具体化したプランを出して決定される。小泉政権登場以降、実際に国の政策を決めているのは経済財政諮問会議で、それを主導しているのは多国籍大企業の代表者たちです。
 今年一月に日本経団連はビジョン「希望の国」を発表しましたが、そこでは多国籍大企業の要求を露骨に示しています。社会保障改革は「国民への給付を減らし、国民の負担を増やす」。税制改革では「累進税制を緩和し、現在四〇%の法人税を三〇%に、消費税率を二%引き上げる」。公務員の首を切り、合併で千八百になった市町村数をさらに半分に減らし、四十七都道府県を十道州に統合して、地方交付税や補助金をさらに削減する。財政を再建して、多国籍大企業の国内負担を減らし、国際競争力の強化に国家資金を投入できるようにせよ、というわけです。
 さらに「経済だけでなく、政治や社会をも革新しなければならない」と憲法改正を柱にすえています。教育基本法を変えて、子どもたちに愛国心を教えよ、と主張しています。
 この国を牛耳っているのは多国籍大企業、財界です。彼らがどう変えようとしているのかを見据えて、これと闘っていく必要があります。それが、今回の選挙で噴出した国民の怒りに応えることではないでしょうか。この政治を何とかしたいと思う人たちは、どの政党の中にも、党派に所属しない中にもおられます。政党を超えて、国民の立場に立って手をつなぎ、地域から国の政治を変える力を作っていただきたい。