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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2007年3月号

戦争のできる国づくり・格差拡大社会に
反対する闘いを


部落解放同盟中央執行委員長  組坂 繁之さん



 危険な安倍政権

 小泉「改革」は誰のための改革であったのか、検証しなければいけない。一言で言えば、竹中さんが中心になってアメリカの金融資本に道を開いた。いわば明治維新の時に各藩の小さな御用商人が三菱や三井など中央の御用商人に併呑されていく、そういうような感じではないでしょうか。その出発点は橋本内閣の金融ビッグバンだと思います。経済力の問題も含めて十分な論議もなく、セーフティネットの問題も準備せずやってしまった。
 例えば、「郵政民営化」が国民のためになるとは思えません。過疎地の郵便局が次々と切り捨てられています。市場原理主義が日本を覆って、すべて金で片づける。まさに格差拡大社会です。好景気だと言われていますが、収益を上げているのは一部の大企業だけです。所得格差をはじめ様々な格差が拡大し、都市と地方の格差も一層拡大しています。
 日本はアメリカの属国みたいになっているのではないか。日本の労働者が働いても働いても、なかなか生活が楽にならない。働いた果実はアメリカのヘッジファンドにもっていかれる。そういう状況になっています。
 またアメリカの軍事戦略に組み込まれています。小泉前首相は「大儀なきイラク戦争」を支持し、イラクに自衛隊を派遣した。大量破壊兵器もないことが判明しても、小泉前首相は詭弁を弄していました。米軍再編問題も含めて結局、アメリカの世界戦略の駒として使われているというのが実態ではないか。
 安倍内閣になって戦後レジームの見直しということで、憲法の柱である基本的人権、平和、民主主義をないがしろにする動きが強まっています。それが教育基本法の改悪や防衛庁の省への昇格です。自衛隊法の改悪で海外派兵が自衛隊の本来任務とされました。戦争のできる国づくり、「憲法改正」を掲げる安倍内閣は最も危険な内閣だと思います。
 さらに格差拡大社会が進む中で、不満が高まっていますが、不満のはけ口として社会の中にある差別意識が意図的に利用されています。インターネット社会になり、差別は野放しになり悪質化しています。本当に読むに耐えないものが出ている。在日韓国・朝鮮人に対するバッシングなど民族排外主義、偏狭なナショナリズムも強まっています。
 いじめによる自殺など人権問題が深刻化しているのに、安倍内閣は関心を示さず、人権侵害救済の法律を作ろうとしていません。人権擁護推進審議会の答申が出され、全国で約五百五十の地方自治体で「人権侵害救済法の早期制定を求める決議」が出されています。また、国連からもたび重なる勧告を受けている。さらに国連の人権理事国入りした日本には、一刻も早く人権侵害救済の法律を作らないといけない責務があります。
 ところが安倍政権は、不充分であると私たちが修正を求めている人権擁護法案でさえ国会に上程しない。人権擁護法案を議論してきた自民党人権問題等調査会は、事実上、機能停止しています。自民党の窓口がないから与党懇話会が開けず、与党の公明党も困っています。安倍首相が取り上げる人権問題は拉致問題だけ、国内の人権問題にはまったく関心がない。安倍政権の日本は人権後進国です。
 そういう中で、日本国憲法の柱である民主主義、平和、基本的人権を守る政治状況を作っていかなければならないと思っています。今年四月の統一自治体選挙、さらに七月の参議院選挙が大事だと思います。私は七月はダブル選挙になる可能性が大だと思います。安倍政権は支持率が四〇%前後に落ちています。もし参議院選で与党が負ければ、予算案と条約以外の法案は通らなくなり、死に体内閣になります。ボロボロになって解散してやるよりは、一気に衆参ダブル選挙をやった方が参議院も過半数を取れると踏んでくる可能性が高いと思います。いずれにしても今年の選挙が、日本の命運を決する歴史的な転換点になるのではないかと思っています。

 差別分裂攻撃を許すな

 昨年の部落解放同盟の不祥事は真摯に反省をしているところです。問題を起こした役員の除名処分や組織を解体して再建の取り組みをやってきました。全国的にも組織の総点検・改革運動をやっております。それをもとにして方針を出して、三月三、四日の第六十四回全国大会を開きます。また、三月五日には学者、文化人、ジャーナリスト、弁護士などの皆さんに集まっていただいて、提言委員会も立ち上げる予定です。そこで外からの辛口の批判をいただく。なぜ全国水平社ができたかという部落解放運動の原点に帰り、信頼回復の努力をしなければならないと思っています。
 それでも繰り返し部落解放同盟に対するマスコミを使った攻撃が続いています。部落解放同盟だけでなく、連合の中で革新的な勢力として頑張ってきた自治労や日教組、朝鮮総聯に対する意図的な攻撃も続いています。人権や平和は邪魔だという人たちの意図的な攻撃があります。危機をあおって憲法改悪など戦争のできる国づくりをすすめたり、格差拡大社会が進む中で、社会の中で高まる不満のはけ口としての意図的な分断攻撃だと思います。
 昔の日本がアジアへ侵略していく過程で、民族排外主義や偏狭なナショナリズムがあおられ、国民の中には差別分裂政策が強化されました。北朝鮮のテポドンや核実験などを利用して、有事法制やMD(ミサイル防衛)システムなど軍事大国化の方向にどんどん進んでいく。国民の社会保障費が軍事費に回っていく。また、部落解放同盟が悪いことをやっているとか、公務員の待遇が良すぎるとか、国民同士や弱い者同士をいがみ合わせる、そうやって政府に対する不満をそらそうとしています。
 そういう意味でマスコミとくにテレビ報道はきわめて意図的です。部落問題にしても事件だけしか報道しない。部落解放同盟は、教科書無償運動や三十人学級、複数担任制など、最近では新しい高校奨学金制度の実現のために様々な取り組みをして成果を上げてきた。そういう流れを報道しない。新聞でも最前線の記者は書いてくれるがデスク段階で没になる。そこには相当な規制がかかっているような気がします。
 人権・同和教育を敵視するような動きがあります。かつて人権・同和教育をやった先生方は靴を減らして家庭訪問をやって奮闘した。部落の子どもだけでなく、障害をもった家庭や一人親の家庭など苦しんでいる子どもたちの家庭訪問を熱心にやったんです。ところが、それを敵視するような動きが出てきている。教師に対する管理主義が徹底され、教師が萎縮している。もう少し教師を信頼すべきだと思います。
 改めるべきことは改めながら問題点を克服したい。そして多くの人たちと手をむすび、戦争のできる国づくりや格差拡大社会、差別分裂政策に反対し、人権・平和・民主主義を打ち立てるために全力で頑張りたいと思っています。また政府から独立した人権救済機関のための「人権侵害救済法」を何としても実現したい。   (談・文責編集部)