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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2006年10月号

食料・農民・農村のための農政を

秋田県大潟村農民 坂本 進一郎


 私は、今年六十五歳になる大潟村の一介の農民です。農業をすること四十年。しかし、今、「こんなに農業は苦しく、農村は実に貧しく、農業は実に危うい」ところまで来たことはないと思っています。
 中国では三農問題(1農業の低生産性と低収益性、2農村の疲弊、3農家の所得低迷と都市住民との所得格差拡大)で揺れていますが、日本にも考えてみれば、三農問題が発生しています。これまで売上税は、三千万円以上の人が対象だったのに、今年から千万円にされ、健康保険税もあげられました。税金は次々と押し寄せてくるのに、米価は最盛期の半分近くにされ、それに反して農業機械の値段は毎年上がるので、負担はエベレストのように積み上げるばかりです。

 WTOと米国に従属する日本

 一九九五年に世界貿易機関(WTO)ができると、それに合わせて日本では食糧管理法をつぶして、食糧法を作りました。これはWTOが世界の流通を支配しようとする流通機構に合わせて、日本の大手流通業者の要望に合わせて作られたものです。それゆえ、もうどんなに減反をしようとも、これら川下の人間が流通権を握っているので、減反の効果は薄れてきました。結果、豊作でも不作でも米価は下落です。
 しかも、ミニマム・アクセス米は輸入義務ではなく、輸入機会を与えているに過ぎないのに、一方的に輸出国から輸入を押しつけられています。これはアメリカが実権を握るWTOによる不平等条約の押しつけといっていいと思います。

 農民リストラ

 中曽根臨調の時、戦後総決算が喧伝されました。ここには、食糧管理制度を廃止する目的がありました。外堀が埋められると、「農民と油は絞れば、絞るほど出る」というのは昔の話になって、今や農民の絞殺死に、農政は変わりました。先に述べたように米価暴落、減反拡大、そして品目横断的経営安定対策は、本州四ヘクタール(中山間地は二・六ヘクタール)、北海道十ヘクタール以下は、補助金の対象外となります。

 国境措置と価格下支えは必要だ

 一九九五年にWTOが発足した時、EUはアメリカにデ・カップリングと食肉一括方式を要求し、それが受け入れられ、日本の米に相当するEUの酪農は守られました。食肉一括方式は隠れ国境措置だったからです。
 ところが日本はこのことを一回もアメリカに要求しませんでした。関税率がどうなるかと騒いでいますが、関税率の決定権はわれわれ農民にありません。とするなら、関税率が下がってもやっていける、何らかの国境措置とせめてコストを保障する最低支持価格が必要です。
 今の価格安定対策による価格保障は、われわれを何ら安心させるものではなく、見せかけの安定策に過ぎません。農業機械の消費税も免除すべきです。

 食料主権の回復を!

 かつてフランスのドゴールは、独立には食料の自給が必要だと言いました。日本にはこのようにはっきり口にする首相の存在を見たことがありません。車や家電製品を売るため、農業を犠牲にして、澄まし顔の首相はたくさん見てきました。
 「米は国土なり」です。毛細管のように張りめぐらされた水脈によって、日本は至るところで米が作られるシステムができました。ところが、今や、WTOによって地方経済のみならず、地方文化さえ壊されています。
 私の言いたいことは以上です。間違いもあるかも知れません。しかし、私たちの意を汲み、ご指導をお願いします。