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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2006年2月号

名護市長選

市長選の敗北を乗り越え
三月五日に県民総決起大会

沖縄県議会議員  喜納 昌春


 名護市長選挙

 一九九五年の少女暴行事件を契機に、島ぐるみの怒りが爆発し、九六年四月、橋本首相は普天間返還を発表しました。しかし、普天間返還は県内移設が前提条件でした。それ以来、移設候補地とされた名護市は日米政府にほんろうされてきました。
 当初反対だった比嘉市長は、政府の振興策につられて、九七年四月、海上ヘリ基地建設の「事前調査受け入れ」を表明しました。だが、九七年十二月、海上ヘリ基地建設の是非を問う市民投票で「反対」が過半数を超えました。比嘉市長はこれに反し、総理官邸で「基地受け入れ」を表明して辞職しました。それ以降、名護市では賛成・反対の対立が続いてきました。
 その間も、普天間基地で事件・事故が頻発し、その危険性がいっそう明らかになりました。そんな危険な基地の名護移設に対する市民や県民の反発は、保守・革新を超えたものでした。昨年十月末、米軍再編の中間報告で「沿岸案」が発表されると、地元住民無視だと一斉に反発が起こりました。自民党も含めて、「沿岸案」は受け入れないという大きな流れになりました。
 そういう背景があり、今度の名護市長選は米軍受け入れの是非が第一の争点でした。われわれは前回や前々回のような保革対決の構造を崩し、「沿岸案反対、名護には基地はいらない」ということで、基地問題を市民に問う候補者選定を進めてきました。そして、「沿岸案にも辺野古移設にも反対」という保守の我喜屋さんを、社民党、社大党、共産党、民主党などの政党や民主団体が党派をこえて推薦する形ができました。しかし、それをつくる段階で、辺野古で七〜八年間も座り込みなどの現地闘争をやってきた人たちとの意志疎通や調整が不十分でした。保守系は座り込み闘争と無縁でしたから、そういう部分を巻き込んでの市長選挙にならざるを得ない状況を十分に説明し、説得するという手順で欠けた点がありました。その結果、「沿岸案断固反対、名護移設反対」の候補者が二人、現職市長を受けつぐ島袋候補の三名による市長選になってしまいました。島袋候補は、「沿岸案反対」だが、条件次第では受け入れるという主張です。政府は山崎拓らを送りこみ、名護移設を受け入れれば振興策を継続し、さらに新たな振興策を行う、受け入れなければ振興策を打ち切り、沖縄海兵隊は削減しない、というアメとムチで画策し、島袋候補を応援しました。
 島袋候補が当選し、十年近く基地問題でほんろうされてきた名護市民の苦悩を断ち切るという大きな課題は残され、残念な結果になりました。島袋候補の「沿岸案反対」の欺まん性を明らかにできなかったこと、「沿岸案反対、名護移設反対」の戦線を統一できなかったことが、敗因だと考えています。

 今後の闘い

 当選した島袋氏は、新たな振興策が示されても「沿岸案」のままなら反対だが、修正案が出された時は「地元住民の理解が得られれば協議に応じる」と発言しています。新市長の態度は、どういう修正案が出されるかにかかっていると思います。稲嶺県知事は、「従来の『辺野古沖案』以外なら県外移転しかない。中間報告の『沿岸案』の受け入れは困難」と拒否しています。新市長も知事と足並みをそろえる可能性はあります。われわれとしては、運動を通じて県内移設反対という方向に追いこむ必要があります。県内移設反対という県民世論は変わっていません。知事が県外移設を主張しているのも、そういう世論が背景にあるからです。
 小泉首相は、「地元の頭ごしにはやらない」「基地負担を軽減する」と公約しましたが、中間報告は地元に相談もなくつくられ、負担軽減もありません。だから、公約違反の中間報告に対して、全国各地で一斉に反発が起こったのです。とりわけ沖縄の怒りは大きい。日本政府は、中間報告だからいくらでも修正できるかのような発言をしていますが、米国政府は「これが最終報告だ」と公言しています。沖縄の本土復帰のときと同じで、まさに国民だましです。日本政府は「核抜き本土並み」と公言しながら、米国とは「核抜きではない」と密約していました。日本政府はいまでも「密約はなかった」と言い続けていますが、米国側の文書で密約が明白になっています。国民向けと米国政府向けとで言うことが異なる二枚舌外交です。最終報告で微調整はあるかも知れませんが、基本は変わらないでしょう。
 三月末の最終報告がどういう内容になるのか。知事がそれを拒否したとき、政府が知事の権限を取り上げる特措法を制定し、強圧的な態度に出るのかどうか。また、財政改革といって国民に負担ばかりおしつけておきながら、何千億円〜一兆円ともいわれる米海兵隊のグアム移転費用を日本が負担するという、国民を愚弄した話も出ています。もし、沖縄県知事の権限はく奪やグアム移転費用負担を立法化しようとすれば、民主主義の否定であり、沖縄県民も日本国民も、それを許さないでしょう。沖縄は「島ぐるみ闘争」の再現となります。さらに、十一月には知事選があり、基地問題が重大な争点になります。
 われわれは、最終報告を出させず、十一月の知事選をテコにして普天間県内移設をはねかえす運動をつくることが重要だと思っています。当面は三月五日に、頭ごしの米軍再編中間報告に反対する県民大会を開きます。党派をこえた九五年十月の県民大会の枠組みを追求していますが、自民と公明は参加しないようです。沖縄は全力をあげて闘います。全国各地で闘っている人たちと連携して闘いたいと考えています。
   (談・文責編集部)

続発する米軍の事件・事故
 ◆東京・米兵がひき逃げ
 昨年十二月二十二日、東京都八王子市で空母キティホークの米兵が、横断歩道を渡っていた小学三年の男の子三人をひき逃げした。一人が重傷、二人が軽傷を負った。警察は犯人は逮捕したが、米軍が公務中との証明書を提出したため、犯人を米軍に引き渡した。
 ◆神奈川・米兵が強盗殺人
 一月三日、神奈川県横須賀市で空母キティホークの米兵が、道を歩いていた女性の顔や腹部を殴ったりけったりして殺し、現金を奪って逃げた。米軍再編や横須賀基地への原子力空母配備に悪影響を及ぼすのを恐れた米軍は、拘束した犯人の身柄を警察に引き渡した。
 ◆沖縄・米兵がタクシー強盗
 一月七日、沖縄県北谷町の米軍キャンプ瑞慶覧内で、米兵がタクシー運転手にナイフを突きつけ、タクシーの釣り銭を奪って逃げた。米軍は二十七日、犯人二人を拘束したが、身柄の引き渡しを拒否した。
 ◆長崎・米兵がひき逃げ
 一月七日、長崎県佐世保市で米軍佐世保基地の米兵が道を歩いていた女性をひき逃げし、女性は約一週間のけがを負った。犯人は同日、警察に逮捕された。
 ◆沖縄・元米兵がタクシー強盗
 一月十二日、沖縄県沖縄市で、昨年十二月に海兵隊を退役した元米兵がタクシー運転手をなぐり、タクシーの釣り銭を奪って逃げたが、沖縄署に逮捕された。
 ◆沖縄・F15戦闘機が墜落
 一月十七日、米軍嘉手納基地のF15 戦闘機が沖縄県うるま市伊計島沖に墜落した。米軍は二日後の十九日、原因を明らかにしないまま同型機の飛行訓練を再開した。
 ◆長崎・米兵がひったくり
 一月二十一日、長崎県警佐世保市で米軍佐世保基地の米兵が、女性から手提げバッグをひったくって逃げたが、警察に逮捕された。