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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年8月号

定率減税廃止・所得税負担増・消費税増税など
大衆増税を許すな!

全国建設労働組合総連合(全建総連)税金対策部長  里見 秀俊


相次ぐ大衆増税

今年春、政府は九九年に小渕内閣が実施した「定率減税」を、景気回復を理由に縮小・廃止(〇六年度に半減、その後に廃止)することを決定しました。勤労者は大幅増税になります。ところが、同じ九九年に実施された大企業や高額所得者への大幅減税はそのままです。明らかな不公平税制です。全建総連は今国会で定率減税縮小・廃止に反対して、七回の院内集会や傍聴行動を行いました。民主・共産・社民の全野党が一致して取り組みました。
 さらに六月二十一日政府税制調査会(政府税調)は、「国民の負担なくして少子高齢化は乗り切れない」と、さらなる大衆増税を打ち出しました。個人所得税の各種控除(給与所得控除、配偶者控除、扶養控除、特定扶養控除)の縮小廃止による大衆増税や、消費税の大幅引き上げが必要というものです。法人税や高額所得者への減税はそのままにして、個人所得税と消費税を国税の柱に、個人住民税を地方税の柱にしようとしています。
 配偶者控除の廃止は少子化対策に逆行しています。政府税調で、配偶者控除が女性の社会的進出を阻害し、パート賃金が上がらない原因という議論があったようです。デタラメです。「同一労働、同一賃金」が実行されていないことが原因です。企業がパートなど非正規雇用を使うのは低賃金が理由なのに、配偶者控除に原因があると論理をすり替えています。
 扶養控除縮小も同様です。高校や大学の子どもの教育費の負担が大きいことが出生率低下につながっています。控除が無理なら給付すべきですが、小学校低学年までの児童手当でお茶を濁しています。
 住民税の五%、一〇%、一三%という所得割を一律一〇%にとするという。所得の格差が拡大している中での住民税率の一本化は、機械的平等論であり、不平等です。
 今回の大衆増税案が実施されたら大増税です。東京新聞の試算では、年収五百万円で年間三十三万円の増税、年収七百万円で年間四十六万円の増税になると言われています。

許せぬ消費税引き上げ

 さらに消費税の大幅引き上げは許せません。第一は、消費税は低所得者ほど負担が重いからです。政府税調の調査でも、低所得者層の所得に占める消費税負担割合は二・六%、高額所得者層の消費税負担割合は二%です。つまり消費税は所得の高い人ほど負担が軽く、所得の低い人ほど重くのしかかる不公平税制です。
 第二は、全建総連には零細な事業者がいますが、消費税が転嫁しづらい。大手と比べて競争力のない零細事業者は消費税を転嫁できない実情があります。また、建設産業は元請けと下請けという重層関係があり、下請け価格に消費税分は入っていません。それどころか口約束だけの請負契約、その約束すら守られないことが日常茶飯事です。「半値の八掛け」、つまり正規の価格の四割で仕事をさせられるなどという実態があります。零細の建設事業者にとって、転嫁もできないのに納税義務だけあるのが消費税です。
 国の税収に占める消費税収入が二〇%を超えているのですぐに消費税廃止できませんが、これ以上の消費税引き上げには絶対に反対です。
 さらに問題なのは輸出企業に対する消費税の戻し税です。トヨタなどの輸出企業は消費税を負担しないどころか、輸出すれば戻し税が入ってきます。その総額は二兆円で、輸出企業にとっては消費税は上がれば上がるほどもうかる、まさに濡れ手に粟です。だからトヨタの奥田会長(日本経団連会長)は、消費税引き上げを平気で主張しています。

 高額所得者や大企業に負担を
 
 大衆増税を議論する前に、やるべきことがたくさんあります。例えば、高額所得者や大企業の課税を見直すべきです。一九八三年までは所得税の税率は一〇%から七五%の十数段階ありました。高額所得者ほど税率が高い累進課税です。それが「フラット化」の名の下で四段階に、最高税率は七五%から三七%まで大幅に引き下げられました。高額所得者には税率五〇%程度の負担を求め、低所得者の税負担は軽くすべきです。つまり税の応能負担と富の再配分機能を高めることが公平な税制です。
 法人税の税率も九八年・九九年に三七・五%から三〇%に引き下げられました。〇五年三月期の大企業の純利益は、総額十二兆八千億円で二年連続で過去最高です。下請けコストの削減やリストラして空前の利益を上げています。一方、大部分の中小零細企業は景気回復などとはほど遠い状況です。法人税も累進制を導入して、利益を上げている企業にはもっと負担させるべきです。
さらに、膨大な赤字財政は、大企業・政府・官僚癒着による談合体質が大きな原因です。空港や高速道路など無駄な公共事業を見直すべきです。雇用不安が続き、賃金が下げられ、社会保障費用の負担増で苦しんでいる中・低所得者層に負担を求めるやり方は許せません。
 二〇〇一年の経済財政諮問会議が出した骨太方針に、「市場と競争を通じて努力した者が報われる社会」と書かれています。つまり弱肉強食で勝ち残った者が報われる社会にするということです。この間の小泉「改革」で多くの企業が倒産し、大失業時代が続き、低賃金労働者(パート・派遣など非正規雇用労働者)が急増しました。日本では急速に貧富の格差が拡大しています。一握りの者が裕福になり、大多数が貧困化する社会は正すべきです。

 大衆増税反対キャラバン

 十数年前、政府の大型間接税導入に対して労働組合、中小商工業者、消費者団体が一緒になって大きな反対運動を展開しました。現在でも「不公平税制をただす会」や、消費者団体や中小企業団体が加盟する「消費税を考えるネットワーク」(事務局・全建総連)があります。しかし、残念ながらかつてのような運動を展開するエネルギーはありません。
その原因の一つにマスコミの影響があります。財政赤字の原因も、大企業や高額所得者に対する大幅減税も追及せず、国民犠牲の小泉改革を批判しない。そして国民の税負担は避けられないという報道が繰り返され、国民の中に絶望感が広がっていると思います。
 大衆増税やむなしの世論誘導を打ち破るには、全国各地から国民の声を上げる必要があると痛感し、四月から七月までの四カ月間「大衆増税反対全国キャラバン」を展開してきました(写真)。宣伝カーを走らせ、主要な駅頭や繁華街で演説やチラシ配布、署名活動を展開しました。
 各地からの報告を聞くと、予想以上の反応があります。詳しくはホームページに掲載しています。同時に地方経済の深刻さも伝わってきます。例えば、大型店の進出で地元商店街がつぶされ、さらにその大型店も撤退して何もなくなったという地域が全国各地に広がっています。
 国民犠牲の改革が進み、さらに大衆増税が行われようとしているわけで、本来なら大きな反政府運動が巻き起こっても不思議はない状況です。大衆増税を許さない幅広い運動を追求していきたい。 (文責編集部)