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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年7月号

キャンプ座間

地域ぐるみで第一軍団司令部移転反対の闘い

相模原市職員労働組合委員長  永井 利夫


 相模原市と座間市では、米軍再編によるキャンプ座間への第一軍団司令部の移転反対を地域ぐるみで取り組んでいる。相模原市職員労働組合の永井利夫委員長に話を聞いた。文責編集部。


基地返還は市民の一致した要求
 
 相模原市は多くの米軍基地・施設を抱えてきました。市をあげた返還運動の結果、渕野辺キャンプと医療センターは返還されて、まちづくりに沿った跡地利用がされています。医療センター跡地は、小田急・相模大野駅前の都市基盤整備などとして、渕野辺キャンプ跡地は博物館、小中高の学校、宇宙科学センターなどとなりました。労働組合の立場として、基地返還運動を含めて平和運動に取り組んできた経過があります。先輩たちの返還運動の成果です。
 残っているのが、相模総合補給廠、米軍住宅、キャンプ座間の三つです。相模総合補給廠は、ベトナム戦争当時、修理された戦車などが再びベトナムに運ばれるということで「戦車闘争」が闘われた歴史があるところです。市としては、補給廠返還後の跡地利用に学校、公園、研究所などを整備したいと考えています。パンフレットにして公表しようとした矢先に、キャンプ座間への司令部移転問題が表面化してきました。
 キャンプ座間は相模原市と座間市にまたがっており、相模原市域が七割と面積的には大きいが、司令部機能は座間市域にあります。相模原市域にはヘリポートや格納庫などがあります。米軍再編にともなう米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間移転の情報が報道されていますが、国から正式に話が来ているわけではありません。マスコミの報道のみです。そんな中で市民も私たち労働組合としても不安が高まっています。相模総合補給廠、キャンプ座間、米軍住宅の基地返還は、市、市議会、市民の一致した要求です。

米軍再編

 米軍再編の背景などについて、市職労としてまとまった見解であるわけではありません。個人的な意見です。米軍再編は世界的規模で、ヨーロッパではドイツから相当数の米軍が、東アジアでは韓国の米軍が縮小される。それらを中東から東アジアの「不安定の弧」の地域に再配置するようです。中東はあきらかに石油利権です。キャンプ座間への陸軍第一軍団司令部移転計画は、朝鮮半島や台湾海峡をはじめ東アジアをにらんでのことだと思います。米軍の指揮で自衛隊を前面に出していこうというねらいだと思います。第一軍団司令部の範囲は「アメリカ西海岸からアジア太平洋、中東・アフリカまで」であり、日米安保の「極東条項」から明らかに逸脱します。
 小泉内閣になって、靖国参拝問題、歴史教科書をはじめ歴史認識問題、領土問題などで中国や韓国との関係は悪化する一方です。アメリカに追随するだけでアジアとの友好関係を築こうという意思がないのではないか。逆に隣国との関係悪化をあおりながら、アメリカと一体となった軍事大国へ世論を作り出そうとしているのではないかと感じています。
 キャンプ座間は時々ヘリが飛ぶ程度で、米軍機による爆音被害のある厚木基地と比較して、基地周辺以外の市民の関心は薄いのも事実です。しかし、中東から東アジア・太平洋地域を範囲とする陸軍の司令部がキャンプ座間に来ることになれば大変なことです。司令部は軍隊の頭脳であり心臓部です。基地機能の強化ですし、いったん移設されれば返還を実現するのは容易なことではありません。戦争になれば当然ですが、戦争にならなくても相手国から攻撃の対象になり危険性は高い。長年の基地返還運動に逆行するもので認めることはできません。

移転反対の署名活動

 労働組合としては数年前に発足した「基地撤去をめざす県央共闘会議」にも参加しています。市民に情報提供しながら、厚木基地の爆音問題を中心に基地撤去の取り組みを行ってきました。また「歓迎されないところに米軍は行かない」というラムズフェルド米国防長官の発言を受けて、昨年末に「キャンプ座間への米陸軍第一軍団の移駐を歓迎しない会」が発足し、労働組合として参加しています。
 移転反対運動の第一弾として昨年八月末、県央共闘と神奈川平和運動センターで移設反対集会を開催し、キャンプ座間正門前までデモ行進を行いました。
 第二弾が、米軍再編を協議する外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2+2)が開かれた今年二月十九日、「キャンプ座間司令部包囲行動」を、神奈川平和運動センター、基地撤去をめざす県央共闘会議、歓迎しない会が中心となり取り組みました。みぞれまじりの寒い中でしたが、予想を超える参加者で完全包囲ができました。包囲行動前日には新聞に意見広告を出しました。十日間程度の取り組みでしたが、約千八百人からの協力や相模原市長の移設反対のメッセージもいただき、地域ぐるみで反対という状況が反映できたと思います。
 いま「基地問題の早期解決を願う署名」を取り組んでいます。相模原市米軍基地返還促進等市民協議会(=市民協。行政、市議会、自治会などで構成)が中心となり、六月十五日から七月十五日までの一カ月間の取り組みです。居住者だけでなく相模原市に通勤・通学者も署名できます。市民協は自治会を中心に、私たち労働組合は市内の労働組合に署名協力を要請しています。相模原市の人口は六十二万人で、署名の目標は二十万人です。すでに取り組みが終わった座間市は、市内居住者だけで六万人(人口十二万九千万人)をこえました。相模原は、司令部移転反対だけでなく、米軍基地の返還や騒音解消など六項目を求める署名です。

今後の取り組み

 夏頃には日米政府間で米軍再編について合意され、関係自治体に要請が来るのではないかと報道されています。しかし、相模原市も座間市も、行政・議会・市民ともキャンプ座間への司令部移転は認められないという態度で一致しています。県も「地元の意向を尊重する」という態度です。さらに署名活動で「移転反対」の市民の意思を示せれば大きな力になると思います。
 キャンプ座間に限らず、米軍艦載機の夜間離発着訓練(NLP)の移転先と言われている岩国も地元住民は反対だと思います。一部に移転工事が地域経済に役立つと期待する動きがあるようですが、基地を抱えることが地元住民にとってどれほど負担かはっきりしています。また米軍再編に伴う工事費など「思いやり予算」で国民の税金が投入されるわけで、国の借金を増やすだけです。
 署名活動後の取り組みについてはまだ検討中です。私たちは市民協を中心に市民集会ができないか働きかけを行っています。地元が地域ぐるみで移転反対の意思を示しているのに、それでも政府が押しつけてくるなら政府と自治体ぐるみの闘いになると思います。一部報道では、キャンプ座間への司令部移転受け入れの条件として、厚木基地のNLP移転や相模総合補給廠の一部返還という話もあるようですが、地元の一致した反対を崩そうというねらいであり、絶対に認められません。(文責編集部)