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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年6月号

米国の要求に従う小泉政治

異議あり! 郵政民営化

郵便局ファンの会会長・明治大学元学長 岡野 加穂留

 郵政民営化を強引に推進する小泉内閣。五月十五日、東京で「STOP!郵政民営化 怒りの反対宣言」の一万人集会を開いた郵便局ファンの会の岡野加穂留会長に話を聞いた。文責編集部。

国を危なくする小泉政治

 小泉内閣の特徴は、政治学的に見ると四つある。第一に議会の審議過程を無視している。第二に議会関係の法律で決めた法的手続きに違反している。第三に嘘で固めている。第四に国民の良識から考えてみて正しくないことを行っている。特にイラク特措法など、従来の内閣がやらなかったような法律を作った。二十世紀の政治史には、次のような前例がある。
 第一の例は、一九三三年にヒットラーがつくったナチス授権法だ。この法律は、議会の審議過程を無視し、議会の手続きを不要とすることによって、ヒットラーに全権力を授け、ワイマール共和国をつぶして全体主義的な政治体制を作る役割を果たした。そして、ドイツは第二次世界大戦に突き進んだ。
 第二の例は、一九三八年に第一次近衛内閣が制定した国家総動員法だ。この法律には、イラク特措法のモデルになったと思われる条文もいくつかある。国家総動員法は国家の危急存亡の時に、日本国のすべての組織を総動員するというもので、政党と労働組合を全部解散して、大政翼賛会と産業報国会に統合し、国家総動員体制を作った。そして、日本は日中戦争に突入していった。
 民主的政治体制と全体主義的政治体制の大きな違いは、政治の手続きを極めて単純化するところに特徴がある。第二次世界大戦が終わった時に、ハイデルブルグ大学のマイネッケ教授が、『ドイツの悲劇』という本を書いた。彼はその中で、ドイツの悲劇は、ヒットラーの手によって一切の民主的手続きを省き、政治を単純化した結果だ、と述べている。
 小泉内閣になって、政治手法が驚くほど単純化した。その原因は三つある。一つは、政治体制が制度疲労を起こし、どうしようもなくなっていること。もう一つは、それでも与党がしっかりした考えを持っていれば何とかなるが、それもだめ。第三は、学識経験者なども含め、自民党や権力体制に対する適切な批判システムがなくなっていること。
 『世界』六月号に、ジャーナリストが、小泉政権下の政治状況について、宮沢元首相の発言を紹介している。「非常に顕著な劣化現象であり、むしろ異常≠ニ言っていいほどである。まともな国会論議や党レベルの議論すらほとんど行われなくなっている。自分の長い経験に照らしても、こんなことが起こるとは私自身、驚きだ。原因は総理総裁にもあるのではないか」と。

郵政民営化は米国の要求

 一九四五年以降、アメリカは全世界的に、近代化の名で発展途上国の政治に干渉してきた。その相手国に日本も入っている。その具体例が一九七四年の米国通商法だ。この通商法に従って、通商代表部は徹底的な市場の自由化・開放を日本に要求してきた。その内容は輸入政策に始まり、広範囲に及んでいる。通商代表部は毎年、日本にこれこれの貿易障壁があると『外国貿易障壁報告書』を連邦議会に出し、それが制裁手続き開始の基礎になる。アメリカ企業が、日本で自由に経済活動ができないのはけしからん、というわけだ。
 私は昨年、『日米投資イニシアティブ報告二〇〇四年』を読んだ。通商法からさらに進んで、アメリカが日本に要求をつきつけ、日米首脳会談のたびに点検していることに驚いた。私は年をさかのぼり、ホワイトハウスや通商代表部や国務省が出している原文も読んだ。一九九三年四月の宮沢首相とクリントン大統領の会談で、貿易構造上の障害についてイニシアティブをとって解決しようとなった。その当時、郵政相だった小泉純一郎氏が後に首相となり、二〇〇一年のブッシュ大統領との首脳会談で、日米投資イニシアティブや規制改革イニシアティブを決めた。それらを読んでいく中で、日本政府が積極的に情報を公開しようとしていないこともわかった。その典型的例が規制改革要望書だ。
 二〇〇四年九月十日、小泉首相は与党にも諮らずに、郵政民営化を閣議決定した。彼はそれをみやげに、九月二十三日、ブッシュ大統領と会談した。イラク、米軍再編、BSE、北朝鮮、国連改革が議題になり、最後に、大統領が「郵政民営化はどうなったか」と質問した。小泉首相は「与党内の反対勢力が非常に強いが、きちんと処理したい」。大統領は「あなたのリーダーシップ、協力に敬意を表する」。それで話が終わった。日本の新聞ではわからないが、国務省の報道には詳しく出ている。
 大統領がわずか四十分の会談で、なぜ日本の国内問題である郵政民営化の質問をしたのか。べーカー駐日大使が退任前に国会議員などに配った文書に答があった。米大使館のホームページに公開されている、二〇〇四年の規制改革要望書だ。そこに郵政民営化について、米国の要求が列挙されている。米国企業にとって長年の懸念である簡保・郵貯の優遇を撤廃せよ、簡保・郵貯と郵便の間で相互補助を行うな、と書かれている。ねらいは簡保と郵貯の三百五十兆円だろう。法務制度改革や商法改正の要求なども書かれている。歴史的には、幕末の日米修好条約が思い出される。幕府は朝廷にも諮らず、幕府内部でも議論せず、老中だけの相談で不平等条約を結んだ。

憲法二五条で郵便局を守る

 アメリカは全世界に、アメリカ的な政治、経済システムを力で強制している。アメリカ経済の根幹をなす多国籍企業が全世界の市場開放を求めているためで、アメリカはその要求を国の政治としてバックアップしていかなければ成り立たないからだ。一番大きな問題は中東とカスピ海周辺の石油資源だ。それを手中に納めるため、グローバル戦略・戦術を立て、その一環として「悪の枢軸」と称してイラクを攻撃した。軍事の裏に経済が隠されている。
 アメリカの大統領が、郵政民営化の細かい点までいろいろ要求してくるのも、ホワイトハウスを支える機関投資家の経済的世界戦略の一環として、簡保・郵貯の三百五十兆円をねらっていると見れば、不思議なことではない。日本の政治家も経済界も、激しく動くアメリカのグローバル戦略に対応できずにいる。
 小泉政治は、郵政民営化がアメリカの要求であることを明らかにせず、キャッチフレーズと政治的な催眠効果をねらって、「民でできるものは民で」という短い言葉を繰り返して、郵政民営化を進めてきた。私は去年の初夏、日米貿易問題の原文を読み、その中に郵便局の問題があることを知った。だから、これは大変だ、郵便局を守らなければいけないと、この運動に参画したわけだ。
 郵便局の問題は、憲法第二五条が保証している、国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の問題でもある。今は北海道から沖縄までどこに住んでいても、五十円または八十円の切手を貼れば、意思を伝達できる権利が保証されている。しかし、民営化されれば、その保証はなくなる。私は、郵政公社のままで公社が自己改革をやり、憲法二五条に従った郵政事業の民主化、発展を考えていくのが一番良いと思う。
 ただし、郵政民営化に反対している自民党政治家の多くが、選挙の集票機構として郵便局を考えている。このような下心ではだめだ。郵便局を守るには、選挙に関係しない我々のような一般ユーザーが、憲法二五条に従って主張する方が説得力がある。そんなわけで、私は「郵便局ファンの会」の会長を引き受けた。
        (文責・編集部)