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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年5月号

生存権すら奪う生活保護費の抑制

月刊『日本の進路』編集部


急増する生活保護世帯

 長期不況と小泉「改革」政治の下で、生活保護受給世帯が急増しています。昨年十月時点で約百万二千世帯となり、一九五〇年の制度発足以来初めて、百万世帯を超えました。また、受給者数でも百四十二万八千人となり、十年前と比べると一・六八倍となっています。
 世帯の内訳で最も多いのは高齢者世帯。九五年度に二十五万四千世帯だった高齢者世帯は、昨年十月で四十六万七千世帯(四六・七%)。そのほかの世帯の内訳は、母子世帯が八・八%、傷病者世帯が二四・八%、障害者世帯が一〇・三%。
 
生活苦を無視し生存権を奪う
 生活保護は、国民が生活に困ったとき、憲法二五条の「生存権」にもとづき、国が国民の最低限度の生活を保障する制度であり、国が定めた「最低生活費」より収入が少ない時に、その差額が給付される。
 ところが、小泉内閣は多国籍企業のための「改革」政治の名の下に、社会保障の「最後の安全網」である生活保護支給の削減に躍起となり、国民の生存権すら奪おうとしています。

高齢者と母子家庭が犠牲
 真っ先に犠牲にされたのは高齢者と母子家庭です。
 七十才以上の老齢加算が〇四年度から三年間で段階的廃止となりました。〇三年度まで月額1万7930円(大都市部)支給の老齢加算が、〇四年度は9670円、〇五年度は3760円、〇六年度は廃止となります。老齢加算の減額に対して、審査請求(不服申し立て)は、すでに全国で六百二十四件に達し、各地で「生存権」をかけた訴訟も起こっています。
また、母子世帯への母子加算も子どもが十六才以上の場合は、〇五年度から段階的に廃止されます。

「自立」を口実に減額や停廃止
 生活保護の長期化を防ぐための取り組みとして打ち出された「自立支援プログラム」もねらいは明白です。福祉事務所などが「自立計画」を策定、就労支援したうえで、保護を受けている人の取り組みが「不十分」と認めた場合には「保護費の減額・停廃止も考慮」となっていのます。
 現在でも給付「適正化」の口実の下、生活に困窮しながら多くの国民が申請すら拒否されるなど、生活保護を受給できない事態があります。生活苦の実態を無視して「減額」「停止」という罰則で脅かす「就労支援」は、生活保護からの排除になります。

国庫負担率の削減
 現在、生活保護費用は四分の三を国、残りを自治体(市部は各市、町村部は都道府県)の負担です。政府は「三位一体改革」で生活保護費の国庫負担を四分の三から三分の二に引き下げようとしています。昨年十一月の政府・与党の三位一体改革では地方の反対で見送られたが、来年度の補助金削減の焦点の一つです。もし国庫負担率が引き下げられ、財政危機の地方自治体に裁量権が委ねられることになれば、生活保護制度は崩壊の危機を迎えます。
 社会保障の「最後の安全網」である生活保護の「最低生活費」カットは、将来的に課税最低限や労働者の最低賃金、老齢年金の支給水準などの切り下げにつながります。生存権すら奪う国民犠牲の「改革」政治を許してはなりません。