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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年5月号

加害の歴史を忘れずアジアの共生を

広範な国民連合代表世話人  槙枝 元文


加害の歴史を知らない日本人

 中国や韓国で反日デモが起きていますが、マスコミはデモ批判だけしています。なぜ今あちこちで反日デモが起こるのか、多くの日本人は理解できないでいます。中国政府などが一生懸命なだめているのに、なぜこういうデモが自然発生的に起こっているか、考えるべきです。
 問題は被害者と加害者の関係です。殴られた者はその痛さを覚えているが、殴った方はすぐ忘れる、これが友好関係では一番問題です。加害者の方はいつまでも忘れないで、会うたびに謝る。「あの時はすまなかった」「いやもうあれは済んだことだ」という状況にするのが必要です。日本は加害国ですから、中国や朝鮮に対しても、東南アジア諸国に対しても、加害を忘れず、いつまでも覚えていることが必要です。
しかし、日本人の多くは、アジアに対する日本による戦争の実態を知らない。そういう点では教育の問題が一番大事だと思います。ところが、歴史の教科書から日本の侵略戦争の加害責任が削除されています。例えば、多くの教科書から南京大虐殺や慰安婦問題は抹殺されています。日清戦争や日露戦争から太平洋戦争を通じて、近隣諸国やアジア全体を日本が侵略し、大変な被害を与えたことがきちんと書かれていない。
 日本の加害責任を抹殺しないで、事実をきちんと教科書を通じて子どもたちに教えていくこと。日本が加害国であった、二度とくり返してはならないと、教科書などを通じて若い世代に伝えない限り、被害国民との友好関係は築くことはできません。そのことが日本が平和国家になっていくゆえんだと思う。そうしなければ、被害を受けたアジアの人たちから信頼されることにはならないと思います。

小泉首相の靖国参拝問題

 靖国神社に対する日本人と侵略されたアジア諸国の人たちの受け止め方は大きく違います。小泉首相は、
「戦没者を慰霊する」「不戦を誓うための参拝」と説明しています。
 しかし、靖国神社参拝は普通の戦没者の慰霊とは性格が違います。靖国神社には東条英機など戦争犯罪人であるA級戦犯が合祀されています。それだけではありません。明治維新の時の官軍側の犠牲者のために建てられた東京招魂社(明治二年)が前身で、明治十二年に靖国神社になってからは、天皇制を支える特別な神社でした。神社には「軍人勅諭の碑」も建てられています。
 その靖国神社に日本の首相が毎年のように参拝することは、戦争被害者であるアジアの人たちの感情を逆なでするものです。
 歴代の首相は内外から批判が出されたら参拝をやめました。中曽根首相も、一度行って中国はじめアジア諸国からの批判を受けてやめました。しかし、小泉首相は批判が出ても、何度も参拝を続けています。韓国や中国などで反日デモが起こっても、「参拝しない」とは絶対にいわない。大国意識を持っているのではないか、いまだに戦時中の大東亜共栄圏などという思想を夢見ているのではないか。そう思われても仕方がありません。これでは、いつまでたっても日本は信頼されません。

敗戦後の米国追随

 なぜ日本は侵略戦争に対する反省が不十分だったのか。日本はアジア太平洋諸国を侵略したが、結局、一九四五年に敗戦となりました。敗戦後、アメリカ軍が日本を占領した。そしてアメリカに従属し、いわばアメリカの家来になった。戦後しばらくして米ソ冷戦が始まったため、アメリカは日本を経済復興させる政策に転換。だからアメリカの陰に隠れて、諸外国に対する謝罪も賠償もほとんどしないで済んだ。
 ところが被害を受けた国、国民にしてみれば、その恨みというか憎しみというか、被害はみんな知っています。二千万人が犠牲になったといわれる中国、過酷な植民地支配を受けた朝鮮はじめアジア諸国の人たちは、忘れることはできません。
 日本は侵略戦争をしたにもかかわらず、アメリカの傘の下で、アジア諸国に対する戦争責任を果たさなかった。戦後五十年の一九九五年、村山内閣になって初めて謝罪の言葉を述べた。さらに教科書問題など若い世代(子々孫々)にもきちんと教えてこなかった。その結果、国民全体がアジアの人たちの日本に対する感情を知らない。これが日本と被害を受けたアジアの人たちの意識のずれです。ここに大きな問題があります。
 日本はドイツに学ばなければいけないと思う。ドイツはナチスの被害者や遺族に対して今でもなお補償を続けています。過去の誤りを克服しなければ、ヨーロッパの中で生きていけなかった。そういう努力をしてEUの中で信頼される国になっています。
 
アジア敵視は孤立の道
 
 アメリカは、中東から東アジアまでの地域を「不安定の弧」と呼んで、ここに米軍を集中的に再編・駐留させようとしています。米軍再編の日米協議の中では、朝鮮半島問題や台湾海峡問題で日米が共同して対処することが確認されました。アメリカのアーミテージ前国務副長官は、台頭する中国は脅威だから日米が一緒に抑える必要があると述べています。アジアを敵視するアメリカの世界戦略に、日本はいままで以上に組み込まれようとしています。
 ところが、日本人はそういうことに目覚めてない。アメリカ追随でアメリカの傘の下にいるからで気付いていない。国際的に見たら日本は経済大国だが、アジア諸国から見たら日本は独立国というよりアメリカの従属国いや属国と思われています。日本がめざしている国連の常任理事国入りも、アメリカの票を一票増やすだけだと世界は見ています。イラク戦争などを通じて、アメリカに対する批判が世界的に起こっています。そのアメリカに追随し、アジアに敵対すればますます孤立します。

アジアの共生

 日本にとって最大の貿易相手国はアメリカではなく中国です。急速に経済発展する中国をはじめアジア諸国との平和・友好関係なしに、日本の平和と安定、将来の経済発展も望めません。
 アジアの一員として信頼され、友好関係を築くためには、過去の問題をきちんと清算することです。日中共同声明や日中平和友好条約、韓国の間での共同声明などで、日本は過去の戦争について反省し謝罪しています。ところが実際は、首相の靖国神社参拝、歴史をわい曲する教科書問題など、中国や韓国などアジアの人たちの感情を逆撫でにするような動きが続いています。こうした問題を解決しなければ、反日デモなどはくり返し発生すると思います。問題なのは口先の謝罪や反省ではなく、そういう約束をきちんと行動で示すかことが必要です。
 合わせて、アメリカに追随し、朝鮮や中国などアジアを敵視し、自衛隊派兵や国連常任理事国入りなど軍事大国化の動きをやめるべきです。アジア外交を転換し、日朝国交正常化などアジア諸国との平和、友好、協力の関係を築くことが日本が選択すべき進路ではないでしょうか。
  (文責編集部)