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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年4月号

米国の戦略に日本を組み込む米軍再編反対
普天間返還を求める包囲行動を

フォーラム平和・人権・環境事務局長  福山 真劫


 米軍再編と憲法改悪

 アメリカの軍事戦略が九・一一以降大きく変わり、自衛隊を軍事力として活用しようという方向に来ており、憲法九条を持つ日本にとって、深刻な事態になりつつあると思います。去年七月、アーミテージ米国務副長官が、日米同盟にとって憲法九条が障害になりつつあると発言しました。米国の戦略からすると、憲法九条や従来の日米安保では対応できない事態になりつつあります。
 米軍再編(トランスフォーメーション)では、イギリス、ドイツ、韓国など海外の米軍は軍事力を後退させます。ところが、日本については米軍との連携をより強化させ、東北アジアから中東にいたる「不安定の弧」をにらんで米軍のプレゼンスを強化するという流れになっています。例えば、米陸軍の第一軍団司令部を神奈川県のキャンプ座間に移設させる計画です。これが実現すれば、陸・海・空・海兵隊の米四軍の司令部が日本に置かれる。これまで以上に米国の世界戦略にがっちり組み込まれ、米国の起こす戦争に一体となって行動する可能性があります。
 こうした米国の戦略にそった米軍再編で、憲法九条のさらなる空洞化と、憲法九条の改正問題まで浮上してきています。その流れの中に沖縄問題があり、キャンプ座間、岩国問題があると思います。
 イラクで、米軍兵士が千五百人ぐらい死んでいます。アメリカの青年が死ぬわけで、産軍複合体のもうけのために何で死ななければという声が米国内でも強まっています。韓国では反米意識が強くなっており、在韓米軍は削減される方向です。アメリカは他の国に肩代わりさせて、米軍兵士の死者を少しでも減らしたい。そのための米軍再編であり、憲法九条を改正して、米国の起こす戦闘地域に日本の自衛隊を引っ張り込み、米軍と一体となって行動させようというねらいがあると思います。
 平和を願う世界中の人々に敵対するもので、絶対に許せません。これを許せば日本は、東アジアにおける平和のための自主的な役割を果たせません。

 新防衛大綱と自衛隊法の改正

 米軍再編と合わせるように、小泉政権は昨年十二月、「新防衛大綱」を閣議決定しました。この新防衛大綱には大きな問題があります。一つは、自衛隊法を改正して海外派兵を容易にしようとことです。これまで政府は、自衛隊の海外派遣(海外派兵)について、テロ特措法やイラク特措法など個別の特措法を作って対応してきました。自衛隊の本来任務として海外派兵できるよう自衛隊法を変えようとしています。
 もう一つはミサイル防衛(MD)計画の問題です。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を脅威として想定するのであれば、過剰防衛という気がします。MD計画は膨大な費用(税金)がかかり、東北アジアの軍事緊張を高めるだけで、日本の平和にも役立ちません。
 「北朝鮮の脅威」や「中国の脅威」が声高に言われています。何が脅威かを冷静に考える必要があります。平壌からみれば、先制攻撃も辞さずと公言している超軍事大国の米国、軍事費二位の日本、韓国が一緒になって包囲している。相手の立場になればどちらが脅威か明白です。
 小泉構造改革の中で不況が深刻化しています。低賃金のフリーターなど非正規雇用労働者が急増、労働組合も作れないような人権無視の事態が広がっています。弱肉強食の改革で犠牲にされている国民の不満や怒りが高まっています。しかし、その矛先が小泉政権の政治や経済システムに向かうのではなく、アジア敵視の危険な排外主義に向かう危険性があります。マスコミや政治家が「北朝鮮の脅威」や「中国の脅威」をあおり、海外派兵など軍事大国化を正当化しようとしています。

 戦争責任をとっていない日本

 第二次大戦の敗戦国であるドイツ、イタリア、日本。ドイツの場合はヒットラーが自殺し、軍、政府、企業、マスコミの主導者が戦争責任をとりました。ところが日本の場合、責任をとったのは一部の軍人だけ。岸信介のような戦犯が生き残ったし、政府官僚も、戦争をあおって国民を戦争に引きずり込んだマスコミも含めて責任をとらなかった。
 戦後六十年たつが、アジア諸国に対して戦争責任をきちんと果たしているとは思えません。日本国憲法で侵略戦争の反省をし、韓国と中国とは国交正常化しましたが、朝鮮民主主義人民共和国とは国交正常化すら実現していません。また国交正常化した韓国や中国も含めて多くの課題が残されています。最近は小泉首相の靖国参拝、教科書問題など歴史認識問題をはじめ、日本が原因で関係が悪化しています。アジアの人たちは、アメリカと一緒になってアジアを軍事力で押さえつけるのではないかと警戒心を高めています。

 神奈川の闘い

 神奈川では、市民団体や神奈川の平和運動センター、私ども平和フォーラムも一体になって、原子力空母の横須賀母港化に反対する署名運動を取り組み、約三十一万人の署名を横須賀市長と松沢知事へ届けました。横須賀市長も神奈川県知事も二〇〇八年以降も「後継空母は通常艦で」と政府に要請しています。横須賀、神奈川の闘いがあって、全国がそれに支援した結果そういう動きになっています。私たちは、空母の母港化そのものに反対ですが、当面は原子力空母の母港化は絶対反対とし、それを確実なものにしていきたい。
 また二月十九日、キャンプ座間への米陸軍第一軍団移駐に反対して、三千人以上で座間米軍基地司令部を包囲する「人間の鎖」行動が大きく成功しました。地元では自治体ぐるみの運動に発展してきています。

 普天間包囲行動の成功を

 平和フォーラムが一番重点的に取り組んできた一つは沖縄です。沖縄は一九七二年に本土復帰をしましたが、憲法が空洞化され、米軍基地が集中して押しつけられている。こうした事態を何とか改善しようと沖縄や全国での闘いが続けられてきています。また昨年八月の普天間基地のヘリ墜落事故を契機に、市民、伊波・宜野湾市長、沖縄の平和運動センターや県民の普天間返還の取り組みが強められています。運動の広がりの中で、普天間返還の展望も徐々には見えてきていると思います。沖縄の社民党や社会大衆党も民主党も頑張っているし、東京では沖縄等基地問題議員懇談会などもできて、新たな枠組みで沖縄の闘争が前に進もうとしています。そういう意味で、今年の五・一五というのは極めて重要な取り組みになると思っています。
 復帰三十三年目を迎える今年も、平和の島をめざし、「五・十五平和行進」(五月十三〜十五日)を行います。あわせて「辺野古移設断念」と「普天間基地の即時閉鎖・無条件全面返還」を確実なものとするために昨年に続き「普天間基地包囲行動」(五月十五日)を取り組みます。
 こうした取り組みを通じて、米国の危険な戦略に組み込まれる米軍再編に反対し、沖縄をはじめ全国の米軍基地の縮小撤去を実現したい。
        (文責編集部)