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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年1月号

「三位一体改革」による地方切り捨てを許すな

「日本の進路」地方議員版編集長 迫田富雄


 地方交付税は九千六百億円減

 財務省は十二月二十日、二〇〇五年度予算の原案を内示した。その総額は前年比七百二十億円増の八十二兆千八百二十九億円だが、地方財政計画の方は九千億円減の八十三兆七千七百億円となった。三位一体改革(補助金削減、税源移譲、地方交付税見直し)の名で一兆七千二百億円の補助金が削減され、税源移譲は一兆千百六十億円でしかない。差額六千億円のうち三千億円は新たな交付金となるが、三千億円は何の見返りもない。他方で、地方交付税は百億円増の十六兆九千億円で、「五年ぶりの増加」と喧伝された。だが、本当に増加したと言えるのか。
 この数年、国は地方交付税配分の財源が不足し、後年度に地方交付税の増額で返済する約束で、地方に借金させた。この借金つまり臨時財政対策債は地方交付税と同等だ。公正を期すなら、地方交付税と臨時財政対策債の合計を見るべきだろう。三位一体改革が骨太方針に登場した二〇〇三年度以降の合計は次のとおりだ。
 〇三年度 23兆9389億円
 〇四年度 21兆0766億円
 〇五年度 20兆1200億円
実質的な地方交付税は、〇四年度が二兆八千六百億円減、〇五年度が九千六百億円減、わずか二年間で三兆八千億円も減らされた。三位一体改革の名による地方切り捨ては〇五年度も進み、住民はいっそうの犠牲を強いられるのである。

 財界による「地方行革」

 二〇〇〇年十二月十九日、経団連(会長・奥田碩・トヨタ自動車会長)は「地方行財政改革への新たな取組み」(奥田ビジョン)を発表した。そして「中小規模の自治体」が「効率的・合理的な企業活動の展開を阻害し、事業コストを押し上げ、グローバルな市場競争面での障害となっている」として「少なくとも人口一〜二万人規模を市町村合併における最低限の目標とすべきである」「現状の三千三百弱の市町村数が三分の一前後に集約されることが期待される」「都道府県合併の制度化や道州制も含め、更なる広域化の検討を中長期的な視野から進めるべき」(第二十七次地方制度調査会の「西尾私案」と同じ!)「平成の大合併」を方針として「地方交付税交付金や現行の国庫支出金等は最終的には廃止する。なお、財源調整は極端に税源に乏しい地方自治体等、特に必要な場合に限定する。また、地方自治体への国の財政的関与は最小限とすべきとの観点から、中長期的には郵便貯金、簡易生命保険積立金についても、市場を通じた地方債への運用を図るべきである」と、「三位一体改革」と「郵政民営化」まで提唱している。この「方針」は奥田碩、牛尾治朗・ウシオ電機椛纒\取締役会長、本間正明・大阪大学大学院経済学教授、吉川洋・東京大学大学院教授が「民間人」として経済財政諮問会議に参画し主導することでフォローアップされる仕組みとなっている。「小泉改革」路線はこういった財界の路線を具体化したものにほかならない。

「国庫補助負担金削減案」も
「地方の声」でなく財界の意図


 二〇〇四年六月三日、経済財政諮問会議は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇四」(骨太方針二〇〇四)を策定し「平成十八年度までの三位一体の改革の全体像を平成十六年秋に明らかにし、年内に決定する。その際、地方の意見に十分耳を傾けるとともに、国民への分かり易い説明に配意する」「全体像には、平成十七年度及び平成十八年度に行う三兆円程度の国庫補助負担金改革の行程表、税源移譲の内容及び交付税改革の方向を一体的に盛り込む。そのため、税源移譲は概ね三兆円規模を目指す。その前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する」ことを決めた。財界が首長、学者、労組を組織した「新しい日本をつくる国民会議」(「二十一世紀臨調」)の役員は代表・佐々木毅(東大総長)、茂木友三郎(キッコーマン社長)、北川正恭(早稲田大教授、前三重県知事)、西尾勝(国際基督教大教授)/副代表・池田守男(資生堂社長)、草野忠義(連合事務局長)、増田寛也(岩手県知事)、福川伸次(電通顧問)/顧問会議議長・奥田碩(経団連会長)で構成、事務局は社会経済生産性本部・政治改革推進室。この「二十一世紀臨調」の方針に沿って「地域から政策発信を行い、日本の政治・社会の仕組みを改革することを目的」とする「二十一世紀臨調知事・市町村長連合会議」(代表は増田寛也・二十一世紀臨調副代表・岩手県知事、他十二県知事、九市長、一町長 〇四年六月現在)も旗揚げし、「地方の声」を装いながら財界の方針を具体化する役割を果たしている。
 その様な背景と流れがあって〇四年八月二十四日、地方六団体(会長は全国知事会会長・梶原拓・岐阜県知事)から三兆二千億円の「国庫補助負担金削減案」が政府に出された。この削減案は義務教育費国庫負担金や国民健康保険負担金の削減も含まれ、税源移譲を前提とするとはいえ、同じ地方六団体の中でもまとまらず、異論のある十三都県知事の義務教育国庫負担金制度は続けるべきである等の付帯意見付きの提案であったし、削減される当該団体からも多くの批判の声が上がった。

 広範に連携し闘おう

 全国町村会と同議会議長会は二〇〇三年二月、小規模自治体の自治権を奪う「西尾私案」に対して史上初めて共闘し、六千人の「町村自治確立総決起大会」を開催し抗議した。五月には地方六団体で構成する地方自治確立対策協議会が主催して七千六百人が結集して「地方財政危機突破総決起大会」を開催。昨年十一月十七日の一万人集会では地方六団体として歩調を合わせて地方交付税交付金の拡充を訴えた。そして、十二月二日の全国町村長大会でも地方交付税の持つ財源調整・財源保障の機能を堅持し、所要額を絶対確保することを強く訴え「町村自治の発展を支える財政制度の構築に向けて」という冊子で地方交付税交付金の存在意義を訴えた。
 財務省の予算原案に対して、「約三百億円の財源不足が生じた〇四年度の水準を維持したにすぎず、厳しい財政状況に変わりない、県財政に与える影響の分析を急ぐ」(熊本県)、「財政状況は依然厳しく、基金を取り崩して(新年度)予算編成をしなければいけない」(秋田県)など、予算編成が具体化する年明けとともに全国の地方自治体や教育現場や福祉の現場業界・団体で激しい反発の声が上がるのは必至である。与党・自民党の県連段階でさえ小泉改革に不満が噴出している。
 一昨年は福島県で、県や県内市町村会、議会など自治体が中心になり商工会議所や労組、農業団体などの代表も参加した危機突破総決起集会が開催された。教組や自治労など労組も意識的に地方六団体と共闘する動きも出てきた。北海道や長野県などでも労組と各界が連携する「地方危機突破」のシンポジウムや県民大会などの取り組みが広がっている。
 今年はさらにその様な闘いが前進するに違いないし、前進させなければならない。