国民連合とは代表世話人月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場トップ


自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年8月号

コメなどの輸入拡大は認めない
WTO農業交渉で農業者が緊急集会


 世界貿易機関(WTO)の農業交渉は、農業交渉の枠組みをどうするか山場を迎えている。また、「食料・農業・農村基本計画」の見直し作業も重大な局面を迎えている。
 農業交渉の枠組みが議論されるWTO一般理事会を控えた七月二十二日、東京で「WTO農業交渉・基本農政確立全国代表者緊急集会」が開かれ農業者ら千二百人が参加した。主催は、全国農業協同組合中央会(JA全中)と全国農業者農政運動組織協議会(全国農政協)。
 主催者あいさつで宮田勇・全中会長は、「示されている議長案は問題点、あいさまな記述が多く、農業者の不安を徹底して払しょくしなければならない」と指摘した。
 山田俊男・全中専務は、情勢報告の中で「合意案には上限関税の言葉が残ったり、重要品目であるコメなど低税率の輸入枠があいまいだ」と指摘し、「後に争点を残さないために断固反対したい」「日本のような食料純輸入国が農業を維持・発展できる枠組みをめざしたい」と述べた。
 代表要請で、花元克巳・全中副会長は、「食料・農業・農村基本計画」の見直し作業にふれ、「多様で幅広い『担い手』づくりや、一般株式会社の農地所有による農業参入に反対する」ことを求めた。
 農林漁業団体を代表して、太田豊秋・全国農業会議所会長と木下紀喜・全国森林組合連合会副会長が連帯あいさつを行った。木下氏は「自由化の嵐だ。木材は八割以上、食料は五割以上が輸入されている。自国で自給できる品目まで、これ以上輸入する必要があるのか」と述べた。
 決意表明で平和男・JA全青協理事は、「北海道で畑作専業をやっている。上限関税や関税割り当て数量の拡大などは米国のエゴだ」と述べた。また基本計画の見直しに関して「与党の『担い手』重視には反対。多様な形態の農家が地域を支えている。永田町や霞が関からは一粒のコメもできない。生産者の努力が報われる農政の実現」を訴えた。
 最後に、低関税の輸入枠拡大や上限関税阻止など確認し、要求貫徹に向け、ガンバロー三唱を行った。
  ◇   ◇   ◇   ◇
 スイスで開かれていた世界貿易機関(WTO)の一般理事会は八月一日、新ラウンド(多角的貿易交渉)の「枠組み」合意を採択し閉幕した。
 農業分野では、農産物の関税引き下げ方式を高関税ほど多く引き下げる「階層方式」を採用することが決まった。日本のコメや乳製品などなど各国の重要品目は別扱いすることになったものの、関税の一層の引き下げは避けられず、日本農業への影響は大きい。また、コメなど重要品目に適用する低関税輸入枠の扱いは拡大を義務付けるか、義務付けないか、あいまいなまま決着した。さらに「上限関税」の議論は先送りされるなど、合意を優先したため内容は不明確な記述が多い。
 今回の枠組み合意を受け今後は具体化に移る。これまで交渉を牛耳ってきた米欧、発言力を増してきた途上国グループ、それに日本など食料純輸入国の利害対立は続いている。次回のWTO閣僚会議は、〇五年十二月に香港で開かれる。
  ◇   ◇   ◇   ◇
 国民の食料安定生産・供給は独立国としての最重要課題だ。しかし現状は、日本の食糧自給率はカロリーベースで四〇%、飼料を含む穀物自給率は二八%と、世界一の食料純輸入国である。安全で安定的に国民に食料を供給しようとすれば、政府は米国などのさらなる輸入自由化要求を阻止し、自給率向上のために国内生産者を保護育成する責任がある。