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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年5月号

原子力空母の横須賀母港化を阻止しよう

神奈川平和運動センター代表・弁護士 宇野峰雪


 三月三十一日の米議会下院軍事委員会で、米太平洋軍のファーゴ司令官が、空母「キティホーク」の後継について「最も能力の高い空母が配備されることを望んでいる」と述べ、原子力空母の配備を示唆しました。

 空母の横須賀母港化から三十年

 横須賀基地や厚木基地など神奈川県の米軍基地は、米国の世界戦略と大きく関わってきました。古くは朝鮮戦争、そしてベトナム戦争を通じて強化されてきました。原子力潜水艦の寄港、米空母の寄港、厚木基地の滑走路延長と空母艦載機の騒音拡大など連動しています。
 一九六〇年代半ばに原子力潜水艦寄港の阻止運動がありました。横須賀に原子力潜水艦寄港阻止の闘争本部ができて、関東周辺や全国からも集まって、さかんにデモや集会が行われていました。弁護士になりたての私は逮捕者の弁護活動などもやりました。また、厚木基地爆音期成同盟(厚木爆同)を中心に周辺住民九十数名による差し止めと損害賠償の第一次厚木爆音訴訟(一九七六年)では、私どもの事務所が中心になって弁護団を組織しました。
米空母ミッドウェイが横須賀を母港化したのは一九七三年です。当初は、二、三年という約束でしたが母港化が強行されました。ミッドウェイからインディペンデンス、そして現在のキティホークと空母は交替しましたが、空母の母港化は昨年で三十年も続いています。
 二〇〇八年に老朽化した空母キティホークが退役します。現役の米空母は十二隻で、通常型は二隻のみ、次は原子力空母になるのではないか。そういう危機感を深めていたとき、十二号バース(埠頭)の延長工事問題が浮上してきました。これはまさに原子力空母を迎えるための準備にほかなりません。
 通常動力なら入港すればエンジンを止めますが、原子力エンジンは決して停止しません。原子力空母の母港化とは、東京港、横浜港、川崎港、千葉港など膨大な船が出入りする東京湾の喉元に三十万キロワットの「動く原発」ができることです。基地の機能強化だけでなく、首都圏の人たちが原子力事故や放射能汚染の不安を抱えることになります。
 横須賀市民は、「原子力空母の母港化反対」「十二号バース延長工事反対」の署名を十万人以上集めて市長や県知事に要請しました。しかし、横須賀市長は「日米政府から正式の話がない」と原子力空母の母港化には態度を明確にしないまま、十二号バースの延長工事を認めました。結局、市民のために動かない市長を交代させることも含めて、全体の状況を変えていかなければならないと思っています。
 いま問題になっている米軍池子住宅(逗子市、一部横浜市)の増設問題も、原子力空母に備えた準備です。原子力空母になれば乗組員が増えるわけで、米軍住宅がさらに必要になる。アメリカ側は、横浜の老朽化した米軍根岸住宅(四百戸)などを返還するから新たに八百戸をつくれと要求。昨年二月の日米会合で、防衛施設庁は「遊休化している施設の返還」を条件に「合計八百戸の米軍住宅を池子住宅の横浜市域の建設する」という内容で合意しました。これは沖縄の普天間基地の「返還」話と同じ構図です。逗子市の米軍池子住宅が市民の反対を押し切って建設が強行されたとき、国、逗子市、神奈川県の三者合意で「米軍住宅の追加建設はしない」と明記されています。ところが防衛施設庁は、「横浜市域だから三者合意は関係ない」というペテン的な態度です。
 しかも、十二号バースの延長工事も、原子力空母が母港化になった場合の様々な施設もすべて日本政府の「思いやり予算」、つまり国民の血税が使われます。故・金丸信氏が「思いやり予算」をはじめた一九七八年当時は、まだ日本に財政的余裕があった時代です。大変な財政赤字を抱えている現在、米軍を思いやる余裕などありません。
 こうした基地問題に対して、松沢県知事、中田横浜市長も、あいまいな態度です。イラクへの自衛隊派兵で結果として自衛隊が国民の中に認知され、憲法上も自衛隊を認知していいではないかという世論が高まっています。マスコミも動員した国民を誘導する動きがあり、結果として、憲法擁護の姿勢が次第に薄れているという状況があるのではないか。
 しかし、悲観的な動きだけではありません。韓国では多数派の野党が大統領を弾劾決議を強行したましたが、総選挙で国民から大変なしっぺ返しを受けました。同様に圧倒的な軍事力を背景にしたアメリカのイラク占領が行き詰まっています。スペインはじめイラクから撤退する国も出てきました。
 イラクを一方的に爆撃し、たくさんの人たちを殺傷し、破壊した米軍の攻撃を全面的に支持し、米軍の占領政策に追随する自衛隊派遣が人道支援だという日本政府の対応は筋違いです。ただちに自衛隊を撤退させるべきです。

力をあわせて母港化阻止を


 原子力空母の母港化を認めれば、日本は将来的にも米軍基地として固定化されていくことになります。在韓米軍は遠くない時期に韓国から出ざるを得なくなるのではないか。しかし、米軍は日本から引き揚げることは意思は当分ないのではないか。一つは、昭和天皇がマッカーサーにあったとき、沖縄をアメリカのお好きなようにお使い下さいと差し出した。だからアメリカにとって、沖縄はアメリカのもの、米軍基地は永久に使用することを前提に「返還」したという認識です。また、現在のアメリカの世界戦略があります。アジアの中で経済的に大きな力をもってきている中国が、飛躍的に国際社会の中で向上していくことは間違いない。アメリカに対抗する力として中国をみており、日米安保の下で日本を「防波堤」としての役割にしようとしています。日本の保守層も同じ認識に立っているのではないかと思います。
 そういう状況を何としても変える必要があります。イラク問題、憲法問題、それに横須賀の問題を連動させながら、何としても原子力空母の母港化を阻止したい。そうすれば、米軍が日本にいることができなくなり、日米安保条約も用をなさなくできるかもしれない。その方向で幅広く力をあわせていきたい。
 原子力潜水艦寄港阻止の闘いなどを活かしながら、全国的な力を横須賀に集める工夫をしたい。幅広く組織して、県内組織、全国組織をつくって、できるだけ広く多くの人たちの力と知恵を集める必要がある。そういう主旨で、五月三十日に「米原子力空母の横須賀母港化阻止全国連絡会」の結成をめざしています。 (文責編集部)