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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年3月号

新生銀行
巨額の利益を手にしたハゲタカ・ファンド

―アメリカでは日常茶飯事―

広範な国民連合常任世話人   竹田四郎


 東京株式市場第一部に二月十九日、新生銀行の株式が上場された。買い手が殺到し午前中には株価が決まらず、午後やっと八百二十七円の初値で取引された。売出価格は五百二十五円だから約三百円のもうけになる(二千三百億円の売却益)。ニュースはマスコミのトップ面におどりでた。しかし経済誌は事前に資産やリスクの程度からいって千円以上になると報じていた。
 新生銀行は名前は日本名だが、完全なアメリカ資本。一九九八年に破たんする前は日本長期信用銀行。日本興業銀行(現みずほ銀行)、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)とともに金融債を発行して資金を調達し、戦後の企業に長期資金を供給してきた超一流銀行であった。それがイケイケドンドンのバブル期に、都市銀行が系列を使って湯水のごとく企業に資金提供するのと競争して不動産融資に傾斜していった。バブルがはじけ、地価暴落で転落した。その後国有化された。政府は旧長銀を再生復興する者を求めた。その企業には各種の援助条件をつけた。これに応募したのが、アメリカのヘッジファンドのリップルウッドホールヂングであった。政府は約八兆円の公的資金をつぎこんだ。リップルウッドはたったの十億円で買った。買う方も買うほうだが、売る方の自民党政府も売るほうだ。全然国民のことなど考えていない。
 このうち、旧長銀が破綻時の債務超過の穴埋め分、三兆七千三十五億円と瑕疵担保条項(旧長銀から引き継いだ債権が二割以上低下した場合は国が買い戻す契約)に基づく貸出債権八千五百三十億円は返ってこない。株式投資分と整理回収機構による資産買取分の約三兆四千億円は、どの程度返ってくるか今後の新生銀行の営業状況による。当初資本投資銀行(非金利収入)主体で行く予定だったが、見通しがたたず、リテール(個人営業)も事業の半分ぐらいやらなければならないようだ。
 新生銀行の資産は〇三年三月で八・四兆円で静岡銀、千葉銀など地方銀行並み、破綻直前の長銀の資産二十五兆円、みずほ銀の百五十一兆円に比べ、いかに少ないか。これは新生銀が貸出金を強引に引き上げたためである。いわゆる貸しはがしだ。貸出金が都市銀に比し極めて少ない。情け容赦もなく、他の都銀の協調要請も断り、資金を引きあげ、マイカルをつぶした。そごうやダイエーをも危機においやったことで有名である。新生銀のあこぎなやり方に客離れもおきた。政府からも中小企業への貸出計画を進めていないと警告を受けた。その反対に瑕疵担保契約による政府への買い戻しは遅滞なく実行した。ちなみに、旧日本債権銀行も破綻し政府と瑕疵担保契約をしたが、実行額は二百億円前後に過ぎない。新生銀の自己資本比率が二〇%、不良債権比率が少ないとかいわれているが当然だろう。銀行の公共性や国民のことなど全く無視したやり方と言うべきだろう。まさにハゲタカ・ファンドだ。
 世間では、新生銀だけが悪玉のようにいわれているが、アメリカの銀行はこれが当たり前、日常茶飯事なのである。日本の銀行は融資による金利収入に依存しているが、米国では株式、債券発行やM&A(企業の吸収・合併)によって手荒く稼ぐのは当然としている。グローバル化の中で他国のいい点は取り入れるべきだが、その国その国の文化や伝統がある。それまで打ち切ってアメリカン・スタンダードを取り入れても、決してうまくいくとは思われない。
 ◇  ◇  ◇  ◇
◆株の売却益二千三百億円は非課税
◆貸しはがしは約四兆円。倒産件数 百五十二社、負債総額約十二兆円。
◆十億円で買って濡れ手でアワの新生銀行。巨額の負担は国民に。