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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年2月号

箕輪登氏(元郵政相・元防衛政務次官)に聞く

小泉くんは間違ってる!
 イラク派遣差し止めを提訴する


―自衛隊のイラク派遣をどうお考えですか。

 憲法は第九条で、武力による威嚇、武力行使を永久に放棄すると書いてあります。ただし、特例中の特例として、自衛隊法の八十八条には武力行使ができると書いてあります。七十六条の防衛出動命令が前提条件です。わが国が武力攻撃を受けたときだけ、日本を守るために武力行使を許容してるんです。イラクのためではありません。
 内閣総理大臣が自衛隊に出動命令を出せるのは、防衛出動命令、災害出動命令、治安出動命令の三つです。災害出動命令は復興支援ですから、武器はいらない。治安出動命令の場合は武器使用を認めていますが、武器使用は武力行使と違い、警察官職務執行法を準用すると八十九条に書いてあります。警察官が無反動砲を持っていますか。ピストルしか持ってません。ピストル以上の火器を使えば武力行使です。
 自衛隊の任務にないイラク派遣は自衛隊法に反します。だからイラク特措法をつくったが、無反動砲など重装備で行く。これを使えば武力行使ですから、憲法違反です。
 イラクに三十八カ国が軍隊を出しており、バグダッドに統合司令部がある。日本の自衛隊が統合司令部に入ることは集団的自衛権の行使です。これも完全に憲法違反です。
 国際法から見ると、イラクは戦争区域ではないが、国全体が戦闘区域です。ここなら安全だ、危険だ、という議論をしたり、危険か危険でないかを見に行った。国全体が戦闘区域なのに、ナンセンスです。
 石破くんは、わざわざイギリス、オランダへ行った。自衛隊が行く近辺の占領軍です。何を頼みにいったんですか。情報ならば、みんなCPA(連合国暫定当局)の傘下ですから、CPAに集まっている。ぼくに言わせると、自衛隊が行くから守ってくれと聞こえてならない。そんなことは国辱ですよ。
 イラク派遣は自衛隊法に抵触し、憲法に違反する。そういう意味で、私はイラク派遣に反対です。

―イラク派遣差し止めで提訴されるそうですね。

 来週中に提訴します。国民がデモや集会や署名運動をやって反対しているのに、小泉くんは耳をかさない。ぼくには国会議員当時のような発言の場もない。これだけ国民が反対しても断行するならば、司法の判断をあおぐより、方法がないんです。
 小泉くんも、石破くんも、昔から知っている仲間です。友達を訴えるようなもので、じくじたるものがありますが、そんな私情にかまっていられません。ぼくが病気をしていたときに、自衛隊は湾岸戦争にもカンボジアにも行った。心の中でこれでいいのだろうかと思った。今度は戦闘区域のイラクへ行く。昔の軍隊と同じようになってきた。
 小泉くんが、自衛隊を軍隊だと言っているのは間違いですよ。わが国の自衛隊は、同じ武力集団でも、他国の軍隊や昔の軍隊とはまったく違うんです。昔の軍隊は外国へ行って国際紛争を武力で解決しようとした。今は憲法でこれを禁止している。自衛隊はわが国が攻撃されたときだけ、わが国を自衛する武力集団です。今度の措置は海外での武力行使です。そんなことを命令するのは命令権の乱用です。防衛庁の幹部に、かん口令までしいた。
 こんなことが認められたら、これが慣例になり、海外での武力行使があたりまえになる。このままエスカレートしていったら、日本はどうなりますか。心配でたまらない。
 だから私情をなげうってでも、提訴するんです。みんなで提訴したらいい。ぼくは先鞭をきって北海道で提訴する。青森で、あるいは東京、愛知、大阪、九州、沖縄で、全国で提訴すれば判決も早くなりますよ。費用もみんなで百円カンパしたらいいんです。各県で提訴が起きるように運動してください。

―アジアの国は自衛隊のイラク派遣をどうみるでしょうか。

 人道復興支援だと言うから、アジアの国は口では反対しないでしょうが、日本の武力集団が重装備で外国に行くことに、脅威を感じると思います。アジアの国と平和を語らなければならない日本が、脅威を与えるようなことをしたらだめですよ。
 ぼくは在職中、九段の議員宿舎におりました。雨の日も風の日も毎日散歩に出ます。靖国神社のそばですからお参りします。しかし、小泉くんと会ったことは一回もない。小泉くんは総理大臣になってから初めて行くんじゃないですか。なんで、中国や韓国が嫌ってるのに行くんですか。わざとアジアに逆らっているように思えてならない。小泉くんはなに考えてるんだ。

―小泉首相は日米同盟を行動で示さなければならないと言っています。

 それは間違いです。日米安保条約は、日本が困った時にアメリカに手伝いに来てもらうが、アメリカが困った時に日本が助けに行く条約ではない。岸さんからそう教えられた。岸さんの国会答弁を見て下さい。
 なんで、日米安保条約があるから、武力集団がイラクに行くんですか。アメリカの指揮下に入るんですか。日米関係の友好なら、別のことを考えればいいんです。人道支援は外務省の案件です。外務省がODAでやったらいいんです。給水ならば、建設費や機械を贈り、イラク国民に使い方を教えればいいんです。どうして自衛隊にたよるんですか。
 重装備で行けば、テロがねらうにきまってます。ぼくは終戦のころに、進駐軍が国道を通って小樽から札幌へ入ってくるのに出くわしました。往診で患者の家に行かなきゃならないのに、国道をわたれない。アメリカ軍の行進に、威圧というより威嚇を感じました。三十八カ国の軍隊に占領されたイラク国民は、威嚇と感じると思います。憲法は武力行使も武力威嚇も禁じているんです。
 自衛隊が、もしイラクで重装備を使って相手を殺せば、殺人罪になりませんか。自衛隊員は日本を守るためなら命を捨てると言ってます。それなのに、国防と関係のないところへ行かされて、犬死にするかもしれない。無事に帰ってきても、殺人罪に問われるかもしれない。そんなべらぼうな話がありますか。自衛隊員がかわいそうですよ。黙って見てられません。
  (一月二十日談・文責編集部)


箕輪登(みのわ・のぼる)
一九二四年生。衆議院議員に八回当選し、郵政相、防衛政務次官、自民党国防部会副部会長などを務める。一九九〇年に引退。二〇〇四年一月二十八日、自衛隊のイラク派遣差し止めを札幌地裁に提訴した。