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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年2月号

特集 商店街と大型店出店問題

ジャスコが町を破壊する!


 米国と日本政府の規制緩和圧力で大店法が二〇〇〇年に廃止され、大店立地法となった。ここ数年、全国でイオングループをはじめ大型店出店がさらに激化、不況で苦しむ各地の商店街は存亡の危機にある。商店街と地域社会を守るには国民各層の連携した取り組みが求められる。各地の中小商業者の現状を聞いた。(文責編集部) 

苫小牧市商店街振興組合連合会理事長 鎌田國孝
茨城県水戸市内の商店街関係者
倉敷商店街振興連盟会長 西山敬二
宮崎県・宮崎市商店街振興組合連合会理事長 宮下広計


市議会でジャスコ出店反対の請願を採択

苫小牧市商店街振興組合連合会理事長 鎌田 國孝

 ジャスコを核店舗とするイオンのショッピングセンター(SC)出店の動きを知ったのは昨年二月。苫小牧の中心街から約四キロの王子製紙の十四・五万平米の土地をイオンが借りてSCにするという計画です。店舗面積は四万平米、年間売上予想が二百億円。すでにある長崎屋、イトーヨーカ堂、ダイエーを合わせたくらいの店舗面積です。
 自動車と燃料を除く、苫小牧の小売商の売上高は約千五百億円ですから、ジャスコが二百億円売上げれば、一四%になります。大変な打撃です。
 札幌から苫小牧まで特急で四十三分、その間に千歳があります。苫小牧の人口は十七万三千人で、商業人口が十八万五千人。ところが、イオンは、室蘭や千歳も入れて、商圏は五十万人と計算している。「過剰な売場面積ではない。新陳代謝だ。負ければつぶれていく」という、地元を無視した大型店共通の理屈です。
 もし計画通り出店が決まれば、地元商店街はもちろん、既存の大型店も含めて大変な影響が出ます。商業者だけの問題ではなく、「まちが壊れる」という立場で出店反対に取り組んでいます。
 市内にある二十二の商店街組織が一致して、市議会に「ジャスコ出店反対の陳情」を出しました。そして昨年九月二十五日の市議会の文教経済委員会、翌二十六日の市議会本会議で、出店反対の陳情書が賛成多数で採択されました。
 市長はジャスコ出店について「いろんな人の意見を聞いて」とか「法律(大店立地法)上、出店は止められない」という態度でした。商工会議所は商業部会や食品飲食部会は反対ですが、商工会議所会頭は王子製紙の関連会社の会長で、建築部会や工業部会の意向もあり、商工会議所としては反対していない。そういう状況の中で、市議会の採択がインパクトがあり、市長は「売場が四万平米は広すぎる。せめて二万平米に」と発言しています。やっとここまできました。イオン側は来年春にオープン予定で、十二月はじめに売場面積を示す予定でした。まだ提示がないので現在は少し静観しています。
 また王子のサービスセンターを買収してイオングループが「マックスバリュ」を五店舗展開したため、地元の生鮮食料店も近くの既存のコンビニもやめてしまい、生鮮の買い物ができない地域が広がりました。苫小牧市民の五人に一人は六十五歳以上で、さらに高齢化が進みます。大型店は、車を持っていないお年寄りにとっては不便です。
 北海道内の各地で大型店が問題になっています。とくに釧路では、一昨年にイオングループが店舗面積三万五千平米でオープンし、市内の商店街は二、三年で三百店舗ぐらい減ったと聞いています。
 大店法時代、私は商調協(商業活動調整協議会)の委員を長くやっていました。今は北海道商店街振興組合連合会の副理事長ですが、ずっと大型店のことばかり、本当にやるせないです。
 二〇〇〇年に大店法が廃止され、大店立地法になったため大型店の出店がほとんど規制できなくなりました。自民党の武藤嘉文先生に規制を強化してほしいと要望しています。大店法がなくなった中で、各自治体がマスタープランをつくり、まちづくりの観点から特別用途制限地域を設定して大型店の出店を規制できないかと昨年春頃から取り組みを始めました。金沢市や京都市では、まちづくり条例をつくって一定の効果を上げています。まちづくり条例や特別用途制限地域を市に要請していますが、市長はやる気がない。苫小牧市の大口納税者である王子製紙の土地に網をかけることはできないという態度です。市からは効果的な中心市街地の活性化策は出てきません。


国内最大規模の水戸メガモール計画

茨城県水戸市

 茨城県の県都である水戸市に国内最大クラスの商業施設「水戸メガモール」の計画が明らかになったのは昨年二月頃。
 総合商社の日商岩井と市内の不動産会社が進めている計画。日商岩井が全国十カ所に計画している大型ショッピングセンター計画の一つで、三十一万平米の土地にスーパーや十スクリーンの映画館を核に、二百店の専門店、ホームセンターや家電などの大型専門店、パチンコ店も含めた娯楽施設、七千台をこえる駐車場。店舗面積七万四千平米で、商圏人口は県人口の三分の一の百万人、年間売上高は三百億円という。店舗面積七万四千平米は、市内の小売店舗総面積(大型店・百貨店を除く)の約四五%に匹敵する。
 「中小商店の五百店が閉店に追い込まれる」「中心商店街が衰退したら交通網や病院など社会基盤の沈下を招く。商店街だけの問題ではない」と市内三十五の商店会が加盟する水戸商店会連合会は昨年七月末から署名運動を開始、昨年八月下旬に約七千人の署名を添えて反対請願を市議会に提出した。十二月には八千五百人分の反対の追加署名を市長に提出。市議会の特別委員会で審議中。
  ◇  ◇  ◇  ◇

市内の商店街関係者の話

 すでに水戸周辺に大型店がひしめき合っている。来年も三、四店が出店予定だ。人口二十五万人の水戸にお化けのような水戸メガモールをつくって成功するとは思えない。
 メガモールが出店すれば水戸市はまちとして成り立たなくなる。大型店同士のつぶし合いの中で、地元商店街もつぶれていく。極端に言えば終戦後の焼け野原と同じだ。空洞化で、お化け屋敷があちこちにできる、そういう町になる。
 出店予定地は、昔の水戸市の水源地。農地法にも引っかかる。十五年以上前から開発がストップしたままの商業施設がつくれない市街化調整区域だ。商店街だけでなく、まちがどうなるのかという問題だが、地元商業者の声がなかなか届かない。


すさまじいイオン出店の影響

倉敷商店街振興連盟会長 西山 敬二

 倉敷にイオン(ジャスコ)が巨大なショッピングセンター(SC)を開店したのは一九九九年九月。中心市街地から約四キロ離れたクラレ(倉敷レーヨン)工場跡地の十三万平米の敷地に、店舗面積六万一千平米、四千台の駐車場。ジャスコが核店舗で、百三十の専門店、映画館八館などからなるイオン倉敷SCができました。
 計画発表はそれより二〜三年前で、まだ大店法の時代です。商調協(商業活動調整協議会)で審議されましたが、商工会議所の会頭がクラレですから、店舗面積もほとんど削減もなく結審し、出店が決定。私は当時、商店街の役員をやっていませんでしたが、商業者が放ったらかしにされた形です。
 倉敷駅前の中心街の商店街には三越、天満屋、ダイエーの大型店がありましたが、ダイエーが二〇〇二年に閉店。不況で苦しむ商店街にとって、イオン開店の影響はすさまじく、瞬間的には空店舗率が三〇数%になりました。現在は、二二〜二三%くらい、とくに中心街から少し外れたところでは空店舗が多い。
 イオンの年間売上高は初年度から三百三十億円、最近は三百五十億円くらいになっている。倉敷市の人口は四十四万人ですが、四十年前に合併した関係で商圏が分断され、旧倉敷市の商圏は十七〜十八万人。そこでイオンだけで年間三百億円以上、常識では考えられません。百三十店のテナントが入っていますが、地元からはほとんど入っていません。イオン倉敷SCには映画館が八館あり、倉敷市内にあった映画館はほとんど閉店しました。隣の岡山市内の映画館も影響を受けています。
 二〇〇〇年六月に大店法から大店立地法になり、大型店がより自由に出店できるようになりました。私はイオンが出店して影響が出はじめた二〇〇〇年から商店街役員を始めましたので大変でした。都市計画を専行している人や「倉敷の街を何とかしたい」と協力してくれる人がいて、「花七夕祭」など街に人を呼ぶ取り組みをやっています。
 ヨーロッパでは百年単位のまちづくりに基づいたマスタープランがあって都市計画を進めていますが、日本にはそうした長期的な都市計画がない。だから行政が経済原則だけで大型店出店に対応し、平気で工業地や農業地を商業地に転用していく。
 出店時には、大型店も行政側も「いい話」しかしません。彼らの理屈には共通性があり、これに対抗する論法を商店街の側が持つべきです。
 一つは「大型店出店が雇用拡大になる」です。行政側は市民向けには「雇用が二千人増えた」などといいます。しかし三時間程度のパートの人を一人として計算しているだけで、見せかけの雇用拡大です。しかもイオン出店でどれほどの商店街がつぶれ、失業したかには触れようとはしません。追及すべきです。
 もう一つは、「イオン出店で市の税収(とくに固定資産税)が増える」です。中心商店街は地価が高く、固定資産税の評価が高い。一方、イオンなどの大型店は郊外の工業跡地や農地ですから、固定資産税の評価は低い。イオン出店後、中心市街地の地価は三年連続二〇%以上の下落です。「イオン出店で増えた分と中心市街地で減った分を計算したことがあるのか」と追及したら行政側は何も言えなかった。
 また大型店は出店時に道路整備など大型店に有利な都市計画を要求します。ゆめタウン高松SCは、無料バス運行をやらせました。これらは市の財政負担です。さらに地元商店の売り上げは地元に還元されますが、大型店の売り上げは本社に送られ、新規出店の投資に使われます。
 倉敷ではダイエーが閉店、地場の食品店もどんどん倒産して、お年寄りの日常的な買い物に支障が出ています。また電器屋さんや金物店などもなくなっているので、釘や金槌を買うのにタクシーで郊外の大型店に出かけるという事態になっています。高齢化が進む中で、まちづくりどころか、まちの破壊です。大型店ばかりが栄えれば、地域の文化の多様性はなくなり、日本中が同じまちになってしまいます。そんなところに文化など育ちません。
 大店法の廃止など、アメリカ流の規制緩和を進めてきた政府の無策が露呈しています。政治も長期不況で大変なのに、緊縮財政で多くの国民には増税、負担増だけです。農家や商業者を基盤にしてきた自民党の基盤は大きく揺らいでいます。
 大店法がなくなったいま、大型店出店の歯止めに役立つのは、まちづくり条例くらいではないか。いまの状況では日本の文化、生活が破壊されてしまう。地元の市民にとって暮らしやすい、地域の文化を大事にするまちづくりを実現するには商業者だけでは不可能です。まちづくりを一緒に考え、行動してくれる市民と一緒に活動することが大事です。



まちを破壊するイオン出店は許せない

宮崎県・宮崎市商店街振興組合連合会理事長  宮下 広計

 宮崎市では、イオン宮崎ショッピングセンター(SC)出店問題が大きな問題となっている。イオンの計画によると、中心部から車で十分足らずの場所に、二十二万平米の敷地、七万平米の店舗面積、商圏人口は五十万人(宮崎市の人口三十万人)で年間売上高は三百億円という。
 進出する土地は、市街化調整区域内の農地であり、都市計画法などにも違反している。しかも土地賃貸料は中心市街地と比べて四十倍も安く、価格競争という面でも違いすぎる。出店されれば、宮崎市の中心街は崩壊し、空洞化する。地元商店街との共存共栄は不可能です。市内の商店街団体は出店反対運動に取り組んでいます。また周辺十三市町村もそれぞれの地元商店街の活性化に悪影響があると反対を表明しいる。戦後焼け野原から五十八年かけてできた宮崎の町が、また廃墟になるのは国家的にも損だし、地方の文化的や社会資本の破壊にもつながる。
 イオン宮崎SCの出店が表面化したとき宮崎市の津村市長は、「宮崎山形屋の二号館増床」と「寿屋宮崎店の再開」が実現すればイオン出店を認めないと発言していた。二〇〇二年の七月の市議会で「寿屋の再開のメドが立たない」と判断し、イオンの出店を容認しました。実際は、寿屋は再開した。寿屋にテナントを出店していた経営者が「市長の発言で寿屋の再開が遅れ従業員の人件費を無駄に支払った」と市長と市を相手に損害賠償の訴訟を起こしました。訴訟では「都市計画マスタープランの見直し、市街化調整区域への出店計画など、イオン宮崎SCの容認自体が違法」という姿勢で取り組んでいます。
 大店法がなくなった背景には、アメリカからの規制緩和の圧力がありました。大型SCがたくさんあるアメリカでも、人口五万、十万の都市では、騒音や排気ガスなどで環境が破壊されると訴訟を起こし、州によっては勝っています。イギリスは郊外店を認めていないし、ドイツは町で売っているものは大型店では売らせないという法律があります。ヨーロッパでは地元の商業者だけでなく、街並みや地域の特色、文化を守っている。アメリカ流は、地域をこわしてしまう。
 イオンを中心に九州各地でも大型店出店の動きが活発化しています。熊本、鹿児島でも申請が出ています。すでに佐賀市ではイオン大和(店舗面積三万七千平米)と世界最大の米ウォールマートの傘下に入った西友を核店舗とする「モラージュ佐賀」(店舗面積三万七千平米)出店などで、地元商店街は完全にダメになりました。イオンは大分にも出ています。宮崎では日向市や延岡市が完全にダメになり、都城市も大変です。中心の宮崎市がダメになったら、宮崎県はイオンの町になってしまう。
 中心市街地活性化法ができたが、実際はなかなか容易ではない。大型店出店で地元商店街は破壊され、メインストリートも衰退する。まちが破壊されます。宮崎市は観光都市ですから、ゴーストタウンのような中心街になったら大きな損失です。宮崎のまちづくりの立場からも、市長はイオン出店容認を撤回すべきです。