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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2003年10月号

米国追随は破滅の道

自衛隊をイラクへ派兵させてはならない

月刊『日本の進路』編集長 川崎正


米英が自国の利害から始めたイラク戦争。
戦闘はやまず、国連の現地本部も爆破された。
米英占領軍はイラク人を殺し続け、
米英占領軍の死者は増え続けている。
5月41人、6月34人、8月43人、9月31人、10月は?
困ったブッシュは、自衛隊を出せ、金を出せ、
占領軍の片棒を担げと迫る。
アメリカの言いなりの小泉首相は、金も人も出すという。


挫折した米国のイラク・中東支配

 軍事力による世界一極支配をめざして打ち出されたブッシュ・ドクトリンの発表から一年たった。最初の発動であったイラク侵略戦争から半年、誰の目にもその破たんが明白となった。
 世界中の声を無視してイラク侵略戦争に突入・フセイン政権を打倒したブッシュは、五月一日に大規模戦闘終結宣言をした。しかし、イラク国民の米英軍に対する反撃は収まらず、終結宣言後の米兵の死者は百七十六人(九月三十日現在)で、それ以前の百三十九人を上回り増え続けている。国連事務所やシーア派モスクへの攻撃も起きるなど、治安はますます悪化し、米英軍によるイラク占領政策は泥沼化している。
 さらにイスラエルのシャロン政権のパレスチナに対する軍事行動でオスロ合意以降の中東和平は破たんした。それを建て直そうとした米国主導の中東和平計画(ロードマップ)も完全に破たんした。
 ブッシュ政権は四月、イラク戦争の総コストは多くても八百億ドル程度と議会に説明していた。ところが九月七日に大統領が提示した新予算を加えると当初の二倍の約千五百億ドル、わずか五カ月で出口も見えない状況に追い込まれた。
 暗礁に乗り上げたイラク占領政策によって米国経済は深刻さを増している。一九九八年から二〇〇一年まで黒字だった国家財政は、アフガン戦争やイラク戦争で戦費がかさみ、二〇〇二年から赤字に転落した。来年度の財政赤字は五千三百億ドルとなり、GDP比は過去最悪の四・七%に達する。一方、海外とのモノやサービスの取引の収支である経常収支は今年、赤字が五千億ドルを突破し、GDP比も五%を突破する見通し。今後も双子の赤字(財政赤字と経常赤字)が拡大すれば、海外からの米国への資金流入がさらに減少し、米国経済をさらに悪化させ、ドル暴落・恐慌の恐れさえある。
 イラクに展開する十四万人の米軍の戦費は膨らみ、増え続ける米兵の戦死者。米国内でブッシュ政権への批判が高まっている。同時テロ直後に八二%あったブッシュ政権への支持は四五%まで落ち込んだ。
 行きづまったブッシュ政権は一国主義を忘れたかのように、国連に軍事・資金両面で協力を求める新たな決議案を安保理理事国に提示した。その内容は、米軍の指揮権は維持したままで国連のお墨付きによる多国籍軍と推定五百五十億ドルの資金負担を求めるという身勝手なもの。
 一方、この米国決議案に仏独、ロシアはそれぞれ修正案を提出した。米英の統治権限を縮小し国連主導にすること、石油管理も含めて早期に統治権限をイラク国民に委譲することなど、イラク復興での米国の主導権を弱めることをねらっている。
 一極支配をめざす米国と、多極化をめざす仏独など欧州との対立はイラク戦争で表面化し、イラク復興をめぐって一層激しくなっている。
 各国の反対を押し切ってイラクを侵略し、イラク人民を塗炭の苦しみに陥れたのはブッシュ政権である。最大の口実にあげていた大量破壊兵器は未だに見つからない。米国一国でうまくいかなくなると一転して世界に軍隊も財政負担も求める。こんな身勝手な要求が世界に支持されるわけはなく、米国の新決議案は採択される展望はない。

金を出せ、派兵しろと迫る米国

 五月の日米首脳会談で、イラクへの自衛隊派兵を約束した小泉首相はイラク特措法を強行可決。派兵される自衛隊員と家族の不安に対し、「非戦闘地域がどこか分からない」「自衛隊員が殺されるか、相手を殺すかは否定できない」と開き直っている。
 自衛隊のイラク早期派兵に動揺する日本閣僚に対して八月二十二日、アーミテージ米国務省副長官は有馬特使との会談で「逃げるな、(イラク復興は)茶会ではない」と早期派兵を強く要求した。
 そして総選挙の最中の十月中旬にブッシュ訪日が決まった。十月二十三日からスペインのマドリードで開催されるイラク復興支援国会議に備え、日本に自衛隊派兵と資金援助を迫ることは明白だ。
 米政府はイラク復興費用を今後三年間で五百億〜七百五十億ドルと試算し、米国自身の負担は二百億ドルとしている。残り、三百億〜五百五十億ドルをEUや日本などに求める方針。仏独などは反発を強めており、米国に追随する日本に膨大な戦費負担が要請されることは間違いない。小泉政権は「それ相応の負担をする」と応えている。財政危機を口実に国民各層に塗炭の苦しみを強いておきながら、米国の戦費負担は差し出すという。百四十億ドルの戦費をむしり取られた湾岸戦争の屈辱の二の舞である。許しがたい。
 自衛隊の海外派兵は明白な憲法違反である。それだけでなく、米国のための戦争に、自衛隊員とイラク国民の命を犠牲にするものである。
 元防衛庁教育訓練局長の小池清彦氏(新潟県加茂市長)は「自衛隊員はゲリラ戦の行われている戦場に行くために入隊していません。私は市長として毎年、地元の新入隊員の激励会に参加しています。…激励した人たちの中から海外に派遣され、命を落とす隊員が出たら、その遺族にどう言えばいいのでしょう」と公然と反対している。イラクへの自衛隊派遣には保守政治家も含めて広く反対の声がある。
 米国のために金も人も差し出せば日本の国益が守れるのか。米国はイランの「核開発疑惑」を口実に日本のイラン油田開発をやめるよう要求した。米国の言いなりになった結果、日本経済の生命線であるエネルギー政策も自由にならないではないか。
 イラク占領政策の破たんは米国経済の危機を深め、一極支配をめざす米国の衰退は一段と加速するだろう。
 九月二十七日には英国を中心にイラク占領抗議集会が開かれた。十月二十五日には米国の市民団体連絡組織(ANSWER)など数千の団体が呼びかける「米兵の撤退、イラク占領反対」を求める大規模な行動が予定されている。
 米国に追随し、中東やアジア諸国に敵対し孤立する小泉政権は、デフレ経済下であえぐ国民各層の生活を一層悪化させ、日本を破滅の道に導くものである。国民各層は団結して、ブッシュ政権とそれに追随する小泉政権を打ち破ろう。自衛隊派兵と財政負担を阻止しよう。