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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2003年9月号

原子力空母の横須賀母港化は許さない

神奈川平和運動センター事務局長 加藤泉


 戦後「基地の縮小撤去、全面返還」の闘いを取り組んできた先輩たちの運動を平和運動センターとして引き継ぎ、さらに発展させるために奮闘しています。神奈川の基地問題の課題は、横須賀基地の問題、厚木基地の爆音問題、それに最近再浮上した池子の住宅増設問題があります。

空母の母港化から三十年

 横須賀基地は、歴史的にいえば空母エンタープライズや原子力潜水艦の入港、トマホークの配備など、ベトナム戦争など米国の戦争に直結した動きがありました。それに対して、現地での全国的な大集会や県内を中心とした座り込みも取り組みました。市長選と重なったときには政治課題として横須賀の労働者を中心に市長選を戦ったこともありました。
 米空母ミッドウェイが横須賀を母港にしたのは一九七三年です。二、三年という約束は裏切られ母港化が強行。ミッドウェイからインディペンデンス、そしてキティホークに引き継がれ、今年八月で三十年を迎えました。キティホークは今回のイラク戦争にも参加しています。八月十一日には三十回目の抗議集会を三千人の参加で行いました。
 このままの状態が続くと、二〇〇八年には通常動力で動く空母がなくなり、米軍は原子力空母の母港化を計画しています。一月には一部報道機関が「日米両国が原子力空母の母港化に同意した」と報道しました。それを裏付けるように今、横須賀基地では原子力空母が接岸できるように埠頭(十二号バース)の延長工事が着手されようとしています。
 原子力空母問題を考える市民の会が中心となって、横須賀市に「埠頭の延長工事を認めないでほしい、母港化を認めないでほしい」と求める署名を十万人分集め提出しました。しかし沢田・横須賀市長は「日米政府から正式に話がない」と、原子力空母の母港化には態度を明確にしないまま、延長工事を認めようとしています。
 横須賀基地を原子力空母が母港にすれば、まさに「東京湾に原発」です。通常動力なら入港すればエンジンを止めますが、原子力エンジンは決して停止しません。つまり三十万キロワットの原発が首都圏ののど元にできるわけです。基地の機能強化だけでなく、横須賀市民をはじめ首都圏の人たちが原子力事故や放射能汚染などの不安を抱えることになります。また神奈川、横須賀の経済的なイメージダウンにもつながるだろうと思います。
 市民、県民がこぞって反対の声を大きく盛り上げて、原子力空母の母港化は何としても阻止したい。そのために私ども神奈川平和運動センター、首都圏の平和運動センターの連絡組織、全国基地問題ネットワーク(米軍や自衛隊の基地を抱えている平和運動センター)などを核にして、個人、政治家、市民運動団体、経済界などに呼びかけ、原子力空母に反対する広範な国民運動をつくっていきたい。全国的な運動体を来年の春闘後につくりたいと考え、準備を進めているところです。原水禁世界大会など各地で、そういう呼びかけを行っています。

 米軍池子住宅の増設問題

 住宅地の中にある厚木基地は、横須賀基地と密接な関係があります。米空母艦載機による離発着による爆音は周辺住民を長い間苦しめ、何度も米軍機の墜落事故が起こっています。現在、「静かな空を返せ」と第三次の爆音訴訟が闘われています。
 さらに今回、米軍池子住宅(逗子市、一部横浜市)の増設問題が大きな問題になっています。今年二月に行われた日米会合で、老朽化した米軍根岸住宅(約四百戸)の移設問題が議題になり、米側は根岸住宅の四百戸分だけでなく、さらに四百戸の住宅を要求。そして「合計八百戸の米軍住宅を米軍池子住宅の横浜市域に建設する」「これが実現すれば、根岸住宅地域、遊休化している上瀬谷通信施設、深谷通信施設、富岡倉庫地区の返還を米側が考慮する」という合意内容が発表されました。
 防衛施設庁の言い分はペテンであり、だまし討ちです。安保条約に基づく地位協定では、遊休化している施設(上瀬谷、深谷、富岡)は無条件で即時返還するのが当然です。また、根岸住宅の四百戸だけでなく、合計八百戸の米軍住宅を提供するという論理も許せません。
 さらに問題なのは米軍池子住宅地区に建設するということです。弾薬庫だった池子地区に米軍住宅の建設が発表されたのは一九八三年。それ以来、市長選や市議選がくり返され、逗子市民を巻き込んだ混乱が十年以上続きました。市民の反対を押し切り建設が強行されたとき、国、逗子市、神奈川県の三者合意には「米軍住宅の追加建設はない」と明記されています。そして米軍池子住宅には現在、八百三十戸、約三千人の米兵と家族が住んでいます。
今回の米軍住宅増設計画に、逗子市では市長、市議会、市民あげて反対です。ところが「横浜市域だから三者合意は関係ない。逗子市には関係ない」というのが防衛施設庁の理屈です。たとえ地図上は横浜市域であっても、政府の資料や当時の発言をみても「池子の森」は一体のものです。逗子市民の苦痛や市民感情を無視し、踏みにじる計画であり許せません。
 米軍住宅増設は、横須賀基地の十二号バースの延長工事と同様に原子力空母の横須賀母港化に向けた準備です。そういう意味で、逗子市民だけでなく県民あげて阻止しなければなりません。
 この問題での神奈川県と横浜市の態度はあいまいです。二十年来の逗子市民の苦痛や市民感情を考えれば、神奈川県や横浜市は反対の態度を明確に打ち出すべきです。
 私たちはすでに、地元地区労などと一緒に県と横浜市と逗子市に対して、米軍住宅増設反対を申し入れています。近々、防衛施設庁にも出向いて直接県民の声を伝えたい。県内の自治体議員の方々も米軍住宅増設反対の行動を展開されています。
 なによりも、バースの延長工事も、池子の住宅建設も国民の税金である「思いやり予算」です。これほど国家財政が大変だといわれているのに、とんでもない話です。これ以上、神奈川の基地が米国の戦争に使われるのは許せません。原子力空母母港化反対、米軍池子住宅増設反対、基地の縮小撤去のため全力をあげたい。      (文責編集部)