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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2003年8月号

書評 

『帝国以後―アメリカ・システムの崩壊』

広範な国民連合常任世話人 竹田四郎


 ブッシュ米大統領が戦闘終結宣言を出して二カ月経ったのに、イラクはゲリラ戦の様相で、米兵の死傷が増えている。アメリカは本当に強いのか? 多くの疑問が出されている。フランスは国連安保理で激しく米国と対立した。シラク大統領やドピルパン仏外相は米国をどう見ていたのか。人口学者エマニュエル・トッド著『帝国以後』を読むと謎がとける。
 彼はアテネ、ローマの盛衰を人口学の切り口で分析し、それを米国に適用している。「第二次大戦後の世界は米国を必要としていた。しかし今は世界は米国を必要とせず、米国が世界を必要としている」。
 かつて米国は世界の製造工場であったが、今は消費大国。双子の赤字で世界から資金流入がなければ米国はたちゆかない。米国の民主主義を求める国も少なくなった。外国人を米国民に融合する普遍主義も最近は民族差別をはじめ、国力の拡充に限界を迎えた。
 軍事力だけは突出し、最新兵器で装備されているが、陸軍は弱く、他国の応援を期待している。彼はこれを「演劇的小規模軍事行動主義」と皮肉っている。大国とは事を構えず二流国しか相手にしていない。
 日本国内では日米同盟だけが日本の未来のように言われているが、この著書は世界情勢を冷静に分析し、二十一世紀の世界、従って日米関係にも示唆を与えているように思う。一読をお奨めする。

『帝国以後』
エマニュエル・トッド著 石崎晴己訳
藤原書店 2500円+税

エマニュエル・トッド
 一九五一年生まれの気鋭の人口学者、人類学者で、ケンブリッジ大学で歴史学の博士号を取得。現在、フランス国立人口統計学研究所の研究員を務める傍ら、通称「シヤンス・ポ」で名高い政治学研究学院で講義を持っている。