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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2003年4月号

イラク戦争を憂うる

元防衛庁官房長 竹岡 勝美


 人類は二度の世界大戦で五千万人が殺された反省から国連を創設し、自衛と国連の武力行使以外の戦争は一切禁止した。今、米国を攻撃もしないし、テロ侵略もしていないイラクを、米国が、国連決議もないままに、一方的に三十万人、六個空母陣の大軍で侵略し、二千万人のイラク軍民を殺傷することは、如何なる理由があろうとも天人共に許さざる国連憲章違反の非行、悪行であることは三歳の童子でも理解しよう。
 何故、日本は如何に日米安保条約の情誼(じょうぎ)があろうとも、国連憲章に違背し、国連の権威を貶(おとし)め、国際ルールを蹂躙するのを止めぬのか。それが本当の友情であり、日本の子孫にも誇るべき正義ではないか。日本はそれほど米国の軍事力に頼らねば生きていけぬのか。
 日本が国連の権威を無視した米国のイラク侵略を同意し、支持するならば、日本の今後の国際外交はどうなるのか。しかも数十万人の国民が殺傷され、古代遺跡に富むイラク国土が破壊され、数百万人の難民が派生するというイラク国民や、これに同情するアラブ人達はもとより、仏、独、露、中国などは日本は米国の完全な従属国と見なすか、あるいはどのような反感を抱くであろうか。政府のその覚悟があるのであろうか。米国軍に壊滅されたイラク国民が米国を支持した日本の復興支援など誰が喜ぶか。派遣された自衛隊員が哀れではないか。
 米国はその違法な侵略をイラクの生物、化学兵器など大量破壊兵器を廃棄させることにあるという。では米国はこれらの兵器のほかに一万個の核弾頭を持っているではないか。イスラエル、インド、パキスタンの核兵器の保有は許しているではないか。この米国にイラクを責める大義があるのか。しかもイラクは国連に首を差し出しているではないか。穏当に国連の査察も受けているではないか。その査察に若干のトラブルがあったからとしても二千万人の国民国家を一方的に有無を言わさず大軍で侵略しなければならぬほどの科があるとでも言うのか。フセイン独裁政権転覆の有無はイラク国民が決めるべきで、米軍事力で強制されるものではない。
 私たちは今国連につくか米国につくか、人類の大義につくか、国利をとるか、子孫に恥じぬ判断を願いたい。国連決議なしの米国の一方的イラク侵略は絶対に国連憲章違反の無法である。政府はそれすらもわからぬのであろうか。私が間違っているのであろうか。ご教示を仰ぎたい。
 しかも米国はその戦費に二十余兆円を費消するという。復興費は予想すらつかぬ。人類の一大愚行か。