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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2003年3月号

WTO国際市民集会に1万人が結集

日本の食料と農業を守ろう


 東京で開かれていた世界貿易機関(WTO)の非公式閣僚会議が二月十六日に閉幕。関税の大幅削減を求める米国等と、環境や食料安全保障など貿易以外の関心事を重視する日本やEUの対立は埋まらなかった。これ以上の農産物の自由化は日本農業を壊滅させ、米国に日本の農業を売り渡すものである。この非公式閣僚会議に際して、農民、労働者、市民は連携して闘った。   (文責編集部)

 二月十五日、東京日比谷野外音楽堂で「WTO国際市民会議」が開かれ、JAなど農林漁業団体、フォーラム平和・人権・環境(以下、平和フォーラム)に参加する労働組合、消費者団体、海外農業団体など一万人が参加した。JAなど農業団体と平和フォーラムに参加する労働組合が大規模に連携した取り組みは画期的である。
 集会冒頭、梶井功・同集会実行委員会代表(東京農工大名誉教授)は「WTOルールは食料輸出国と輸入国にとって公平・公正でなければんらない」と呼びかけた。
 食料・農林漁業・環境フォーラムの服部信司幹事長は「カタールで合意した貿易以外の関心事項への配慮がないWTO農業交渉議長の一次案は是正されるべきだ」と指摘した。
 平和フォーラムの太田敏夫副代表は「アジアやアフリカの貧困や飢餓、環境破壊はWTOがもたらした。このままWTOが輸出国主導で進めば大変なことになる」と指摘。
 EU農協連合会、フランス農業連合会、カナダ農業生産者連盟の代表からは「輸入拡大論者の自由貿易圧力に屈してはならない」「自給率を維持するため農業保護は必要だ。各国の農業政策を破壊する一次案は組織的犯罪だ」などと訴えた。
 百人以上の農家が参加した韓国の代表が「韓国や日本など家族農業の崩壊につながる議長の一次案は絶対に受け入れられない」と呼びかけると会場から大きな歓声が上がった。
 インドネシア協同組合協議会の代表は「一九九七年の金融危機の時、IMF(国際通貨基金)の融資を受けるかわりに農産物の関税が下げられ国内農業が打撃を受けた」と指摘した。フィリピンやスリランカの代表は「飢餓や貧困が深刻になっている」と自由化を批判した。
 JA全中の宮田勇会長は「各国は自らが求める農業・食料政策を選ぶ権利がある」と米国など輸出国のごう慢さを批判した。
 集会後、参加者は数十台のトラクターを先頭にデモ行進を行い、「輸出国主導の貿易ルール反対」「横暴な米国提案に屈するな」「日本の食料と農業を守れ」などとシュプレヒコールを上げながら銀座の街を訪れた人々に訴えた。
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 二月十四日、JA全中など農林漁業七団体主催の「WTO交渉日本提案実現、全国農林漁業代表者集会」が東京日比谷公会堂で開かれ、農林漁業者、消費者代表、海外農業団体など二千五百人が参加した。宮田勇・JA全中会長は「農業交渉議長の第一次案が通れば、わが国農林漁業はさらなる危機に直面する。断じて認められない」と同案の撤回を求めた。主婦連合会の甲斐麗子副会長は、生産者と消費者の連帯を訴えた。集会では「一次案受け入れ拒否」を緊急決議し、参加者は横断幕やのぼりを手に国会に向けてデモ行進した。
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 二月十四日、平和フォーラムと全国農民組織連絡会議が主催する「輸出国主導のWTO交渉に反対する全国総決起集会が東京・憲政記念館で五百人の参加で開かれた(写真右下)。集会アピールは「際限のない自由化交渉では食料主権の確立、農業の多面的機能の尊重は不可能」と一次案の撤回を求めた。集会後、農水省や米国大使館などへWTO交渉に対する要請行動を行った。
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 二月十四日、NGO三十団体主催によるシンポジウム「命とくらしは売り物ではない!|WTOは誰のため?」が東京都内で開催され、農民や消費者、労働団体など三百人が参加した(写真左下)。WTO交渉で進んでいる農業、医薬品、遺伝子組み換えなどについて、問題提起が行われた。反グローバリズム運動に取り組むタイのウォルデン・ベロー氏は「WTOによる農産物の自由化促進は不平等の最たるものだ。米国などの大国は補助金を使って自国の農業を守りながら、途上国に市場開放を迫る。食料を独占的に支配しようとする多国籍企業を保護するものだ」とダンピング輸出の問題を指摘した。
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 日本政府は、八五年のプラザ合意を契機に米国や大企業の要求に従って、農業の市場開放を強めた。八八年に牛肉・オレンジなど十二品目を自由化し、九三年にコメを部分開放した。その結果、日本の食料自給率は四〇%を割り、世界でも異常な低水準となった。米価の下落などで農業経営は崩壊寸前にある。
 今回の非公式閣僚会議で、大森農相は農産物関税の大幅引き下げ、ミニマムアクセス米拡大の一次案を「輸出入国問のバランスが欠けている」と批判してみせたが、川口農相は「一次案が次のステップの布石になった」と評価した。トヨタなど多国籍企業が農業の市場開放を要求しているからである。多国籍企業の利益を代弁する小泉政権・与党に頼れば九三年の二の舞となる。広範な国民各層の大衆行動こそが、日本の農業を守る確かな道である。