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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年8月号

アメリカ社会に強まる「善か悪か」の論理

明治大学教授 越智道雄

 (2002年7月14日、広範な国民連合・東京総会での記念講演要旨。文責編集部)


 あと一カ月足らずで、九・一一から一年が経過する。あの事件でブッシュ政権が息を吹き返し、やりたい放題です。逮捕状なしで拘束可能、裁判所の許可なしで盗聴可能、さらに外国人の無期限拘束も可能という内容の「USA愛国者法」があっという間に決まってしまった。「安全度が減ると自由度がへる」のだから、「じっと辛抱しろ」というのがブッシュ政権の一貫した姿勢です。
テロに対する政府の対応をアメリカ国民の七割以上が支持している状況がまだ続いている。チェイニー副大統領が石油会社会長時代の粉飾決算疑惑で極右の市民団体から告訴されましたが、ワシントンポストなどメディアがまったく反応しない。
 自由競争で強い者が勝つというのが共和党の長年の政策。一方、自由競争で勝ち残る者は少数であり、大多数の人びとの生活を成り立たせるために自由競争に対する規制が必要だというのが民主党の政策で、これがニューディール政策の概念です。
 ところが、選挙で鍵を握る中流層の意識が変化し、従来の民主党の政策では共和党に勝てなくなった。そこでクリントンは第三の道といって共和党の政策の横取りをはじめた。例えば、貧困家庭への補助制度(扶養児童所帯援助)をクリントン政権は廃止した。一方、共和党の現大統領ブッシュは「温情ある保守主義」を掲げ民主党の票田であったマイノリティの支持を獲得した。
 アメリカではベビーブーマーズ(日本の団塊世代)が高度管理社会に楯突きヒッピー革命を起こした。ニューレフト(新左翼)も登場した。でもちゃっかり大学に戻り、卒業して就職した。一九八〇年頃にはヤッピーと呼ばれた。ライフスタイルは自然派だが金持ち、これがヤッピーです。新しいエリート層になったこの人たちの支持を受けない限り、選挙に勝てない。こうした背景がある。
 もう一つの一九六〇年代の特徴は、労働組合が体制内化した。ところが昨今、組織率が下がり労働組合が体制から締め出されてきた。そこで一九九九年のWTOのシアトルで、アメリカ最大の労働組合AFLCIOと環境保護派が手を握ってデモの先頭に立ってたたかった。
 アメリカの多国籍企業は賃金の安い外国に出ていく。そこで環境破壊なども闘争のスローガンに掲げて、進出先の先の労働者との連帯も追求しはじめた。また世界銀行、IMFなどは、農業しか成り立たない国にアメリカの農産物を買わせてその国の農業を破壊するということを平気でやっている。それに対抗するには地球規模での連帯をつくるしかないという方向が出てきました。
 そのような中で、九・一一が発生し、それまでの流れが断絶した。
 ブッシュ政権は石油資本とのつながりが強い。ブッシュ家は石油閥であり、チェイニー副大統領は石油掘削会社を百三十数カ国に支店を展開。私企業の石油戦略と国家戦略が結びついていく。今度のアフガニスタンの戦争は九・一一がなくてもやる予定だった。アフガニスタンがルートに入った中央アジアのパイプライン計画があり、交渉が決裂したのでタリバン政権を倒すことになった。そこに九・一一が起こった。一カ月後に空爆をはじめたのは準備が整っていたからです。イラクに対しても、すでにCIAやグリーンベレーも入って準備を始めている。
 WTO、G8、世界銀行、IMF、多国籍企業などに対する監視、圧力機関としてのいろいろな戦術や戦略を生み出さなければならない。国際的な連帯を追求していく必要がある。日本の運動を考える上でも参考にすべきだと思います。