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有事法案を阻止しよう

 小泉内閣は四月十六日、「武力攻撃事態法案」「安全保障会議設置法改正案」「自衛隊法改正案」の有事法制三法案を閣議決定し、翌十七日に国会へ提出しました。
 これらの法案は、米国が起こす戦争に日本を引き込み、国民に戦争協力、動員を強制するためのものです。憲法の諸原則をふみにじり、アジアの緊張を高め、わが国と国民の安全をおびやかす危険な法律と言わざるをえません。
 私たちは、広範な国民各層が行動に立ち上がり、有事法案の成立を阻止するよう訴えます。

 米国のための戦争法案

 この有事法案は、他国からの武力攻撃だけでなく、「武力攻撃のおそれ」あるいは「武力攻撃が予測されるに至った事態」を「武力攻撃事態」と定義し、これに対処するために自衛隊の武力行使や部隊展開、米軍への協力を実施すると定めています。
 米ソ冷戦が終わった今日、一体どこの国がわが国を武力攻撃するというのでしょうか。そんな国はありません。それにもかかわらず、なぜ、政府はこの法案を提出したのでしょうか。
 今日、他国への武力攻撃を行う可能性がある国といえば、それは米国です。現に、ブッシュ政権は、アフガニスタンを武力攻撃して、タリバン政権を崩壊させました。次はイラクのフセイン政権転覆だと公言しています。イスラエルのシャロン政権による野蛮なパレスチナ自治区への武力侵攻を容認しました。朝鮮民主主義人民共和国を「悪の枢軸」と非難し、台湾海峡の緊張を激化させるような言動を行いました。アジアにおいて武力攻撃を想定し得るとすれば、最もありそうなことは米国が朝鮮半島や台湾海峡で引き起こす戦争です。
 米国がアジアで他国を武力攻撃すれば、政府は米国のアフガニスタン戦争でインド洋に自衛艦を出動させたように、周辺事態法に基づいて自衛隊を米軍の後方支援に出動させます。米国に攻撃された国は当然にも日本を敵国とみなすでしょう。そうなれば、政府は「武力攻撃が予測されるに至った事態」すなわち「武力攻撃事態」として、自衛隊に防衛出動命令を出すことができ、日本は戦争体制に入ることになります。
 事実、中谷防衛庁長官は「周辺事態のケースは、武力攻撃事態の一つ」と述べています。ブッシュ政権の対日政策を明らかにしたアーミテージ報告は、日本に「有事法の制定も含めて、新日米防衛協力指針の着実な実施」を要求しています。
 この有事法案が、米国がアジアで引き起こしかねない戦争に日本を引き込むための戦争法案であることは、明らかです。

 国民の自由と権利、生活の侵害

 「武力攻撃事態」が認定され、有事法案が発動するとどうなるでしょうか。
 首相が全権を握り、自衛隊の武力行使や部隊展開、米軍の軍事行動への協力、さらに警報発令、避難、被災者救助、生活物資の価格安定・配分などの「対処措置」を命令することができるようになります。
 政府機関はもちろん、地方自治体、独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、NHKなどの公共的機関、電気、ガス、輸送、通信などの公益事業を営む民間企業は、首相が命令する「対処措置」を実施しなければなりません。従わなければ、首相が強権的に実施することができます。
 「武力攻撃事態法案」には、国民はこれらの「対処措置」に「必要な協力をするよう努める」こと、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」に「制限が加えられる」ことが、明記されています。「自衛隊法改正案」には、物資の保管や収用を命じられた業者が命令に従わなければ、懲役または罰金刑を科すとしています。
 また、自衛隊は防衛出動の発令前であっても、民有地を通行し、陣地を作り、家屋を壊し、武器を使用することができます。
 有事法制によって、日本は米国の戦争に協力するために戦争体制がしかれ、国民の自由と権利、生活と経済は打撃を受けます。地方自治体は政府の強権によって、地方自治を侵害されます。有事法案は「戦争の放棄」を宣言した憲法への挑戦であり、憲法改悪への道を掃き清めるものです。

 アジアの共生を阻害

 かつて日本の軍靴にじゅうりんされた経験をもつ南北朝鮮や中国は、有事法制によって、日本に対する警戒心を強めるでしょう。有事法制はアジアの緊張を高め、アジアの共生を阻害し、日本の平和と繁栄にとって百害あって一利なしです。
 中谷防衛庁長官が四月十九日に有事法案を説明するため韓国を訪ねたのは、政府がアジア諸国の警戒心が高まることを承知していることの表れです。中国は小泉首相の靖国神社参拝もあり、訪中そのものを拒否しました。
 日本にとって必要なことは、有事法制を制定することではなく、近隣のアジア諸国との信頼関係を揺るぎないものとして築きあげることではないでしょうか。それこそが日本の平和と安全、国民経済の繁栄にとって決定的なことです。アジアの共生こそ、二十一世紀の日本にとって戦略的な最重要課題です。
 しかし、それは、日米安保条約にしばられ、対米従属を基本方針とする政府では不可能です。日本の前途に明るい展望を開くには、日米安保条約を終了させ、日本の進路をアジアの共生へ転換しなければなりません。

 有事法案阻止に立ち上がろう

 日本の前途に責任を負おうとする政治家ならば、与野党を問わず、この悪法を阻止するために力をつくすべきでしょう。事実、与党内にも有事法案に抵抗する動きがあります。自民党の野中・元幹事長は有事法案に慎重論をくりかえし、自民党総務会でただ一人態度を保留しました。公明党内でも慎重論がくすぶっています。公明党は、自らを支えてくれた選挙民に目を向け、与党席という目前の利益よりも日本の長期的利益のために、有事法案に反対すべきではないでしょうか。
 地方自治体にも有事法案に対する懸念の声があります。すでに、有事法案反対を決議した地方議会も出ています。地方自治体は、国の下部組織ではなく、住民の生活と権利を守る責任を負っています。首長も地方議会も、有事法案反対の見解や決議をあげるべきでしょう。
 事態を決定するのは、何よりも国民世論、国民の行動です。国民各層が自由と権利を守るために、生活と営業を守るために、子どもたちに平和な日本をのこすために、有事法案に反対の声をあげ、行動しようではありませんか。特に労働組合、とりわけ最大のナショナル・センターである連合が、有事法案反対の態度を明確にし、国民各層の先頭に立って行動に立ち上がるよう訴えます。
 私たちは国民各層のみなさんと共に、有事法案を阻止するため、国民世論の形成、広範な国民各層の連携した運動の発展に力をつくします。

 二〇〇二年四月

      広範な国民連合代表世話人
       大槻 勲子  福地 曠昭
       伏見 康治  槙枝 元文
       武者小路公秀 本島  等