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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2001年11月号

テロ事件の背景、米国の報復戦争、日本の進路を考える

広範な国民連合、東京、愛知で講演・討論会


東京で講演と討論会

 十月二十六日、午後六時より、東京総評会館にて、「米国の報復戦争と日本の対応―同時多発テロ事件の背景―」と題して、講演と討論集会が開催されました(写真上)。主催は広範な国民連合・東京と二十一世紀政策構想フォーラム。
 進藤栄一氏(筑波大学教授=国際政治、日米関係)、藤田進氏(東京外国語大学教授=中東、イスラム世界)、吉田康彦氏(大阪経済法科大学教授=国際関係論、元国連主任広報官)の三氏の講演の後、参加者からの意見、質問を含め、討論が行われました。
三氏の講演で印象に残った話を紹介します。
 進藤氏は「事件のニュースを聞いた時、これは底辺からの反逆だな、と思った。同時に動物的な感覚として『やったなー』という声をあげた。私だけではなく、友人の学者も『進藤さん、これは当然だよ』と言っていました。グローバル化の中での大国のパワーゲーム、巨象が暴れ回れば、草は死んでしまう。イスラム世界は平和に脅かされ、また貧困の中で悲しみと絶望的な日々を送っている。この事が解決されない限り、テロを生む土壌をなくすことはできないのです。なのに日本は米国と同盟を組んで何ができるのですか。日本はアフガンへの人道支援をすればいいのです」と述べた。
 藤田氏は、「千三百年前からエルサレムには三つの宗教の聖地があり、その周辺にはそれぞれの宗教の人々が居住地をつくり住んでいた。ユダヤ教徒もキリスト教徒もイスラム教徒も共存していた。このシステムが、ユダヤ人の国家ができあがったことによって、他の宗教の人々を限りなくどかして、殺し尽くすという危機が生まれた。それともう一つイスラム世界の危機は中東の石油資本とそれを支えている大国の支配。石油を売った富は産油国の実権を握る者が独占している。イスラムの人々は安価な労働力として使われ、また産油国への出稼ぎが強いられる。パレスチナ人だけでなくて他のイスラムの人々もこうして自分たちの生活を翻弄されてきた。これが現実です。今回の事件はこのような絶望的な中からのイスラムの人々のメッセージだと思う」と発言。
 吉田氏は、「ブッシュ大統領は、今回の同時多発テロを『米国に対する戦争』ととらえ、個別的自衛権の発動として反撃を開始した。テロの首謀者は国連の設置する国際法廷で裁くべきです。国際的に許されているのは、国際社会の総意としての制裁であって、報復ではない。二十一世紀は国家間の戦争はない。世界の平和を脅かすのは非国家の集団、グループ。集会参加のみなさんはテロ対策特措法や自衛隊派兵に反対する人が多いと思うが、私はそれくらいのおつきあいをしなければならないと思う。憲法で禁じているのは侵略戦争だから、今回のようなテロ行為に対する世界の共同行動への参加は憲法違反ではないのではないか」と発言。
 講演の後、満杯となった会場からもたくさんの意見が出され、集会の最後に航空連の諏訪氏から、テロにも反対だが、報復戦争にも反対、また自衛隊派兵で航空関連に働く仲間たちが生命の危機にさらされることから米国や日本の政府に抗議をしているとの活動報告が紹介されるなど、熱心かつ真剣な討論集会となりました。(広範な国民連合・東京)

愛知で学習討論会

 十月二十四日、同時テロへの「報復戦争」と称して、米国によるアフガンへの空爆が強化される中、学習講演会「アメリカの一方的外交を考える―報復戦争協力は日本をどこに導くか?」が名古屋市内で開かれました(写真下)。この集会は米国がなぜ「テロ」の標的とされるのか、事件の本質は何なのかを学び、その上で私たちが何をなすべきかを議論し、運動につなげようと広範な国民連合・愛知が呼びかけたもので、平日にもかかわらず多くの市民、労働者、学生が参加しました。
 第一部の講演では、中部大学教授で広範な国民連合代表世話人でもある武者小路公秀氏が「同時多発テロ」の背景を分かりやすく説明されました。武者小路氏ははじめに、同時テロ直前にあったダーバンでの世界人権差別撤廃会議で、会議を途中でボイコットした米国とイスラエル、最後までパレスチナへの謝罪を拒否したヨーロッパ諸国を紹介した上で、欧米など経済先進国中心の市場グローバル化が南北問題をさらに深刻にしていることを話されました。そして情報を管理して監視を強め、「民主主義」の名のもとで、富む者と富まざる者との格差が益々広がり、抵抗するものは容赦なく処罰される世界が北のタカ派覇権同盟によって作られており、これに対抗するのが「テロ」を起こした反覇権同盟であると指摘されました。さらに、テロの実行犯らを魚に例えて、「米国が小魚を食べても次々と後から別の魚が出てくる、米国は水のことを考えておらず、このままでは勝ち目はない泥沼に巻き込まれるだけだ」と米国の世界戦略を厳しく批判されました。最後に広範な国民連合は今後はアジア、アフリカ、ラテンアメリカとも開かれた運動であるべきだと結ばれました。
 第二部の討論では、名古屋周辺での運動の紹介、自衛隊による戦争協力を止めさせるための日本政府への働きかけ、ペシャワール会を通じた難民支援の具体的取り組み、安保反対運動のような広範な国民運動ができない現状での運動スタイルなど、参加者から次々と活発な意見や質問、運動の提起がなされました。とりわけ若い学生からの発言は、今すぐ具体的な運動に取り組みたいという熱意あふれるもので出席者一同が感動しました。
 なお、広範な国民連合・愛知は米国によるアフガン空爆が開始された直後の十月九日に抗議声明を発表し、名古屋市内のアメリカ領事館に抗議に訪れました。(広範な国民連合・愛知)