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米同時多発テロ事件について―私たちの見解


 九月十一日、米国の経済、軍事の心臓部を直撃する同時多発テロが起こり、全世界に大きな衝撃を与えました。世界最強の軍事力を誇ってきた米国の威信は砕かれ、経済は深刻な打撃を受けてニューヨーク株式市場は一週間にわたって取引停止となりました。
 死者は六千人を超え、何万という人々がかけがえのない家族を失いました。愛する者を失った人々の悲しみはいかばかりか、想像するに余りあります。
 私たちはテロを憎み、その再発を防止し、テロの起こらない平和な世界を構築するため、あらゆる努力を払わなければなりません。そのためには、なぜこのようなテロが起こったのか、その要因を冷静に究明する必要があります。


 (1)
 米国政府はこれまで、リビア爆撃、パナマ侵攻、湾岸戦争、スーダンやアフガニスタンへのミサイル攻撃、イラク爆撃、ユーゴ爆撃などで、罪もない何万、何十万の一般市民の命を奪ってきました。パレスチナを占領しつづけるイスラエルを支援し、イスラエル軍によるパレスチナの人々の殺傷を黙認してきました。
 米国政府は、多国籍企業や金融資本のため、弱肉強食の市場原理主義、グローバル経済を世界におしつけてきました。その結果、一方では何億という人々が住む家もなく飢えと病気に苦しみ、他方では一握りの企業家が一国のGDPを上まわる巨額の富を得るという、途方もない貧富の格差を引き起こしてきました。一昨年のWTO(世界貿易機関)会議、今年のジェノバ・サミットでの激しいデモは、グローバル経済に対する怒りのあらわれです。
 特にブッシュ政権は米国の国益を優先して、地球温暖化防止の京都議定書から離脱し、ミサイル防衛計画を推進し、CTBT(包括的核実験禁止条約)の批准を放棄し、国連の世界人種差別撤廃会議をボイコットし、朝鮮半島で始まった民族和解の流れに横やりを入れました。
 このような米国の政策が、自らの命を犠牲にして絶望的なテロに突き進む人間を生み出したのではないでしょうか。


 (2)
 米国政府がなすべきことは、このような事件の根本的な原因が自国の政策にあることを反省し、貧困、差別、抑圧を生み出してきた政策を改めることを前提に、客観的な証拠によって事件を引き起こした犯罪者を特定し、国際刑事裁判所の公正な裁判にかけるのが道理ではないでしょうか。
 しかし、米国政府はそのような道をとらず、家族を失った人々の悲しみ、その悲しみへの共感を利用して、憎しみと愛国心をあおり、米国民を新たな報復戦争に動員しようとしています。明白な客観的証拠も示さぬままビンラディン氏とそのグループを犯人と決めつけ、アフガニスタンなどへの報復戦争を準備しています。在日米軍も戦争態勢へ動きだしました。
 他国への無法な武力攻撃は、問題の解決どころか、さらに多くの罪のない市民の命を奪い、いっそう多くの人々に米国への憎悪を植えつけ、新たなテロを呼び起こし、米国民にさらに大きな犠牲を負わせることになるのではないでしょうか。


 (3)
 日本は米国の友好国として、米国政府をいさめて報復戦争を思いとどまらせ、米国が根本的な解決に向かうよう促すべきではないでしょうか。
 しかし、小泉首相はブッシュ政権の報復戦争を全面的に支持し、全力をあげて支援・協力することを表明しました。そして、米国の報復戦争支援に自衛隊を派遣する法律を、臨時国会で成立させようとしています。防衛庁は新法成立を前提に、自衛隊の輸送艦、イージス艦、AWACS(空中警戒管制機)などの派遣を検討しています。さらに政府は在日米軍基地や国の重要施設がテロの対象になる恐れがあるとして、武装した自衛隊が警備できるよう、自衛隊法改正の準備を進めています。小泉首相は来年の通常国会に有事法案を提出する考えも明らかにしました。
 このようにして、今回の事件を契機に平和憲法をさらに空洞化し、自衛隊の海外派兵を可能にする国内体制を整えようとしているのです。その行き着く先は憲法改悪であり、戦争を発動できる国づくりです。日米安保は日本の安全を守るのではなく、米国の戦争に自衛隊を動員し、日本の軍事化を促進する役割をはたしています。在日米軍基地そのものがテロの対象として、日本の安全を脅かしています。
 日本が米国の報復戦争、他国の人々の殺りくに手を貸すなら、犠牲にされる人々の怒りと憎悪は日本にも向けられるでしょう。アジアの人々は、自衛隊の海外派兵を教科書問題・靖国神社問題と重ね合わせて、日本に不信と警戒心をつのらせるでしょう。


 (4)
 米国の報復戦争と日本の戦争協力を前にして、日本国民がなすべきことは明白です。
 米国の良心的な人々をはじめ平和を願う世界の人々と連帯して、米国の報復戦争に反対し、その中止を要求しましょう。
 さまざまな立場の違いを超えて手をつなぎ、日本の戦争協力に反対し、自衛隊海外派兵の新法制定、自衛隊法改正の中止を要求しましょう。
 日本の安全を脅かす在日米軍基地の撤去、日米安保条約の終了を要求し、アジアの共生へ日本の進路を転換しましょう。
 戦争やテロの根本原因を取り除くため、貧困、差別、抑圧を生み出してきた政策を根本的に改め、すべての人々が共生できる公正・平等な世界の実現に努力しましょう。
 世界の歴史はいま、米国の一極支配から多極化へ、転換点を迎えています。政治の面では、米国の一極支配に対する各国の反発が広がっているその時に、世界最強の軍事力も安全を保障できないことが明らかになり、米国の威信はうち砕かれました。報復戦争が泥沼化すれば、米国の威信はさらに低下し、世界政治における米国の発言力は後退せざるを得ないでしょう。経済の面では、世界最大の借金国でありながら好景気をおう歌する矛盾が限界に来ており、すでに景気減速が進んでいた米国経済に、今回の事件が追い打ちをかけました。報復戦争はベトナム戦争と同じように、米国経済にさらに大きな打撃を与えるでしょう。
 日本も深刻な不況の中で、日米安保体制にしがみつき、アジアの国々をないがしろにする政治を続ければ、衰退の道を歩むことになります。
 米国の報復戦争に反対し、日米安保条約を終了させ、すべての人々が共生できる公正・平等な世界を求める国民の運動こそが、歴史のすう勢にそって日本を衰退から救い、希望のもてる将来を切りひらくのではないでしょうか。


 二〇〇一年九月

                  自主・平和・民主のための広範な国民連合
                       代表世話人  大槻 勲子   福地 曠昭
                                伏見 康治   槙枝 元文
                                武者小路公秀 本島  等