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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2001年8月号

連続する米兵による事件

全国で沖縄と連帯し、米軍基地撤去の運動を


 六月末の女性暴行事件に続き、七月二十一日、またしても米兵による事件が連続して起こった。米軍と対米追随の小泉政権に対する沖縄県民の怒りは限界をこえている。沖縄に連帯し、事件の根源である米軍基地撤去・日米安保破棄の運動を発展させよう。(編集部)


神奈川 沖縄と連帯する集会

 七月十九日、「地位協定の抜本見直しと米軍基地縮小・撤去を求め、沖縄と連帯する神奈川集会」が横浜で開かれた(写真下)。
 この集会は、伊藤茂・前衆院議員、上原幸雄・川崎沖縄県人会事務局長、房野桂・国際婦人年連絡会、武田郁三郎・神奈川県議など、共同呼びかけによって開かれた。
 集会は、横浜YWCAの唐崎旬代氏の司会で始まり、岡崎洋・神奈川県知事や基地周辺の自治体などから多数のメッセージが紹介された。
 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会事務局長で、「うないネット・コザ」主宰の桑江テル子氏が、沖縄からのアピールを行った。
 会場から熱心な発言が続いた後、呼びかけ人で広範な国民連合・神奈川代表世話人の竹田四郎氏より、集会のまとめがあった。
 竹田氏は、「女性暴行事件の直後の日米首脳会談でも小泉首相は米国にきちんと発言していない。構造改革というなら小泉首相はまず沖縄の米軍基地の構造を改革すべきではないか。ミサイル防衛構想も含めて中国敵視政策をとるブッシュ政権の戦略によって、沖縄の基地も強化される可能性が強い。しかし、日本はアジアと共生する進路を選択すべきだ。アジアの共生を妨害する日米安保と米軍基地をなくすために今後も頑張ろう」と訴えた。
 最後に、米兵の女性暴行事件に抗議し、日米地位協定の抜本的見直しや米軍基地の縮小・撤去を求める集会決議が採択された。決議は日本政府、米国大使館、各党の県本部、県内の参院選候補者に届けられた。


桑江テル子氏の発言要旨

 今回の女性暴行事件を中心にして地位協定の問題や沖縄が置かれている問題を報告し、どうすれば解決するのか、根本的な解決の方向性について一緒に考えてみたい。
 問題点の第一は、身柄引き渡しに五日間もかかった日米地位協定十七条の問題です。容疑者がいて逮捕状が出されているのに、五日間も逮捕状が執行できない状態が続いた。これは日本の主権の問題ではないかと思います。
 第二は、容疑者の人権の問題です。アメリカ側は、日本の取り調べや裁判という日本のシステムでは容疑者の人権が守られないという不信感をもっている。
 第三は、産経新聞がコラムで「午前二時という時間まで、なぜ女性が遊び歩いていたのか」と書いた。まるで被害者が悪かったかのような論調で、加害者の罪への追及が弱まる。そういうことが起こり始めた。
 第四は、沖縄の新聞に対する批判です。「沖縄の新聞は感情むき出しで世論を煽っている」という論調が一部で言われています。日本の民主主義にとって憂慮すべき問題です。
 そもそも日米地位協定は、六〇年の国会を取り巻く国民運動の反対を押し切り、自民党が単独で新安保条約と一緒に強行採決したものです。国会の論議もなく、現在まで抜本的な見直しは一度もされていません。沖縄では、大田知事時代に具体的な見直し要求が出され、稲嶺知事も県民の声で十一項目の見直し要求を出しました。とくに三点申し上げたい。
 一つは起訴前の容疑者の身柄引き渡し問題です。同僚の米兵の目撃証言や証拠の指紋もあり、七月二日に逮捕状が出たのに、実際の逮捕は六日です。政府は本気でアメリカ政府と交渉しているのかと言いたい。
 九五年、北京での世界女性会議の直後に少女暴行事件が発生した。私たちは被害を受けた被害者に「二度とあなたのような事件が起こらないように頑張る」と励ましの手紙を書いた。そして懸命に運動をやってきた。今回起こった事件は、丸太ん棒で頭を叩かれたような衝撃でした。
 北谷町美浜という地域は、米軍基地の跡地に北谷町が街づくりを進めてやっと商店街ができ、海岸が開発され、雇用が生まれた。基地返還後の跡地利用のモデルとして位置づけていた。その美浜で事件が起こった。
 米兵による事件が連続していますので、新たな基地が計画されている名護市でも、子どもや女性たちが犠牲になるのであれば、産業振興なんていらない。やっぱり基地はいやだ、という声が広がっています。
 二番目は、基地内の環境汚染の問題です。基地内から油が流れ出し、燃えたこともある。また基地内の赤土が海に流れ込んで珊瑚礁が死滅状態になる。しかし、基地内の立ち入り調査ができない。さらに、たとえ基地が返還されてもPCB、ダイオキシン、鉛等どんな汚染でもアメリカ側には原状回復する義務がない。そう地位協定に明記してある。立ち入り調査権もなく、原状回復の義務もない。とんでもないことです。
 三番目は、米兵が公務外に起こした事件・事故については、日米政府の補償がまったくなく泣き寝入りです。日曜日、教会帰りの母子をひき殺した二十歳の女性兵士に賠償能力がなく大問題になりました。裁判後、日本政府が遺族にわずかの見舞金を渡しただけ。日本に駐留していること自体が公務であり、もし本人に負担能力がないなら、米軍なり日本政府が負担すべきです。
 地位協定の改定は、政府のやる気の問題です。米軍の駐留経費はすべてアメリカが負担すると明記してある地位協定に違反して、一九七八年から「思いやり予算」がはじまり、昨年は三千七百億円まで増えた。地位協定違反だから翌年には特別協定をつくった。つまり、政府のやる気の問題です。
 最後に、地位協定の改定は必要ですが、たとえ地位協定を改定しても、米軍による事件・事故等は基地がある限りなくなりません。五年後、十年後と段階的に米軍基地を整理・縮小、撤去させる方向性を打ち出すことです。日本国憲法と矛盾し軍事同盟である日米安保条約を廃棄しなければ、日本国民の本当の安心、平和はない。アジアや諸外国からの本当の信頼も得られません。
 五十年前、沖縄はトカゲのしっぽのように見捨てられ、米軍の占領下に置かれました。そういう政治はやめて、「小指の痛みは全身の痛み」を合い言葉にすべきです。子や孫の代に平和を手渡せることのできる誇りと自信のある日本を実現できるよう努力をしたいと思います。


東京 150人が米大使館抗議

 七月十日、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック(上原成信代表)などが呼びかけたアメリカ大使館への抗議行動が行われ、約百五十人が参加した。
 代表がブッシュ大統領へ、沖縄から米軍を撤去させるべきという内容の要請文を手渡そうとしたが、アメリカ大使館側は一切応じようとしなかった。参加者は、「犯罪をなくせ、基地をなくせ」「米軍は沖縄からで出て行け」「NO BASE」などのプラカードを掲げ、アメリカ大使館側の誠実な対応を求め、抗議の座り込みを行った。
 抗議行動に参議院議員の島袋宗康氏と沖縄県議の喜納昌春氏が合流した。喜納県議は「今日と明日、沖縄県議団の代表が大使館や米軍基地に抗議行動を行っている。沖縄県議は保守も革新も、海兵隊の削減を含めて基地の整理・縮小を求めている。アメリカは犯罪事実がはっきりしているのに容疑者の人権を守ろうとしている。それに対して田中外相は『被害女性にも責任がある』と発言するなど、小泉首相を含めて体をはって被害女性、つまり国民を守ろうという姿勢がまったくない。河野前外相は『米軍がいなければ日本の防衛はどうするのか』と発言した。これで独立国と言えるのか。いまの小泉内閣も弱腰外交である。地位協定の運用改善など小手先の対応に、沖縄はごまかされない。安保を認める稲嶺県政ですら地位協定の抜本改正要求を出している。海兵隊の削減にとどまらず、沖縄・日本に米軍基地はいらない、日米安保もいらないという叫びが日本中の声になると信じている」と訴えた。
 「ノーベース女たちの会」、実弾演習に反対している大分・湯布院の代表をはじめ、参加した各団体・個人から、「米軍がいる限り事件はなくならない」「米軍は撤去せよ」など次々と抗議の声がアメリカ大使館に響いた。


大阪 350人が米領事館抗議

 七月十三日、大阪で沖縄の米兵による暴行事件に抗議する緊急集会と米領事館に向けた抗議のデモ行進が行われ、約三百五十人が参加した。
 最初に、「平和な島を」関西沖縄の会の我謝実・事務局長が、「米兵の身柄引き渡しで事件が終わったわけではない。沖縄と連帯して基地問題の解決を」と呼びかけた。
 「米軍人・軍属による犯罪被害者の会」弁護士の中北龍太郎弁護士、大阪在住の沖縄出身者、全港湾、釜ヶ崎日雇労働組合、「異議あり!思いやり予算」、朝鮮戦争時の米軍の住民虐殺を裁く「コリア国際法廷」に参加した人などから相次いで発言があった。どの発言も怒りの気持ちのこもった発言であった。
 集会後、参加者は米領事館に向けてデモ行進を行った。暑い大阪のビル街に、米軍基地撤去を求める声が響いた。米領事館前では怒りのシュプレヒコールが行われた。「年長者」の蓄積された思いが、初めてデモに参加したような若い友人たちにも伝わった熱気のある取り組みだった。