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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2001年6月号

台湾海峡にらむ米戦略

米軍機、下地島・波照間に着陸強行
米シンクタンクは米軍基地化を提言

宮古地区労議長 長崎富夫


 在沖米海兵隊所属のヘリと給油機が五月十六日、給油目的で琉球諸島南部の下地島、波照間の両民間空港に着陸した。フィリピンでの合同演習に参加した帰りに飛来したもので、四月末にも演習に向かうヘリが両空港に飛来・着陸している。事前に、稲嶺県知事が自粛を申し入れたにも関わらず、米軍は着陸を強行した。飛来前日の五月十五日には、米国防総省系のシンクタンク、ランド研究所が、「米国とアジア―米新戦略と軍事態勢に向け」という提言を発表。米軍の比重を朝鮮半島から台湾海峡、対中国重視に移そうという提言で、下地島空港など沖縄南部を米空軍基地として利用可能とする内容。提言をまとめた責任者のカリザド氏は国家安全保障会議(NSC)の中東担当上級部長で政権入りしており、ブッシュ政権の対アジア政策に大きな影響を与えると考えられる。同提言や下地島、波照間両空港への米軍機飛来について、宮古地区労の長崎富夫議長に聞いた(文責編集部)。

 米軍機は四月二十八日にフィリピンでの合同演習へ向かう途中、給油を理由に強行着陸しました。そして訓練が終わって帰りの五月十六日にも飛来しました。その時もやはり強行的なもので、宮古地区労を中心に抗議行動を取り組みました。波照間空港では、八重山地区労や平和運動センターなどがやはり抗議集会を開きました。
 今回の往路の飛来で、ヘリの故障を理由に長時間滞在しました。復路でも往路と同じ油圧系統の故障を理由に、物資輸送の米軍機が着陸し、部品を取り替えました。これは偶然とは思えません。我々は、軍事を目的にした訓練の一部じゃないかという疑いを持っています。
 また、五月十五日の夕刊では、アメリカのシンクタンク、ランド研究所の提言が報道されました。提言の中身は、下地島空港を軍事基地として使用するとともに、同島周辺の島も新たに使おうという提言です。これは明らかに先島諸島全域を軍事基地化にする構想だと考え、私どもは緊急記者会見を開き、マスコミに対して、絶対反対の強い意志を示しました。
 下地島が軍事基地化されることによって、宮古島の平良港の軍事使用が懸念されます。また宮古には宮古空港という小さい民間空港があります。普段、旅客の発着に利用され、一日八便ぐらい飛ぶ利用度の高い空港です。那覇・宮古間と東京直行便もあります。そこも含めて軍事基地に利用されないかと懸念を持っています。
 やはり台湾海峡をにらんだアメリカの戦略の具体化だと思います。先島諸島が最前線にされるという危機感を強く持っています。
 もともと下地島空港は、一九六九年に琉球政府が誘致を決定し、その後、賛成・反対が島を二分し激しく争って、七九年に正式に開港しました。八〇年から那覇と定期便が始まりましたが、九四年には赤字で運休。その後は民間航空会社のパイロット養成に使われていますが、それも順調ではないため、自衛隊誘致が持ち上がりました。三月に下地島空港のある伊良部町の町長が「自衛隊機訓練誘致」を表明、四月十七日に町議会が決議しました。
 これに対し我々は、自衛隊誘致が米軍の呼び水になることを危惧して抗議行動をしてきました。町議会の「自衛隊機訓練誘致」決議、米軍機の飛来、そして「下地島空港は空軍基地として使用可能」というランド研究所の提言。これらは偶然ではない。我々の心配が現実のものになってしまったと感じています。
 また、五月二十二日には在沖米国領事館から伊良部島の空港を見に来ています。地元マスコミに基地としては使わないというコメントを残しているんですが、一連の流れで見ますと明らかに「視察」に来たのだと思います。
 下地島空港は三千メートルの滑走路を持っており、空港としてすごい施設だと思います。確かに放っておくにはもったいない空港で、軍事産業に頼らずにこの空港をアジアを拠点にした経済交流の拠点にできないか、よく検討すべきでしょう。
 私ども宮古地区労としては軍事基地や軍事基地にされることの危険性を、事件・事故等も含めて島民に知らせながら頑張っていきたい思います。また、下地島空港建設にあたって一九七一年に、当時の屋良首席が、「民間空港以外には使わせない」という確約書を日本政府と交わしています。この確約書は今でも有効だととらえています。軍事使用は絶対反対ですし、これからも頑張っていきたいと思います。


ランド研究所の提言要旨
一、在沖縄海兵隊の兵力を削減、あるいは撤退すべきかという問題で、米政府は海兵隊普天間飛行場を空軍の並行運用基地とする可能性を検討すべきだ。
一、海兵隊の伊江島補助飛行場も使用可能。空軍は航空自衛隊那覇基地に装備を展開することも可能。
一、琉球諸島の一カ所あるいは複数に駐留することは台湾防衛に有利となることは明白だ。例えば下地島空港は三千メートル級の滑走路を持っている。
一、在日空軍の拡張や南方への配置換えについて、日本政府の観点から実現性があるのかどうかについて検討が必要。
一、在日米軍基地問題は、長い間、日本の政治論争の的になっており、基地新設の模索で論争を巻き起こすのはほぼ確実。
一、琉球諸島南部の空港の使用を求めていくことが賢明かもしれない。
一、米軍が琉球諸島南部へ展開するための反対を克服する一つの方法は日本政府に「代償」を提供する申し入れをすること。米海兵隊撤退といった在沖縄米軍の削減や移設は、米政府が台湾周辺に足場を築くための 「代償」となり得る。
一、フィリピン・ルソン島の施設を使用できれば米軍は台湾や南シナ海の緊急事態に対応できる。フィリピンは安全保障が直接危機にさらされれば米軍に施設の使用を認めるだろう。