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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2001年5月号

21世紀の環境と食料を考えるWTOシンポジウム

食料・農業・環境を守る国民運動を


 四月十七日、都内の星陵会館で「二十一世紀の環境と食料を考えるWTOシンポジウム」が開催された。主催は「フォーラム平和・人権・環境」と「食とみどり、水を守る中央労農会議連絡会議」。
 ガット・ウルグアイラウンド(UR)につづく、世界貿易機関(WTO)交渉は一九九九年シアトルでの閣僚会議が決裂した。このシンポジウムは、今年十一月のカタールでのWTO閣僚会議に向けて、グローバリゼーションにどう対抗し、わが国の食料、農業、農村の役割を再認識するかを討論し、今後の国民運動の方向を意思一致すること。さらに政府に「農業の多面的機能」「食料安全保障」などで確固たる態度を求めるために開かれた。
 シンポジウムで服部信司・東洋大学教授は、「シアトルでの閣僚会議が決裂し、WTOでの交渉分野すら合意していない。UR合意で交渉が確認されていた農業交渉は、昨年末までに各国の提案が出され、第二局面を迎えている。UR合意のとき次期交渉では、環境保護や食料安全保障などの『非貿易的関心事項』に配慮すると合意された。日本は多面的機能を主張し、米のミニマムアクセス制度の改善(七・二%を五%に)などを提案。これに対し、アメリカやケアンズグループの提案は、関税の大幅削減など極端な自由化が特徴。日本は多面的機能重視に理解のあるEUとの連携が重要」と述べた。
 川上豊幸・APECモニターNGOネットワークは「WTOの主張する自由貿易・市場原理によって、肥料や農薬の大量投入による環境悪化や小農・家族農業が破壊され、世界中で持続的な農業が不可能になってきている。また、アメリカなどのアグリビジネスの都合で、遺伝子組み換え食品などの安全性も無視されている。これに対してタイなどは遺伝子組み換え作物の作付け禁止とした。食料は基本的人権であり、小規模農民も含めて持続可能な農業、食料安全保障、食品の安全が優先されるように貿易ルールを考えるべきだ」と訴えた。
 篠原孝・農林水産政策研究所所長は「URでアメリカは自国の強い分野を優先させた。シアトルでもダンピング問題で難癖をつけた。自由貿易といいながらダンピングを乱用している。日本はもっと農業交渉で徹底抗戦すべきだ。URの最終段階で、フランスは『映画や音楽でアメリカへの輸出は二億ドル、アメリカからの輸入は三十八億ドル。なぜ閉鎖的なのか』と自国文化の破壊だと主張し、例外措置を勝ち取った。日本はアメリカから大量の農産物を輸入しているのに閉鎖的と言われる理由はない。多面的機能と言うだけでなく具体的提案でWTOで意見を貫き通すべきだ。EUとの連携は必要だが、日本のスタンスをきちんもっておくことが重要」と述べた。
 そして「WTOに左右されない国内での仕組みが必要だ。例えば、長野のレタスを鹿児島まで運ぶというやり方はおかしい。物を動かすということは、エネルギーの浪費、環境の汚染につながる。地域で生産した物を地域で食べること。給食での米飯に限らず、パンも地元の麦を使うべき。ところが、北海道ですら、そういうことをやっていない。給食も含めて地元で生産した米や野菜を使う。そうすればWTO交渉に左右されずにやっていける」と述べた。
 会場からは、日本消費者連盟、北海道農民連盟、全国消団連、農民などから報告や発言があった。