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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2001年3月号

相次ぐ米軍の横暴

海兵隊削減・撤退、日米地位協定の全面見直しを


 沖縄では米兵、とくに海兵隊員の引き起こす事件が相次ぎ、海兵隊の削減を求める世論が強い。北谷町の連続放火事件が米兵によるものと判明、米兵の身柄引き渡しを米軍が拒否したことを発端に、日米地位協定の見直しを求める声も県内外で高まっている。
 在沖米海兵隊員のカート・ビリー(二三)は一月十五日、北谷町の居酒屋街「がちまい村」の小料理店に侵入し放火、さらに三時間後、隣接するバーにも放火した。なんと五日後の二十日にも同じ現場で放火し、五店舗を全半焼させた。
 この事件で沖縄県警は二月十三日に逮捕状を取り、米軍側に身柄引き渡しを求めたが、米軍は理由も示さずにこれを拒否。那覇地検が十六日、那覇地裁に起訴した後にようやく、米兵の身柄は日本側に引き渡された。
 九五年九月の少女暴行事件後、沖縄県民は地位協定の抜本的見直しを強く求めた。しかし、日米両政府は、殺人や婦女暴行などの凶悪事件は米軍側が「好意的考慮」を払うことで起訴前に身柄を引き渡すという運用面の見直しでごまかした。しかし、実際に起訴前に身柄が引き渡されたのは、九六年に長崎県佐世保市で起きた強盗殺人未遂事件の一件だけ。放火が「凶悪」に該当するかどうかなどの裁量権は米側にあるため、今回の連続放火事件で、県知事をはじめ、県議会や市町村議会における抗議決議や、民主団体の抗議が相次ぎ、県民は容疑者の身柄引き渡しを強く求めたが、結局、起訴前の引き渡しはなかった。日本国内で起きた事件にもかかわらず、日本の主権は無視され続けている。
 また二月二十一日には、日米合同委員会の合意事項で認められていない実弾射撃が、米兵のレクリエーションとして行われていたことがわかった。三十五年間もの間、具志川市のキャンプ・コートニーで、海に向かって投げた的を撃ち落とすクレー射撃がされていた。海に落下した散弾の鉛の量は把握されていない。地元の住民は、近くの海岸でとれる海草を食用としており、人体や環境へ及ぼす影響が心配されている。
 地位協定では社交クラブなど福利厚生部門に日本の法律が及ばないと定められている。クレー射撃はレクリエーションで行われており、これに該当する。また基地の立ち入りも地位協定が壁となり、基地内の実態を把握するのは難しい。沖縄県が日本政府に提出した要望書では、緊急時の基地内立ち入りや、環境保護のため米軍の活動に国内法を適用することなども求めている。
 このように地位協定はあらゆる面で米軍優先になっており、米軍の自由裁量で基地が運用されている。
 このような米軍の、日本の主権を無視した態度は、在沖米軍トップ、ヘイルストンの言葉にも表れている。ヘイルストンは一月二十三日、海兵隊の指揮官十数人へ送った電子メールの中で、稲嶺県知事らを「頭の悪い腰抜けだ」と侮蔑した。

世論は海兵隊撤退、地位協定全面見直しを求めている

 このように相次ぐ米兵の犯罪、米軍の横暴に、県民は怒り、海兵隊の撤退、日米地位協定の見直しを求める世論が高まっている。
 北谷町議会が海兵隊撤退を求める決議をあげたのをはじめ、二月二十日までに県内六市、十六町村が米軍への抗議決議をあげた。そのうち半数以上が海兵隊の削減を求めている。また沖縄市議会や北谷町議会は、米兵の午前零時以降の夜間外出を禁止するよう求めた抗議決議も全会一致で可決。町村議会議長会も二月二十一日に抗議決議を出し、@日米地位協定の抜本的見直しA米海兵隊を含む兵力の削減などを日米両政府へ要求した。
 米軍基地被害に怒りを表しているのは沖縄だけではない。在日米海軍の空母艦載機による夜間離着陸訓練(NLP)が行われている基地を抱える五市(三沢、福生、大和、綾瀬、岩国)の市長は一月二十九日、NLP被害サミットを開き、「NLPは絶対に許さない」という意志一致を行った。地方自治体は米軍基地に対してノーを突きつけている。
 沖縄県内の民主団体や労働組合も抗議を強めている。連合沖縄は、海兵隊を含む兵力削減、地位協定の抜本的見直しを訴えて、百万人署名運動と県民総決起大会開催を決定した。県民大会は超党派の結集を呼びかけている。
 こうした県内の動きに押され、稲嶺知事は、ついに兵力削減を国に求めていく考えを正式に打ち出した。
 しかし、日本政府の態度は弱腰だ。河野外相は二月二十五日の稲嶺知事との会談でも消極的発言に終始。兵力削減は「国際情勢をにらんで」とし、地位協定は「見直さず当面は運用面の改善で対応」と強調した。国民の生命、人権が侵害され、脅かされているのに、日本政府はそれを守ろうともしていない。会談後、知事が「日米安保で基地の提供責任は政府にある。政府、国民全体であり方を考えてほしい」と述べたように、日本政府は沖縄県民の怒りを受け止めるべきだ。「運用面での改善」で解決しないことは、九五年の例を見ても明白だろう。また、海兵隊について、二月十二日には米国海兵隊のトップ、ジェームス・ジョーンズ海兵隊総司令官が「訓練の一部を沖縄からグアムに移すよう言ったところだ」と発言、在沖米海兵隊の訓練の一部をグアムに移すための作業に着手したことが明らかになっている。日本政府は今こそ、アメリカに対して強い態度で海兵隊の削減・撤退、地位協定の全面見直しを要求するべきではないだろうか。そして日米安保を終了させ、沖縄から、日本全国から米軍基地をなくそうではないか。