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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2000年10月号
 

農家を直撃する米価下落
こんな米価ではやっていけない


北海道旭川市   黒川 博義


 旭川市で稲作六・四ヘクタール、転作の畑(野菜)一ヘクタールをやっている専業農家です。「ほしのゆめ」という銘柄を生産しています。
 自主流通米は八月頃から入札され、入札価格が発表されますが、これは目安にすぎません。実際の米価は単年度計算ではなく複雑です。昨年の場合は六十キロ(一俵)一万四千二百円でした。今年の仮払いは、「ほしのゆめ」の一等米で一万五百円です。稲作経営安定事業という保険のようなものに加入していますので、それを加えて一万三千五百円ぐらいになると思います。平成五年(一九九三年)が一番高くて一万八千円ぐらいで、それから比べるととんでもない下がり方です。
 生産費、つまり生産コストが昨年の計算で六十キロ当たり九千五百円かかっています。昨年の場合、六・四ヘクタールの稲作で六百二十俵出荷して生産コストを引いた手取りは二百七十九万円。そこから制度資金の償還金約百万円を返すと、手元には残るのはわずか百七十万円。転作の野菜などの収入を合わせても、夫婦二人で一年間働いた所得が二百四十万円でした。良作米地域の旭川でもこんな状態です。
 米価暴落で一番打撃を受けているのは大規模農家です。とくに、急激に規模を拡大している人は大型農機具などの投資が大きくて大変です。後継者がいる農家は息子にかける言葉もない状態です。こんな米価ではとてもやっていけません。
 米価が下落すると当然、米農家が困ります。北海道には組勘という制度がありますが年末どうなると心配しています。農協が行き詰まる。さらに、農村地域で農業がだめになると商店街も含めて全部が影響を受けます。旭川駅近くに平和通がありますが、シャッターの閉まった店が続き、死んだような町になっています。
 米価を暴落させないために生産調整(減反)に協力してきました。生産調整の面積は私の地域は北海道で一番低くて二〇%、旭川市の平均は三六〜三七%です。全国平均は四〇%くらいです。ところが在庫が増えて、このままでは三百万トン近くになると言われています。
 いろいろな原因がありますが、一番はミニマム・アクセスと呼ばれている輸入米だと思います。ガット農業合意後、毎年輸入量が増え、昨年は約七十万トン、昨年までの五年間で合計三百万トン近く入ってきています。輸入米がなければこんなに在庫が増えなかったし、米価も下落しなかったと思います。農家は毎年減反に協力しているのに、なぜ輸入する必要があるのか納得できません。
 ガット農業合意のとき細川首相は、「農家に迷惑はかけない」と発言しましたが、その結果がこの状況です。自由化、市場経済を受け入れれば、いずれこうなることは予想していました。
 大量の在庫があるかぎり米価の下落は続きます。北朝鮮など世界には食糧不足で困っているところがあります。在庫の米を思い切って食糧支援に使ってほしい。その場合、現物の米で援助してほしい。そうすれば国際援助になりますし、在庫の削減に役立ちます。
 日本は大量の食料を輸入していますが、こんな状態は続けられないと思います。経済大国といっても、工業製品も海外で作って逆輸入してくる状態です。大量の食料を輸入する経済力がなくなったとき、一番困るのは都会の消費者の方だと思います。米も含めて食糧は国民の命の問題です。数年前から各地で「地産地消」(地域で生産したものを地域で消費する)という運動が行われています。「地産地消」を広げれば、自給率の向上にもつながります。消費者のみなさんも理解していただきたいと思います。(文責編集部)