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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2000年9月号
 

アジアの平和と日本国民の利益につながる

日朝国交正常化実現の世論を高めよう



日朝文化交流協会理事長、大正大学元学長  林 亮勝


朝鮮民族の存在感を示した南北会談

 日本と朝鮮は一番近い隣国です。博多からは東京よりも釜山へ行く方がずっと近いし、料金も安くなっています。日本にとって朝鮮は、古い時代から船ですぐに行ける近い国でした。民族国家が成立すると、国家関係を考えるようになり、その対象として朝鮮、中国、天竺(インド)などがありました。しかし、天竺は遠すぎて観念上の国。朝鮮は中国という大国の文化を伝える経路であり、大事にしようという意識が古くからあったと思います。
 明治維新後、日本は欧州に「追いつけ追い越せ」でやってきました。後発の工業国家が急速に近代化するには、国民をまとめるための強いナショナリズムが必要とされました。ナショナリズムをたち上げるのに一番有効な手段は外国と事を構えることであり、これが政界に影響して征韓論になり、日清戦争はその延長線上にありました。当時、日本人の多くは清国と戦って勝てるとは思ってなかったでしょう。ところが勝ったことで、今まで偉いと思っていた中国人に対して蔑視の意識が出てきました。そのような意識は朝鮮半島をめぐって「清国を押しつぶして朝鮮半島で主権を握りたい」となり、一九一〇年の韓国の併合につながりました。
 日本にはいまだに「日本が植民地にしたので朝鮮に文化が根付いた」「大東亜戦争は欧米の世界制覇を覆すための戦いで、アジアやアフリカの各国の独立のために戦争した」という言い方をする人たちがいます。本当にばかげた言い方で、侵略や植民地支配の事実を認めない考え方です。日本は「自分たちが解放者だ」といいながら、実際には侵略し、植民地支配をしました。本当に植民地を解放するための戦いならば、まず朝鮮と台湾を独立させてから欧米を批判すべきでしょう。
 このような侵略戦争を合理化する考え方はしっかり否定していかなければいけないし、韓国に対しても北朝鮮に対しても、日本は本格的に謝罪しなければなりません。
 今回、南北首脳会談が実現し、南北分断から和解と統一へ大きく動きはじめました。冷戦構造が崩れつつあります。しかし、「朝鮮半島は今の状態のままでいた方がいい」という冷戦思考意識が、日本政府や保守系、自衛隊関係の中にはあるのではないでしょうか。政府は「『テポドン』が飛んでくるから防衛システムが必要だ」といい、「日米安保も米軍基地も必要だ」といっています。
 朝鮮民族は日本政府の朝鮮半島に対するこのような考え方を批判的にとらえています。その上で朝鮮民族のプライドを持って、朝鮮半島の将来は自分たちで切り開こうというのが南北首脳会談だと思います。大国の思惑の中で、朝鮮民族の存在感を示した出来事です。そういう意味では金大中氏と金正日氏はすばらしい政治家といえるでしょう。
 南北会談が実現したことで、統一へ向けて大きく動き出しました。しかし南北の壁は複雑ですし、体制が違う南北を一つの国にするのは大変なことです。南北の間には戦争もありましたし、その後の両国の動きの中で八〇年代には圧倒的に格差がついてしまいました。冷戦の中で北朝鮮の経済政策がうまくいかず、経済格差が開きました。人口も、分断したときはほぼ同じだったのが、北朝鮮はわずかに増えただけなのに対し、韓国は三倍になりました。これらの壁を乗り越えるためには、信頼関係をだんだんに作っていくことが必要で、五十年、百年のスケールで統一を考えているのでしょう。

一刻も早く日朝国交正常化を

 そうした中で日本はどうするべきか。一刻も早く日朝国交正常化しなければなりません。中国やロシアはもちろんフィリピンも国交を樹立しています。ASEANの地域フォーラムにも加盟しました。残されたのは日本とアメリカ。このままでは日本が一番最後になって、孤立してしまいます。「世界の中の日本」と言いながら、隣国である朝鮮に対して日本人がいまだに差別的な意識をもっていることを示すことになります。これは日本の国益にとっても大変残念なことです。
 国交正常化するためには、戦争責任と植民地支配をきちんと謝罪し賠償することです。拉致疑惑などを交渉の前提にすべきではありません。たとえ拉致が事実だったとしても、国の意志としてそんなことをするはずはありません。日本は国家の政策として軍国主義のもとに朝鮮人を何十万人も拉致(強制連行)してきました。拉致疑惑を交渉の前提とはせず、正常化交渉が軌道に乗った後で、未解決問題として話し合うべきでしょう。
 日本政府は沖縄をはじめ各地に米軍基地をおき、新たな日米防衛協力の指針(新ガイドライン)などの法整備をしてきました。子供はおもちゃをもらうと、もっと良いおもちゃが欲しいと思う。軍人もこれと同じで、その上自分たちが国を支えているという意識を強くもっています。それがいまでは世界で二番目の軍事費大国と言われるような「おもちゃ」を持っているのです。さらに「おもちゃ」を上等にしていくために仮想敵国が必要になる。それで北朝鮮が仮想敵国とされています。アメリカや日本にとって、真の仮想敵国は中国でしょう。その中国との関係の中で朝鮮半島が位置づけられていると思います。仮想敵国をつくり軍備を増強すれば緊張は激化する。このようなサイクルの中で動いているのではないでしょうか。
 このサイクルを断ち切るためには金大中氏の在任中に、南北の信頼醸成をもっと活発にし、自由往来ができるようにしておく必要があるでしょう。南北間の経済格差が自由往来の障害になっています。格差を少しでもカバーするためにも、日本は北朝鮮に対して、積極的に経済支援をする必要があるでしょう。具体的には、交通手段を整備することで、鉄道と道路です。特に鉄道の整備が必要です。それから農業の再建も重要になっているので、例えばJAなどが本気になって北朝鮮の農業を援助する方法もあると思います。
 毎年何兆円もの軍事予算を出すよりも、一兆円でも二兆円でも朝鮮半島のための経済援助を計画的にやって、平和的な関係を整えて、軍備増強しなくてもすむような関係を作る方が重要です。アメリカと一緒になって軍備増強を続けるのか、それとも平和的関係を実現するのか。どちらが長期的にアジアの平和や国民全体のために役に立つのか、国民的な議論が必要です。
 これまでの経過や冷戦思考から抜け出せない外務省など官僚組織まかせでは、百年たっても日朝国交正常化は実現しないと思います。結局、南北首脳会談を決断した金大中氏と金正日氏のように、政治家が決断しなければ解決しません。
 そのために大衆運動を絶えず続けて、政治の中でとりあげられていくように、国民的な世論を盛り上げていかなければなりません。
 (文責編集部)