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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2000年4月号
 

嘉手納基地の米軍機の飛行差し止めを求める
日米両政府を被告に、5544名が提訴

新嘉手納基地爆音訴訟原告団団長  仲村清勇


 私たちは3月27日、米軍嘉手納基地の米軍機による夜間・早朝の飛行差し止め、爆音による精神的・身体的被害への損害賠償を求める訴訟を那覇地裁に起こしました。「新嘉手納基地爆音訴訟」です。

 爆音は違法と認めたのに……

 嘉手納基地爆音訴訟(旧訴訟)は、本土復帰して10年目の1982年に906名の原告団で提訴し、98年5月の控訴審判決で終結しました。16年にわたる闘いでした。
 この判決は、嘉手納基地の爆音を受忍限度をこえた「違法状態」と認め、過去分の損害賠償を命じました。しかし、飛行差し止めの請求については「国には第3者である米軍の行動を規制する権限がない」という理由で棄却しました。騒音の違法性を認めながら、その音源は放置するという矛盾した判決でした。
 原告団は当時の大田知事に「航空機騒音による健康影響に関する調査」をお願いしました。これに応えて、沖縄県は95年から3年間にわたって、医師や学者などの専門家集団による総合的調査を実施しました。この調査によって、騒音性難聴、低体重児の出生、幼児の問題行動など、航空機騒音による様々な健康障害が明らかになりました。控訴審には、その調査報告を提出しました。しかし、判決は「騒音との因果関係の疑いは否定できないが、断定もできない」として、難聴などの身体的被害についての賠償は認めませんでした。
 他方で、住民は爆音を承知で転入してきたという国側の「危険への接近」論を排除しました。狭い土地に基地が集中する沖縄の現状では「危険への接近」に当たらないと裁判所も判断したのです。その判断は評価できます。それならば、飛行差し止めをすべきだと思います。
 旧訴訟を提訴した82年当時も、爆音は「違法状態」と認めた98年の判決後も、嘉手納では音源対策がまったくありません。横田基地や厚木基地では夜間飛行の規制があったように思いますが、沖縄ではまったくありません。私たちが国に何度も要請して、やっと96年3月に、午後10時から午前6時までの飛行制限する騒音防止協定が日米間で合意されました。しかし、北谷町の統計によると、昨年7月から今年2月までの8ヶ月間で、深夜(午後10時から午前6時)の騒音発生回数は1369回にのぼり、一日平均約10回です。合意はまったく守られていないのが現状です。

 5544名の原告団

 そんな状態でしたから、私たちはもっと大きな訴訟をやろうと準備を進め、「新嘉手納基地爆音訴訟」を起こしたわけです。
 今回の訴訟で特徴的なことは、5544名という大規模な原告団になったことです。嘉手納基地の爆音問題を住民運動にしていこうと考え、爆音被害の一点で一緒に闘おうと呼びかけました。その結果、保守とか革新という枠をこえて、多くの住民が原告団に加わってくれました。
 5544名の原告は嘉手納基地周辺の6市町村の住民です。その内訳は、北谷町が942名(旧訴訟は247名)、嘉手納町が536名(185名)、具志川市が2190名(168名)、石川市が1191名(144名)、沖縄市が591名(16名)、読谷村が94名(57名)となっています。旧訴訟と比べると、具志川市と石川市では原告がかなり増えています。
 なぜ増えたのでしょうか。旧訴訟の判決が出て以降、保守系を支持している住民の人たちの中から、爆音被害を受けているのは住民全体ではないか、裁判に参加した人たちだけなく、周辺住民全体に公平に賠償金を払えという運動が起こりました。かなりたくさんの人たちが集まって、爆音被害を訴えて行政に要請しました。私たちはこの人たちにも、一緒にやろうという話をしました。「控訴審判決は身体的被害の損害賠償は認めなかったけれども、精神的被害の損害賠償は認めた。同じ被害を受けているのだから、裁判に訴えれば少ないけれども精神的被害の損害賠償は受けられる。裁判に参加しなければ賠償金はもらえない」と。そういうことも原告が増えた原因の一つだと思います。
 旧訴訟の判決が嘉手納基地の爆音は「違法状態」と認めたにもかかわらず、判決後も一向に改善されていません。もうがまんできない、黙っていては何も解決しないという住民の声が、5000名を超える訴訟に発展したのだと思います。

 アメリカは応訴すべきだ

 旧訴訟の判決で、住民の最大の願いである飛行差し止めは棄却されました。「国には第3者である米軍の行動を規制する権限はない」というのは、安保条約がある限り米軍が基地内で何をしようと日本の法律は適用できないという理屈です。こんなでたらめな話はありません。だから、今回はアメリカ政府も当事者として被告に加えました。アメリカは応訴しないかもしれません。
 しかし、厚木基地に隣接する廃棄物処理工場の煙突からダイオキシンが出ている問題で、アメリカは日本政府に要求し、横浜地裁に工場の操業停止の仮処分申請をしました。アメリカは日本国民に大変な基地被害を与えて知らん顔をしながら、自国の米兵の問題になると大騒ぎです。こんなことが通るでしょうか。アメリカが厚木基地のダイオキシン問題で訴訟を起こすなら、飛行差し止めの訴訟にも応じるべきです。
 アメリカは大統領自らダイオキシン問題で大騒ぎしているのに、日本政府は国民の声や要求を無視してきました。嘉手納基地や厚木基地をはじめ全国で周辺住民が基地被害に苦しみ、何10年も訴えているのに何もしない。アメリカに何も要求しないどころか、米軍の住宅には防音サッシなど万全の対策をほどこし、基地内は国民の税金を使った思いやり予算で至れり尽くせりの状態です。

 くらしと結びつけて考える

 それを広く住民に知らせ、一緒に考えていきます。住民の中には安保は政党次元で論議するものという感じがありました。しかし、隣はすぐ基地です。その基地によって私たちの健康がおかされているのに日本の法律が及ばない。そんな基地を認めている安保とは、地位協定とは何なのか、自分のくらしと結びつけて考えてみよう。政府はさらに、沖縄に新しい基地を作るため1000億円の金を使うというが、これでいいのか。そういう議論も住民の中で議論していきます。
 六市町村に支部があります。各支部ごとに総会や講演会を開き、そこに弁護士や講師を招いて、認識を深めあっていきたいと思います。
 3月26日に、新訴訟団の結成総会を開きました。原告団が6市町村にまたがっていますので集まってもらうのは大変なんですが、約500名の人たちが参加してくれました。翌27日、那覇地裁に提訴したときも午前9時から150名の人たちが集まりました。それだけ爆音という基地被害に対する怒りは大きく、頑張ろうという雰囲気が盛り上がっています。
        (文責編集部)