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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年11月号
 

県民の分断をはかる政府
基地の県内移設に反対し一万二千人が決起

沖縄大学教授、基地の県内移設に反対する県民会議共同代表 佐久川政一


地域振興というアメで県民の分断をはかる政府

 日本はアメリカの世界戦略に組み入れられ、日米安保という形でアメリカに従属している。沖縄県政は日本政府に従属している。そういう構図の中で、米軍基地の県内移設の問題が出てきています。
 十月十五日未明、自民党など与党は県議会で「普天間飛行場の早期県内移設に関する要請決議」を強行可決しました。
 一九九五年九月の少女暴行事件以来、島ぐるみの闘いになり、九六年七月に県議会で全会一致で「普天間飛行場の全面返還を促進し、基地機能の強化につながる県内移設に反対する決議」がされました。今回の県議会の県内移設促進決議は、九六年七月の県内移設に反対する決議に逆行する暴挙です。
 この背景には、来年のサミット沖縄開催と密接な関連があると思います。もう一つは、地域振興策というアメで県民世論を二分しようという政府の動きがあります。普天間飛行場の跡地利用の振興策、また移設先の振興策などをからめた動きです。名護市民投票の時もそうでしたが、政府の常套手段です。それに沖縄県政がのるとすると物ごいです。
 稲嶺知事や自民党議員は「SACO合意にそって縮小・整理するのだから基地機能の強化にはつながらない」と発言しています。しかし、代替基地には垂直離着陸機MV22オスプレイの配備が決まっており、この一つをみても基地機能の強化につながることは明白です。県内移設を前提としたSACO合意は、九五年のあの事件以来、島ぐるみで異議申し立てしてきた県民世論を踏みにじるもので非現実的です。基地の縮小・撤去という県民世論の高まりを恐れた政府支配者側は、振興策というアメで県民世論の分断を行ってきました。稲嶺県政も「移設先にどういう振興策がなされるか」と公然と発言しており、振興策で地元をなだめるつもりです。
 問題は、移設候補地とされている名護市の地元では辺野古区、豊原区、久志区など地域の行政委員会が「陸上だろうが、埋め立てだろうが移設反対」をほぼ全会一致で決議しています。また名護市議会では九月二十八日、与党議員八名が提案した移設を前提とした「北部地域への新空港早期建設に関する決議案」を否決しています。つまり、候補地とされている地元は移設に反対だということです。それでも基地を押しつけていくことが可能なのかどうか。
 移設候補地を早く決めろという稲嶺知事に対する日米両政府の圧力は強まっています。そういう中で、今回の県議会での県内移設を促進する決議は、移設候補地を発表しようとしている稲嶺知事を支えるというねらいがあると思います。
 決議案を提案した自民党議員の発言はひどいものです。「普天間は都市部なので移設すれば事故などの危険性は少なくなる」と発言。それに対して「もし、移設先で事故や事件が起こったら責任をとれるのか」という質問に対し、自民党議員は「われわれは責任をとる立場にない」と開き直っています。まったく無責任としか言いようがありません。「基地の県内移設に反対する県民会議」をはじめ様々な団体が県庁前で座り込んだり、傍聴して県民の声を無視するなと行動しましたが、県議会与党側は数の暴力で強行可決しました。この間、自民党が策動してきた様々な法律が何年かかってもできなかったのに、最近は自自公という数の力で国民を無視した悪法が次々と可決した。その悪しきやり方が沖縄県議会にも持ち込まれています。国民、県民の心を離れた政治が行われています。
 県議会が強引に決議をしたからといって県民世論ではありません。地元の強い反対も含めて県内移設反対という県民世論がありますので、政府の思い通りに進むとは思えません。「今回の県議会決議は暴挙だ」という新聞の投書が数多くあります。県内移設を県民は許さない。

歴史改ざんを策動する稲嶺県政

 糸満市摩文仁の丘の新平和祈念資料館と八重山平和資料館の展示内容を県が勝手に変更しようとしていた問題が県内で大問題になっています。県による歴史の改ざんです。私は最初の新平和祈念資料館の検討委員会に関係しました。反戦の誓いに上に立ち、歴史の真実を正しく伝える。また、小中高校生の学習の場にして、子供たちの平和観を養うというものでした。県政が変わったからといって、しかも監修委員会にも無断で県が勝手に内容を変更するなど許されないことです。これができると考えていたとしたら傲慢としか言いようがない。県知事も含めて県幹部が展示内容の変更を指示していたという資料が明らかになりました。「反日感情を育てないために…」などが変更指示の理由だと言われています。
 それでも稲嶺知事は「関与の意識はなかった。県民に誤解を生じさせて遺憾である。事務方がそう受け取った」と開き直って謝罪もしない。悲惨な沖縄戦を経験した県民の反戦感情をみじんももっていない。だから平気で県内移設をいう。「自分は稲嶺知事に投票したが、もう信頼できない」という投書がありました。基地県内移設とあわせて稲嶺県政への不信が高まっています。
 九月末に結成された「基地の県内移設に反対する県民会議」主催で、十月二十三日に、「普天間基地・那覇軍港の県内移設に反対する県民大会」を開きました。一万人規模を予定していましたが、予想をこえる一万二千人が結集しました。アメとムチによる県内移設の策動を進める政府、政府と一緒に県内移設を進めようとする稲嶺知事や県議会与党に対する抗議の声があがりました。子や孫のためにも絶対に県内移設を許さない、再び島ぐるみの闘いを、という発言が相次ぎました。政府や県がどうあろうと、県民は県内移設を許しません。 (談・文責編集部)

1万2,000人が結集した「普天間基地・那覇軍港の県内移設に反対する県民
 大会」(10月23日、宜野湾市海浜公園野外劇場)。政府と県に対する抗議の
 声が渦巻き、第二の島ぐるみ闘争を誓い合った。大会では「普天間基地と那
 覇軍港の県内移設に反対し、移設計画の撤回を求める決議」と「県政による
 沖縄戦実相のわい曲、歴史改ざんへの抗議決議」が採択された。