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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年5月号

アメリカの世界戦略に屈服する日本政府

戦争協力法案を廃案に

前沖縄県出納長 山内徳信


 平和憲法を投げすてた日本政府

 沖縄県民は新ガイドライン法案に対して強い危機感をもっています。旧日本軍の基地がつくられ悲惨な地上戦に突入した体験があります。旧日本軍部や政治家は、沖縄戦で「国体を護る」「国民を守る」とかいっていましたが、沖縄の住民を守れなかった、守らなかったというのが沖縄戦での体験であり教訓でした。戦後は朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争と沖縄の米軍基地は前線基地として使用されました。
 敗戦後、戦争に対する反省の下に平和憲法が制定され、今日までまがりなりにも戦争に巻き込まれずにきました。それなのに平和憲法の精神をかなぐり捨てて、再び有事法制を進めていく、戦争準備に入ったという危機感が非常に強くあります。
 新ガイドラインは、アメリカの世界戦略、アジア戦略です。アメリカの引き起こす戦争に日本が協力するのが新ガイドライン関連法案です。国家の存亡、国民の人権や生存にかかわる法案です。これほど重要な法案なのに、政府は国民の声を無視して法案制定を急いでいる。小渕首相の訪米の「お土産」だという。日本政府にとっては、国民の声よりアメリカの要求が大事ということです。
 本来なら全都道府県で公聴会を開き、国民の声をきちんと聞くべきです。とくに、地上戦を体験し、かつ米軍基地が集中する沖縄県でなぜ公聴会を開かないのか。政府としては、沖縄で公聴会を開くと法案を否定する発言が続出するので、沖縄の声は無視するという姿勢です。
 議論しているのは国会議員だけ。われわれは国会議員に白紙委任しているわけではありません。選挙の時にガイドライン法案の是非をかかげて選挙をやったわけではない。したがって国会での議論は国民の声をまったく反映していません。

 法案廃案が県民の声

 国民をまったくないがしろにする今の日本政府、政党には民主主義はなく、政治は形骸化しています。だから国民の側から強い反撃を加える必要があるというのが沖縄の声です。
 3月18日に私と宜保幸男さんが呼びかけて、42名の大学人、宗教人、平和運動家などで「県民へのアピール」を発表しました。県内の自治体の全首長と議会にガイドライン法案に反対する姿勢を求める陳情書を送りました。
 4月13日に「戦争協力法・新ガイドライン法案の廃案をめざす県民大会」を開きました。今回の県民大会は、社会大衆党、社民党、共産党の3政党、労働団体、平和団体、民主団体等の団体、大学教授、宗教人、1フィート運動をやっておられる方も含めて準備会が開かれました。何としても、ガイドライン法案を廃案にしたい。再び日本を戦争に巻き込ませてはならないという県民の思いを東京に届けようと、8000人が参加して県民大会はもたれました。
 大浜長照・石垣市長は、「日本の一番南で大陸にも台湾にも近い、尖閣列島も目の前です。しかも戦前の各市町村が戦争の歯車になっていった。ガイドライン法案による市町村への協力押し付けを断らなければ戦争加担になる。いまこそ各市町村の首長が反対の声を上げるべきだ」と訴えておられました。
 市町村の首長は、地域住民の生命や財産や文化等を守っていく責任があります。法案が可決され、実際に戦争協力をさせられるようになってから悔やんでも始まりません。全国の市町村の首長が、地域住民の生命、財産等を守っていく立場に立って、反対の声を上げていくべきです。

 再び戦争の道へ踏み込む

 1995年9月の米兵による事件以来、県民が立ち上がり大きな運動に発展しました。県民の米軍基地整理縮小、あるいは撤去を求める声に対して、日米両政府が出した回答はSACOの最終報告でした。
 今回のポイントは三つあると思います。一つは21世紀の戦争に備えての沖縄の基地の構築、1億2000万の日本国民から遠く離れた沖縄で有事に備えた基地を作ろうというのがSACO最終報告の米国側の意図です。それを日本政府は容認した。二つ目は、法制度で国民を縛り有事体制にはめ込んでいく。三つ目は、これらを具体的に進めることによって平和憲法を、改憲しないまま実質的に崩していく。基地建設、有事法制、憲法のなし崩しは三位一体になっていると思います。戦後54年目にして、日本は再び戦争への道に踏み込んだと感じています。
 政府、政治家、官僚がどんなきれい事を言っても、この法案は憲法違反です。同時に地方自治の立場からも憲法違反です。中央と地方は対等だと言いながら、地方の声を無視して法案を制定しようとしている。また地方自治体、あるいは空港や港湾や病院などに働く労働者を戦争に協力させようとするもので、労働者の生存権の否定につながります。小渕政権は、アメリカの要求に屈した屈辱的な政権だと思う。
 政府は、いわゆる不審船問題を最大限利用しています。言われているような工作船かも知れないが、ガイドライン関連法案を促進させるため、国民世論をつくるための国際的な陰謀という説もあります。
 普天間基地の県内移設というSACO合意に対して、読谷村長であった当時、宜野湾市を含めた中部市町村会は「県内移設反対」の意志を明確にした。私たち県民が望んでいたのは米軍基地の整理縮小、撤去、返還であり、返還後の跡地に平和産業を立地し、平和な町を作ろうというものです。
 県民の要求を逆手にとって新たな基地建設をめざすアメリカ、そのアメリカに屈服し同意した日本政府。日本政府には、独立国としての主体性がまったくありません。
 当時、普天間基地の返還に伴うヘリ基地について日本政府が国民や県民に説明していた内容はでたらめでした。沖縄県が独自に入手した情報によると、新たなヘリ基地は普天間基地より2割も機能強化するというのがアメリカの意図でした。そういう情報を日本政府は県民にひた隠しにして海上ヘリポート建設を押しつけてきました。県内各団体の声も集約しながら、当時の沖縄県は海上ヘリポート基地建設を拒否しました。
 アメリカのアジア戦略の意図を知るにつけ、そのアメリカに次々と屈服している日本政府の姿は、もはや独立国家とはいえない屈辱的なものです。心の底から怒りをおぼえます。
 米軍は銃剣とブルドーザーで沖縄に基地を作りました。日本政府は、アメとムチで沖縄に基地を作ろうとしています。基地の建設を認めるなら地域振興を認めるというやり方です。本当に怒りがわいてきます。基地問題と地域振興はまったく無関係な問題です。政府は地域振興策と基地問題はリンクさせないと公言しておきながら、実際はリンクさせていました。大田県政が基地を認めないので、閣議決定した沖縄問題の会議さえ開かず、首相が決定した50億円の調査費すら凍結した。兵糧攻めです。中央と地方は対等とか、基地と地域振興策はリンクさせないなどときれい事を言いながら、裏では醜いことを堂々とやってきたのが日本政府の姿です。
 アメリカの前では、日本国民の要求に基づく主張をしない日本政府。いまだに、地政学的な立場から沖縄に基地が必要だという認識です。広島・長崎や沖縄の経験からしても、軍事力の強化の道は国を誤らせます。国民全体が危機感をもって立ち上がり、関連法案の廃案に向けて声を上げるべきだと思います。
                                           (文責編集部)