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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年5月号

許せない主権国家ユーゴーへの空爆

NATO軍は空爆の即時停止を

今時ミルカ


 私はベオグラードで生まれです。日本人商社マンの主人と結婚し、日本に20年以上住んでいます。今回のNATO軍の空爆は、悔しくて悲しくてたまりません。
 旧ユーゴスラビアは「六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教」があり、複雑な国家です。長い歴史を振り返ればいろんな対立があったことは事実です。しかし、第二次大戦後の社会主義社会では、民族や宗教に関係なく六つの共和国が一つの国としてまとまり、誇りをもっていました。
 1980年にチトー大統領が亡くなって、まとめ役がいなくなってしまった。そこで六つの共和国の代表が1年交代で連邦の議長をやることになりましたが、経済が悪化していったことも含めて各共和国の対立が激しくなり、民族独立運動が高まってきました。あわせてソ連崩壊、ベルリンの壁崩壊。最初にスロベニアが91年に独立宣言、国際社会がそれを認めてしまった。次にクロアチアも独立宣言しました。セルビア人が少数民族になり、対立が起こり戦争になる。ボスニア・ヘルツェゴビナは、イスラム系、セルビア人、クロアチア人が住んでいたのでお互いの対立が激しくなる。これに対して国際社会はボスニア・ヘルツェゴビナの独立を認めたため独立に反対していたセルビア人は悪者にされ空爆されました。
 ユーゴスラビアのコソボ自治州ではアルバニア人が多数で、セルビア人が少数。アルバニア人の中で独立の動きが起こり、ゲリラ活動を行う。ユーゴスラビア政府は、これをテロリストとしてつぶそうとする。国際社会はユーゴスラビアのやり方を批判する。フランスで和平交渉の中で、NATOとくにアメリカが、ユーゴ政府が受け入れられない和平の条件を提案しました。コソボ自治州内では警察、裁判から学校までアルバニア人がすべての権限をもつ、またコソボからユーゴの軍隊は撤退し、NATO軍が入るというものです。この和平案を受け入れなければ空爆をすると圧力をかけました。

 許せないNATO空爆

 3月24日、NATO軍は主権国家であるユーゴへの空爆を開始しました。首都ベオグラード、コソボをはじめ各地に対する不当な空爆が続いています。アメリカは軍事施設への攻撃だと言っていますが、実際は列車や病院や難民の列にまで空爆をしています。ユーゴスラビア政府はNATO軍の空爆に対抗する意味でコソボからアルバニア系住民を追い出す。結果として難民が大量に発生しています。
 NATO軍は、コソボのアルバニア人を助けるための人道的空爆だと言っていますが、被害を受けているのはユーゴ市民です。子供たちまで死んでいます。自動車工場を軍事施設だと空爆する。そこで働いている人たちは働く場所がなくなります。橋が爆撃されたので人も物資も輸送できない。空爆すればするほど難民が発生しています。人道主義といいながら、人道主義に反することをやっています。市民の生命・財産を奪うことがなぜ人道主義なんでしょうか。なぜ主権国家ユーゴに対して1ヶ月近い空爆が続いているのに、国際社会は何も言わないのか。本当に許せません。
 難民が発生したからNATO軍の空爆が始まったのではなく、NATO軍が空爆したから大量の難民が発生しているんです。一度難民になったらなかなか元の場所に戻れません。クロアチアの時の戦争も、ボスニアの時の戦争も、難民のことを考えないで国際社会は介入しました。いまだにユーゴスラビア内には、クロアチアとボスニアから逃げてきた難民が50万人もいます。NATOや国際社会は、その難民にはまったく支援しません。
 私は川崎市に住んでいます。川崎市とリエカ(現在のクロアチア)とは姉妹都市です。旧ユーゴスラビアがバラバラになり、内戦の中で難民が出る、とくに子供たちが犠牲になっているということで、1991年に市民の努力で「旧ユーゴスラビアの子供たちを救う会」がつくられ、募金を募って、子供たちにブーツや鉛筆などを送る運動がありました。
 NATO軍といっても中心はアメリカです。膨大な武器をもつアメリカは世界の警察官の役をやりたがっています。ソ連が崩壊する前は米ソのバランスがありました。ソ連が崩壊してからは、アメリカのやることに誰も反対できなくなりました。紛争に介入してユーゴのような小国ばかり爆撃しています。コソボ問題は主権国家であるユーゴスラビアの内政問題です。
 アメリカはミロシェビッチ大統領を倒すことを目的にしています。ユーゴ政府に問題があると言いますが、国民が選んだ政府です。ミロシェビッチ大統が気にくわないからといって主権国家ユーゴを空爆する権利はアメリカにはありません。
 そのために膨大な一般市民が犠牲になってもいいのか。年老いた私の母はベオグラードに住んでいます。空襲警報が鳴るたびに市民は地下の防空壕に避難。私の母は身体が弱り避難できないので警報が鳴っても1人でアパートにいます。2日おきの電話だけが唯一の連絡で、無事を確認する以外に何もしてあげられない。市民は空爆のために買い物にも行けない、空爆を恐れて親は子供を学校に通わせないなど市民は非常に不安な毎日を送っています。
 主権国家であるユーゴを空爆して、市民の生命と財産を奪い、いんろな施設をメチャメチャに破壊する。工場や橋、空港や建物など膨大な経済的損失です。誰が責任をとるんですか。この空爆の被害を乗り越えるためにユーゴの人たちは何十年も苦しまなければなりません。
 ユーゴに対する空爆はNATO加盟のヨーロッパ諸国にとっても利益はないと思います。空爆によって発生した難民問題を抱えることになります。空爆に積極的なのはアメリカとイギリスくらいです。

 空爆の即時停止を

 空爆だけでは効果が少ないので地上軍まで投入するという話が進んでいます。そうなればベトナム戦争の二の舞です。人道のためとか、平和のためというなら、今すぐにNATO軍は空爆をやめるべきです。
 世界に流れる情報は偏っています。アメリカはお金がありますから、アメリカに都合のいい情報だけが大量に流されています。今回の空爆でも、列車や難民の列に空爆をしたのに「難民の列には爆撃していない」と大量に繰り返し報道し、後になって誤爆だったと訂正する。クロアチアの独立のとき以来、旧ユーゴの情報は偏っています。難民の問題でも、新ユーゴのセルビア共和国の中にいる難民には国際社会は冷たい。アメリカの情報操作です。世界中に流されている情報の多くはアメリカに都合のいい情報です。疑問をもつ必要があります。日本のテレビや新聞も偏っています。
 4月2日、安藤八重子さんや暉峻淑子さんたちが、NATO空爆に反対する集会を開き、「空爆は難民を増やし民族融和を閉ざす」もので、「空爆の即時・無条件に停止」を求める声明を出してくれました。日本に住んでいるユーゴスラビアの人たちが集まって、抗議のデモを計画しましたが警察が許可を出してくれませんでした。空爆されているユーゴでは毎日、市民が死に、町が破壊されています。空爆をやめさせる声をあげてほしい。
                        (文責編集部)